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2人声劇想定15分『恋を夢見て恋に恋するふたり』 作 沖ママ

登場人物
山田 隆志 (やまだ たかし) : 男性
谷川 楓 (たにがわ かえで) : 女性


谷川 楓《ナレーション》
「あなたは恋、してますか?」

山田 隆志《ナレーション》
『あなたは恋に、何を求めますか?』

谷川 楓《ナレーション》
「これは恋に恋焦がれる女性と。」

山田 隆志《ナレーション》
『恋を夢見る男性のお話。』

《扉開ける オフィス内》

谷川 楓
「おはようございます。今日からこちらに配属になりました……って、あれ?」

山田 隆志
『……おはよう。』

谷川 楓
「あ、おはようございます。今日からこちらに……。」

山田 隆志
『あぁ、知ってるよ。谷川君だろう?』

谷川 楓
「は、はい!谷川 楓(たにがわ かえで)です。宜しくお願いします!」

山田 隆志
『君も災難だね。新入社員さんかな?』

谷川 楓
「あ、あの。入社5年目……です。」

山田 隆志
『5年目!?あぁ~、それは本当に災難だったね。』

谷川 楓
「え?それってどういう……。」

山田 隆志
『まぁまぁ、そのうち分かるよ。あぁ、そうだ。コーヒー、飲むかい?』

谷川 楓
「えっと……いただきます。」

山田 隆志
『あはは。そんなにかしこまらなくてもいいんだ。もうちょっとかかるから、その辺に座ってて。』

谷川 楓
「あの、その……。」

山田 隆志
『あ、君の机。そこ、その資料の山になってるとこの隣。荷物置いて待ってて。』

谷川 楓
「ありがとう……ございます……。」

山田 隆志
『気楽に気楽に。ここはそういう部署だから。』

谷川 楓
「あの!ここって!」

山田 隆志
『お~っとと。コーヒーが出来たようだよ。……はい、谷川君。君の分。』

谷川 楓
「あ、ありがとう……ございます。」

山田 隆志
『熱いから気を付けてね。』

谷川 楓
「あちっ、あっつ~。」

山田 隆志
『言ったそばから。ここだと何だから、ちょっと向こう、行こうか。』

谷川 楓
「向こう……ですか?」

山田 隆志
『あぁ。この奥に扉があってね。非常階段があるのさ。』

谷川 楓
「……正直、外の空気が吸いたい気分になってきました。」

山田 隆志
『そりゃそうだろうね。ここは資料倉庫だから、紙とデータしかない。』

《間を空ける 外に出る 非常階段》

谷川 楓
「あぁ~、やっぱり外は落ち着くな~。あっ、あの……私、好きな人が居たんですよ。」

山田 隆志
『ほぅ、それは元いた部署の……かな?』

谷川 楓
「えぇ、仕事が出来て……カッコ良くて。憧れの先輩でした。」

山田 隆志
『……それで?』

谷川 楓
「それで、頑張って認められたい。一緒に仕事がしたいって思ってました。」

《山田 コーヒー飲む》

山田 隆志
『……なるほど。』

谷川 楓
「……私……空回りばっかりで、迷惑ばかりかけてしまって。資料の日付け間違えたり、相手先のお名前間違えてたり。それでもどうにかして一緒になりたくて、でも……余計な事するな。って言われちゃいました。」

《谷川 コーヒー飲む》

山田 隆志
『……そうだったのか。』

谷川 楓
「それで、いつしか避けられるようになってしまって。……何とかしたかった。頑張って頑張って一緒に仕事したかった。……出来ませんでした。」

山田 隆志
『結局、一緒には仕事出来なかったのか。』

谷川 楓
「えぇ。他の子に取られちゃった。それから直ぐに噂が流れたんです。」

山田 隆志
『へぇ、噂?』

谷川 楓
「取り引き先の方と不当なやり取りしてるとかなんとか。それで先輩の仕事がキャンセルになったとかなんとか……。何か頭、真っ白になっちゃって、覚えてないんです。気が付いたら辞令受け取ってて……。今思えばおかしいですよね。」

