見出し画像

『境界線の彼方』ホワイトデー声劇 決勝用ハッピーエンド 『赤』想定3分

『境界線の彼方』 作 沖ママ

《電話での会話》


『3月14日。この日は世界的に休日となり、バレンタインである2月14日と合わせてセットで考えられている。全ての商店、機関は停止し、外出することすら許されない……。そんな日だ。』


「んな訳、あるかーーー!!!」


『何?ダメ?この設定やっぱりダメ?』


「ダメです。それに、今日は2月14日で、まだホワイトデーじゃないでしょ?」


『は?何言ってんの?今日は3月14日だろ?』


「頭おかしくなっちゃった?大丈夫ですかぁ~?今日は2月14日です。」


『ちゃんとカレンダー見てる?今日は2023年3月14日、火曜日だろ?』


「カレンダー見てるわよ。今日は2023年2月14日、火曜日でしょ!?」


『えっ!?合ってる……よな。』


「んん!?1ヶ月、ズレてる?」


『そんなまさか!?』


「ねぇ、カレンダーもう1回見てみて!」


『2月14日も3月14日も赤字だと!?火曜日で平日のハズだろ!?』


「あなた……どこに居るの?」


『どういう事だ。ここは俺の居た世界ではないのか?待ってろ、今そっちに行く。』


「大丈夫なの?」


『分かんねぇけど、会えばハッキリするだろ?』


「ま、まあ……そうね。でも……無理だけはしないでね。」


『無理なもんか!』


「分かった。待ってる。」

男《モノローグ》
『俺が家を飛び出すと、そこには有り得ない世界が広がっていた。空、信号機、街中のネオン、全てが赤に染まっている。』


『な、なんだよ……これ……。』

女《モノローグ》
「私は彼との電話の後、ネットで調べてみる。普段通りのニュース、そこにはただ、日常が流れていた。」


「あれ、これ……何だろう?」


『はぁはぁはぁ……。着いたぞ。ここが、あいつの住んでるマンションのハズだ。563号室。』

男《モノローグ》
『心臓の鼓動(こどう)が早くなる。エレベーターに乗っている時間がやたらと長く感じる。』


「なんでこんな所に手紙が?」


『563号室……ん?……なに?空き部屋?』

女《モノローグ》
「手紙を読んだ私は、震える手で彼へと電話をかける。」


『も、もしもし!なんだ?どうした?どういう事だよ!』


「……ごめん、ごめんね。」


『おい!何があった!?』


「お願い、これを見て。これだけは言わせて!大好きだよ。」


『おい!おい!』

女《モノローグ》
「私は今起こっているであろう事態の全てを、手紙の意味を、そして自身の存在を彼に送る。」


『……な!?そんな!?』


「……大好きだよ。」


『馬鹿野郎、それはこっちのセリフだ。』

男《モノローグ》
『彼女から送られてきたメッセージと共に写真が1枚。それは1月の誕生日に送った赤いガーネットの埋め込まれたネックレスだった。』


『これで良かったのか?』


「……うん、ありがとう。」

終わり

※ガーネットの石言葉は真実、友愛、繁栄、実り、変わらない愛情、変わらない友情、忠実さ等。

※ネタバレ
563号室、手紙、出会えない2人

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?