3人声劇 想定10分『幕間』

🖊沖ママカーニバル2024

『No Limit(ノーリミット)』 作 沖ママ

・幕間(まくあい)
イシカワ : (男性)
サヤマ : (女性)
アサイ : (女性)

-以下本文-

イシカワ
「都市封鎖、ロックダウンからもう2週間。テレビもラジオもこの話題には全くと言っていい程、触れていない。新聞はロックダウンに合わせて停止。特にこれと言った情報も無し。やはり頼みはネットか。」

サヤマ
「ホント、ロックダウンて何なのよ。な~んにも出来ないじゃない。遊びにも行けないし、あ~ぁ、つまんないなぁ。ネットでもポチポチするくらいしかないかぁ。」

アサイ
「ロックダウンで都市への流入も流出も出来ないんじゃどうしようもないわね。人の出入りが出来ないんじゃ物流はどうなってるのかしら。テレビも何にも言わないし、流石におかしいわよね。……調べてみるか。」

イシカワ
「オープンチャットスペース。チャットサービスかな。ボイスチャットじゃないチャットサービスなんて久しぶりに見たな。入ってみるか。」

サヤマ
「オープンチャットスペース。ここならもしかして誰かいるかも?入ってみよ!」

アサイ
「オープンチャットスペース?何これ。今どき文字だけのチャットサービスなんて珍しいわね。変な人とか居たら嫌だけど、まぁ文字だけなら何とかなるか。入って……みる?」

イシカワ
「どーもー。イシカワっす!あれ、誰も居ない?」

サヤマ
「サヤマでーす!」

イシカワ
「お、人が来た!」

アサイ
「アサイです。どうも。」

サヤマ
「え、これ……どーしたらいいんだろ?」

イシカワ
「こんばんは。皆さん都内住みですか?」

アサイ
「都内ですね。」

サヤマ
「都内でーす。」

イシカワ
「あー、じゃあロックダウンの影響モロに受けてる皆さんなんですね。」

サヤマ
「毎日ヒマでヒマで。外には出れないしテレビも再放送とかばっかりだし、つまんないです。」

アサイ
「皆さん同じような状況下にあるんですね。」

イシカワ
「ロックダウンが始まる前は、未知のウイルスがどうとか言ってましたけど、全然報道とかされてなくないですか?」

アサイ
「確かに。ロックダウン前は未知のウイルスの感染拡大を防ぐためにと言っていたはずだけど、全く報道されてない。」

サヤマ
「アレですよ、アレ。スーパーキラーT細胞!」

イシカワ
「そうそう、それそれ。」

アサイ
「2週間前くらいはあんなに騒いでいたのにね。ロックダウンの話もスーパーキラーT細胞の話も何も話題に上がらないのはおかしい。」

イシカワ
「SNSとかだと、外出禁止令が出てるから殆どの人は外出出来ないみたいですけど、そうじゃない人もいるみたいですね。」

サヤマ
「あ、そういえばそうね。ボヤいてる人見かけた。」

アサイ
「今、調べて見てるけど……。公務員が多い……のかな。」

イシカワ
「公務員でも教員とかは休みみたいですね。長期休暇が減るか1日の授業数増やすかで揉めてるみたい。」

サヤマ
「あー、それは大変だわ。でも会社員も給料の保証があるのか無いのかは別れそう。」

アサイ
「そうね。第1次産業従事者は、外出しないと何にも出来なさそうだけど、そのあたりもどうなるのかしら。」

サヤマ
「田んぼとか畑とか、基本的に外での作業ですからね。」

イシカワ
「漁師さんだって船出せなきゃ仕事になんないしなぁ。」

アサイ
「あとは……警察……え?警察?」

サヤマ
「警察の人がボヤいてるの見たかも。でもなんで警察?」

イシカワ
「都市封鎖されてるんだ。お店とか強盗に入られる事もあるんじゃないか?」

サヤマ
「そっか~。可能性はあるかも。」

アサイ
「それにしてもだけど、未知のウイルス、スーパーキラーT細胞の情報が少なすぎるわね。」

イシカワ
「ネットにも噂程度のものしか出てないよなぁ。」

サヤマ
「スーパーキラーT細胞って感染するとどうなるのかな?」

アサイ
「そもそも細胞と言っていることから、ウイルスでは無い。という事は、人から人、動物から動物への空気感染は有り得ない。」

サヤマ
「え?感染拡大を防ぐ為のロックダウンじゃないの?」

イシカワ
「ロックダウンを急いで決めた感があるのは、もしかしてそこか?」

サヤマ
「ウイルスじゃない細胞だから伝染(うつ)らないって事でしょ?」

アサイ
「そうね。では何故、細胞をウイルス呼ばわりしてまでロックダウンせざるを得なかったのか。我々一般人に知る術は無し、か。」

イシカワ
「俺たち一般人は政府の決めた事にゃ逆らえんからなぁ。」

サヤマ
「今回のロックダウンについては外出禁止令だから従わなければ罰(ばっ)せられる。これが不要不急の外出は控えるようにの要請なら従わなくても罪には問われないって事?」

