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『いつも愛らしく』 ホワイトデー声劇 決勝用バッドエンド 『紫』想定3分

『いつも愛らしく』 作 沖ママ

男《モノローグ》
『あの日、君は来なかった。バレンタインの日、待ってて欲しいと言われたあの場所に、君は来なかった。』


「ごめんね、遅くなっちゃた。」


『大丈夫、それよりほら、落ち着いて。』


「うん、ありがと。あぁ!」


『なんだ?どうした?』


「このお花!」


『ん?花?あぁ、この紫の花がどうかしたのか?』


「ロベリアだよロベリア。このお花さ、蝶々みたいじゃない?綺麗(きれい)だよねぇ。」


『ロベリア……そうか。君が好きだって言ってた花、これがそうなのか。』


「そうだよ~。このお花が咲く場所で待ち合わせするの夢だったんだよね。えへへ。」

男《モノローグ》
『紫が好きな君が、好きだと言っていたこの場所。ロベリアが咲いているこの場所がお気に入りだったよね。暖かくならないと咲かないけれど、毎年花を咲かせるのを楽しみにしていた。』

女《笑いながら》
「ねぇ、見て見て!ロベリアが咲いてる!まだ2月だよ!?さすがに早すぎるでしょ。」


『君がいつも熱心に見ているから、お店の店主がこの時期に咲くように頑張ってくれたのかもよ?』


「ふふふ、そうだといいなぁ。あ、そうだ。今日は何の日か知ってるよね?」


『知ってるさ、バレンタインだろ?』

女《最後にキス》
「そそ、ハッピーバレンタイン。ちゅっ。」


『お、お前!?ちょっと!』


「あはは、照れてる照れてる~。さ、寒いしお店、入ろ。」

男《モノローグ》
『本来なら2月には咲かないロベリアが紫の花を咲かせ、その花が咲いているのをじっと見ていたのを知っている。』


「あれから1ヶ月。」


『ロベリア……相変わらず、咲いてるな。』


「私は今、彼の元には居ない。」

男《モノローグ》
『ホワイトデーの今日も、咲いてるんだよ。紫色の花が咲いている。なのに、それなのに……。』

女《心の声のイメージ》
「ホワイトデーの日、あの場所で待ってて。」


『電話……?もしもし……。』

男《モノローグ》
『彼女の電話から知らない声で直ぐに来て欲しいと連絡が入る。俺は指定された場所へ向かい、ドアを開ける。』


「なっ……。そんな!嘘だろ!?」

女《モノローグ》
「ベッドに横たわり、動かなくなった私の横で、彼はただ、立ち尽くしていた。」

男《モノローグ》
『彼女が買った物だろうか、無惨(むざん)な姿になったロベリアの花束が、横たわる彼女に添えられていた。』

終わり

※ロベリアの花言葉
いつも愛らしい、謙遜

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