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月刊おきにのうつわ|第六回伝活   〈京扇子・京うちわ〉

いよいよ暑い時期に入ってきましたね。私のこれからの必需品は扇子。この時代、建物内はどこに行ってもエアコンで涼しいですが、道中の暑さはもう生命の危機を感じるほど。
あおぐのはもちろん、日差しを遮ったり、またこのご時世、骨と言われる竹の部分でエレベーターのボタンをピッと押すのにも重宝します。

さて、今月は京扇子・京うちわのお話。
その名が表すように京都で作られた扇子・うちわを指すのですが、京扇子・京うちわと名のれるのは、京都およびその近郊で作られた材料を使って作られ、京都扇子団扇商工協同組合に属した工房が作ったものだけが名のれるもの。まがい物流通の防止や、高品質を保つためにしっかりと京都ブランドを守ってらっしゃいます。

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(催事で仕上げ工程の実演をみせていただきました/みのや扇舗・千葉さん)

扇子の材料作りから仕上げまでなんと、87もの工程があり、大まかに分けても〈竹の伐採から骨成形の部門〉〈紙の部分の制作〉〈紙に絵を描いたり金箔を貼る加飾部分〉〈その形状の特徴である折る作業〉〈骨に紙を差し込む仕上げ作業〉とあります。

↓京都扇子団扇商工協同組合HPで詳しく工程を紹介されています。


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(普段使っている扇子。パール地に宝づくしが描かれています/大西京扇堂)

扇子はあおぐ夏扇子だけでなく、日本舞踊など舞踊で使われる「舞扇子」、床の間や玄関などに飾る「飾り扇子」、茶道で使う「茶扇子」、結婚式やお祭りなどの儀式で使われる「儀式扇子」、僧侶が使う「中啓」など多種多様の用途があります。

例えば、舞扇子は痛みにくいように骨と紙をのり付けした上から、さらに糸を掛けて丈夫に作られたり、くるくると回せるように、おもりが仕掛けてあったりとその用途によって作り方も微妙に違います。

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(テーブルコーディネートに合わせて飾った舞扇子/扇枡)

京うちわは骨と柄の部分が一体化している他の産地とは違い、紙を骨に貼ったあと差し込む「差し柄」が特徴。あおぐという用途だけでなく、季節の切り絵を骨に貼り、透けた様子が涼やかな飾り用としてのうつわも有ります。

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(藤原保昌が和泉式部の為に手折った梅花がモチーフ/祇園祭保昌山保存会)

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(母が日舞を習っていたとき使っていたという両面透かし団扇)

海外産の安価な扇子も出回っていますが、京扇子の業界も新しい取り組みで時代に合った商品を開発されています。

このコロナ禍でも、話題になったのが食事の際に口元を隠すように使う扇子。はじめは既存の扇子を使って新しいマナーとして普及しつつありましたか、その後抗ウィルス効果のある漆喰を紙に塗った扇子を開発。花街の芸舞妓さんにも使っていただきたいと寄贈されました。


こちらもコロナ禍で生まれた商品。
テレビ番組のスタジオセットに飾らせていただきました。

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(アマビエさんが描かれた扇子/大西京扇堂・うつわも波に合わせてコーディネート/めおと屋いろゑ)

また、毎年5月第3日曜日に行われる「三船祭」(近年はコロナの影響で中止)。平安時代の貴族の船遊びを模したお祭りで、嵐山の大堰川にたくさんの舟が出ます。その中で扇流し舟があり、私も乗せていただいた思い出があります。

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(すいぶんと昔の話ですが…三船祭/京扇子・京うちわに関わる方と一緒に)

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(舟から扇子を流します…三船祭)


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