アサイ
「そうなるわね。罪にはならなくても、拘束されたり連行される可能性はあるわ。揉め事起こしたいなら止めないけどね。」

サヤマ
「あ~、面倒なのはヤダな。大人しくしてるしかないかぁ。」

イシカワ
「大人しくしてても、状況は改善されるんですかねぇ。」

アサイ
「さぁね。我が国始まって以来の都市封鎖、ロックダウンなんだもの。何が起こるか分からないわ。」

サヤマ
「え?ロックダウンって初めてなの!?」

イシカワ
「まぁ、聞いたことはないよな。」

アサイ
「ロックダウンまでしなくても、注意喚起や行動制限要請で済んでたからね。協調性だったり調和を重んじる国民性のおかげで、みんなやってるから同じようにしようって心理が働くんだと思う。」

サヤマ
「あ、そっか。みんな手洗うとか、みんなマスクしてるとかそうだもんね。」

イシカワ
「人が多いとこだと大人しくしてるのも同じ感じかな?」

アサイ
「それはアレね。共通の倫理観が備わってる。」

イシカワ
「あー、常識のレベルが同じってことか。」

サヤマ
「おやつは300円まで!みたいな?」

アサイ
「何かだいぶ逸(そ)れた気がするけど、一般常識が国民に浸透してるって意味ではそうなのかもね。」

イシカワ
「なるほどな。だから今回のロックダウンでも疑問に思うものが現れない限りは、声を上げる人もいない。」

サヤマ
「あ~ぁ、いつまで続くんだろ。」

アサイ
「それは誰にも分からない。何故なら、何故このロックダウンが断行されたのかも分からないから。」

サヤマ
「ずっとじっとしてろって言われても、そのうち誰かが爆発するんじゃない?」

イシカワ
「その可能性はある。いくら共通の倫理観が備わっているとはいえ、個々のレベルは違うからな。」

アサイ
「それに、都内ではあまりにも情報が少な過ぎる。都内からの流出も出来ないけど、流入も出来ないから、もしかしたら地方から超えが上がるかも。」

サヤマ
「都内どーなってんだ!ってことかぁ。」

アサイ
「そもそもだけど、都内では食料も賄(まかな)えない訳だから、地方からの流入は必須のはず。」

イシカワ
「正直、そろそろ限界だよな。」

サヤマ
「食料だけはOKってなるんじゃない?」

アサイ
「そうね。もう既にそうなってるのかも知れないけれど、緘口令(かんこうれい)でも敷かれてるのかしら。マスコミが騒がないのはおかしい。」

サヤマ
「情報統制?」

イシカワ
「その可能性があるのか。何かヤバい事になってるんじゃ……。」

アサイ
「まだ分からないことばかりだけど、調べてみる必要はあるのかもね。」

サヤマ
「どーせ、外出出来ないんじゃ、ヒマだしね。」

イシカワ
「調べてみますか?」

アサイ
「情報共有はこのサイトを使いましょう。各々、調べた事を定期的に情報交換する。」

イシカワ
「おっけー。俺は物流関係調べてみるかな。地元田舎だし、外がどうなってんのか、探ってみる。」

サヤマ
「それじゃ、私はSNSを中心に発信されてる時間と場所から情報の内容と偏りを調べて見ようかな。」

アサイ
「私は……どうしよう。ん~、都内のロックダウン中の仲間に声掛けてみるわ。近隣の状況とか色々調べてみる。」

サヤマ
「それじゃ、集合時間決めようよ。」

イシカワ
「何だか、面白い事になりそうだな。」

アサイ
「この国が、最悪のシナリオを歩んでいない事を願うわ。」

イシカワ
「んじゃ、またな!」

サヤマ
「は~い、また明日。」

アサイ
「首都の都市封鎖、ロックダウン。首都機能が停止した都市で広がる謎のウイルス、スーパーキラーT細胞。何かある。必ず、何かが起こる。」

幕間 終わり

第4話へ続く


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