COVID-19流行でのマスク不足は現代の使い捨て医療の脆弱さを顕わにした

新型コロナウイルス感染(COVID-19)流行に伴うマスクの不足は現代の医療や公衆衛生の弱点を顕わにしました。人々が動揺してマスクを買いだめしたことや世界流通を担う製造拠点の海外移転などの幾つかの原因が知れ渡りましたが、医療の歴史を振り返るに、繰り返し使うマスクが使い捨てへと1960年代から徐々に入れ替わったことをその不足の端緒と捉えてこれからについて考えを巡らす必要があるとLancet誌PERSPECTIVESの著者は言っています(1)。

専門的に作られた綿製マスクの最後の試験の一つである1975年のBr J Surg誌掲載報告では、綿モスリン4層製の繰り返し使えるマスクが医療用使い捨てマスクに勝るとも劣らない性能を示しました。適切に設計された綿製マスクは合成繊維マスクに引けを取らないと著者は結論しています(2)。

繰り返し使えるマスクは洗うことでおそらく繊維がより結束して細菌を一層遮断しうることも幾つかの試験で示されています。

そのような高い性能がありながら1930年代から医療用マスクは繰り返し使えるものから使い捨てに変わり始め、1960年代には合成物質で作られた使用一回限りの製品の製造が増え、今や繰り返し使うマスクは過去のものとなりました。

しかしPERSPECTIVESの著者が言うように使い捨てマスクの製造は目下のCOVID-19流行に追いつかず、何でも使い捨てという医療の一側面の脆弱さを浮き彫りにしました。

使い捨てのマスクや呼吸器は今後も医療において間違いなく不可欠ですが、次の流行でのマスク不足の回避には使い捨てマスク大量備蓄でいい筈はありません。使い捨ての危うさを考慮した上での先を見据えた手立てが必要です。

「何度も洗って永久に使える」と100年前の医学研究者が言ったようなマスクの復活はあるはずだと著者は結論しています。

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