山田 隆志
『そうだね。通常であればそんなに早く辞令が交付されることは無いな。仕組まれた……と見るべきだろうね。』

谷川 楓
「そう、ですよね。やっぱり……。」

山田 隆志
『しかし、谷川君。君は戦わずにここに来た。』

谷川 楓
「……疲れちゃったんです。仕事にも、恋愛にも何もかも。」

山田 隆志
『君は、復讐したいと思うかい?』

谷川 楓
「復讐……ですか?」

山田 隆志
『そう、復讐。君が望むのなら、可能であると言っておこう。しかし、望まないのであれば、この件に関しては何も言わない。』

谷川 楓
「もう、いいかな。出来れば関わりたくない。だから、ここに素直に来たのかも。あっ!」

山田 隆志
『ん?どうした?』

谷川 楓
「私ばっかり喋っちゃって、すみません!あ、あの……えっと……お名前……。」

山田 隆志
『あぁ、俺は山田。山田 隆志。なに、気にする事はない。ここはそういう部署さ。』

谷川 楓
「そういう、部署?」

山田 隆志
『そう、人材の墓場。みたいなね。』

谷川 楓
「えぇ!?そんなところに来ちゃったんですか、私!あぁ、どうしよう。そんな部署とは知らずに。資料課だったから、裏方みたいなところだと思ってたら人材の墓場だなんて……。終わった……。私の社会人人生……短かったな……。」

山田 隆志《笑いながら》
『おいおい、随分な言いようだな。俺なんてここに7年もいるんだぞ。』

谷川 楓《きっと から独り言》
「人材の墓場ですよ、墓場!きっと資料課とか言いながら窓際部署なんだわ。毎日ただコピーとか、資料整理とかするんだわ。……でも、追い出し部屋じゃないのよね。毎日マークシートで、適性検査とかやらないだけマシか。あぁ、でもでも、鉛筆削るだけとか、パソコン眺めてるだけとかだったらどうしよう。」

山田 隆志
『谷川君!』

谷川 楓《おどろく》
「ふぁい!?」

山田 隆志
『君はどうやら、思い込みが激しいタイプのようだ。』

谷川 楓
「あっ……。すみません。山田さん……7年も……。」

山田 隆志
『谷川君、その辺にしておいてくれないか。何か心の奥底をえぐられているような気がする。』

谷川 楓
「ご、ごめんなさい!そうですよね。山田さんだってこんなところにずっといたい訳じゃないですよね。お仕事、頑張りたいですよね。それなのに私……。」

山田 隆志
『谷川君!』

谷川 楓
「……すみません。」

山田 隆志
『俺はね、この仕事好きだよ。』

谷川 楓
「えっ!?」

山田 隆志
『この資料課には、会社の全てが、歴史が残されている。なんならこうして非常階段でコーヒーを飲んでいる今、この時も歴史は刻まれていく。そうして蓄積された全てが、ここにはあるんだ。その管理の全てを俺は任されている。これは素晴らしい事じゃないかな?』

谷川 楓
「はぁ……そうなんですかね。」

山田 隆志
『そうだとも!会社の歴史である資料が俺のこの手でまとめられて行く。だからこそ、俺はこの仕事に誇りを持っているんだ!』

谷川 楓
「ここ。非常階段ですけど、大丈夫そうですか?」

山田 隆志
『そうだったそうだった。では早速、仕事について説明しよう。』

《間を空ける オフィス内》
《2年経過》

谷川 楓
「あれからもう2年なんですね。早いなぁ。」

山田隆志
『時の流れなんてそんなもんさ。』

谷川 楓
「山田先輩、今日仕事終わったら……飲みに行きません?」

山田 隆志
『いいね、久しぶりに行こうか。』

谷川 楓
「明日は休みだし、朝まで飲むんですから。付き合って下さいよ?」

山田 隆志
『あはは、良いだろう。』

谷川 楓
「仕事も恋も、今度こそ成功させてみせる。」

山田 隆志
『谷川?どした?』

谷川 楓
「仕事、早く終わらせて行きますよ!」

山田 隆志
『はいはい。分かったよ~。』

谷川 楓
「ふふふ、楽しみだな。」

山田 隆志
『こんな恋もある……か。』

終わり

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本文込みの終わりまでで3000文字。
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