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糸満市にある2か所のバスターミナル

沖縄県糸満市には、琉球バス交通と沖縄バスの路線が発着する「糸満バスターミナル」と、那覇バスの路線が発着する「糸満営業所」の2か所のバスターミナルが存在する。この2つのバスターミナルの歴史について整理してみた。

初代糸満バスターミナルは3社で使用していた

1974年9月末時点のバスターミナル一覧$${^1}$$によると、初代糸満バスターミナルの開設は、1957年8月1日である。所在地は「糸満市糸満1955」となっており、地図で示すと以下である。

この当時の糸満バスターミナルは、琉球バス、沖縄バスに加えて、那覇交通も加えた合計3社で使用していたようである。そのため、この当時の糸満市内のバスターミナルは、この糸満バスターミナル1か所のみであった。
初代糸満バスターミナルがあった1970年9月当時の航空写真を以下に示す。

初代糸満バスターミナル 1970/09/27撮影
(国土地理院の空中写真【MOK701X-C23-10】を筆者が加工)

2代目バスターミナルは1ヶ月間のみ?

先ほどの資料から1年後の1975年9月末時点のバスターミナル一覧$${^2}$$によると、糸満バスターミナルの住所が「糸満市糸満1945」と微妙に変わっている。地図で示すと以下であるが、1974年9月末時点の「糸満市糸満1955」とはほぼ同地である。

誤字なのかと一瞬思ったが、開始年月日が「1975年8月30日」、乗り入れ会社は「琉球バス、沖縄バス」と住所以外も変わっていることから、誤字ではなさそうだ。
事情はよく分からないが、これが2代目糸満バスターミナルということになる。また、那覇交通の名前が消えたことから、この移転に合わせて、那覇交通は、2社とは別の位置にバスターミナルを設置したのだと思われる。

なお、沖縄バス創立30周年誌$${^3}$$によると、糸満バスターミナルは1975年10月1日に埋立地に移転したとある。埋立地とは、さきほどの1970年当時の航空写真で西側(左側)にあった更地で、2代目バスターミナルの次の移転先だと思われるが、この記述が正しいとすれば、2代目バスターミナルは、1975年8月30日~9月30日の約1か月のみの存在だったようである。

埋立地にできた3代目糸満バスターミナル

前述のように3代目糸満バスターミナルは、1975年10月1日に設置された。1977年12月当時の航空写真を以下に示す。

初代~3代目糸満バスターミナル 1977/12/07撮影
(国土地理院の空中写真【COK771-C64A-4】を筆者が加工)

この3代目糸満バスターミナルは、現在も場所は変わらず存続している。
初代糸満バスターミナルの西隣にあった糸満自動車学校も、埋立地に移転している。地主から返還を求められて、一斉に移転したのだろうか。

那覇交通の糸満バスターミナルは?

那覇交通は、1975年9月末時点で別に糸満バスターミナルを設置していたことは前述の通りである。この別に設置したバスターミナルが、現在の那覇バス糸満営業所だと思っていたが、那覇交通創立30周年誌によると、1979年(昭和54年)10月4日に糸満ダイヤ調整所が落成したとあり、1975年9月~1979年10月の空白期間が生じる。

昭和54年10月4日 市外糸満ダイヤ調整所新社屋落成(糸満市真栄里)

那覇交通株式会社創立30周年記念誌(1981年4月 那覇交通発行)p.103

よって、1975年9月から1979年10月までの間には、2代目糸満バスターミナルとは別に、かつ現在の那覇バス糸満営業所とは別の位置にバスターミナルが設置されていたようである。

ちょうどその時期に該当する1977年5月12日時点の那覇交通のバス路線図$${^4}$$には、糸満バスターミナルの記載があり、前後のバス停名や距離からすると、現在の双子橋バス停付近に設置されていたようである。

1977年12月当時の航空写真を以下に示す。

糸満バスターミナルの位置関係 上:1977/12/07撮影/下:1977/12/1撮影
(国土地理院の空中写真【上:COK771-C64A-4/下:COK771-C65-4】を筆者が加工) 

すでに3代目糸満バスターミナルが設置された後であるが、後の糸満出張所はまだ設置されていない。1977年時点の路線図$${^4}$$によると、この時に那覇交通は現在の双子橋バス停付近に別に糸満バスターミナルを設置しているはずなのだが、小規模だったせいか航空写真ではよくわからなかった。

拡大して縮小した糸満営業所

繰り返しになるが、那覇交通創立30周年誌によると、1979年(昭和54年)10月4日に糸満ダイヤ調整所が落成したとある。また同誌によると、同年同月24日より糸満線が乗り入れを開始したようである。

昭和54年10月4日 市外糸満ダイヤ調整所新社屋落成(糸満市真栄里)
昭和54年10月24日 市外糸満線路線延長運行開始

那覇交通株式会社創立30周年記念誌(1981年4月 那覇交通発行)p.103

糸満ダイヤ調整所完成後である1984年11月当時の航空写真を以下に示す。バスが2台ほど停車している敷地があり、これが1979年に完成した那覇交通の糸満ダイヤ調整所、のちの糸満出張所である。

那覇交通糸満出張所 1984/11/09撮影
(国土地理院の空中写真【OK841X-C15-3】を筆者が加工)

この糸満出張所であるが、1993年9月当時の航空写真を見てみると、敷地面積が約2倍に広がっている。1つ前の航空写真が撮影された1984年との間である1988年7月6日に、33番・糸満線と46番・西原線を統合して、33番・糸満西原線(1日72本運行)が誕生していることから、管轄する車両台数の増加に伴うものであろうか。

那覇交通糸満出張所 1993/09/10撮影
(国土地理院の空中写真【OKC931-C56-4】を筆者が加工)

この糸満出張所は、那覇バス移管後に糸満営業所と名称を変更しているが、1979年設置当時から場所は変わらず現存している。
ただ営業所の敷地に国道331号糸満道路が建設されたことにより、敷地の西側が道路となり、営業所面積は、1984年当時ほどに縮小されている。2023年2月現在の管轄路線は、1日27本運行される446番・那覇糸満線のみとなっており、このくらいの面積があれば十分なのかもしれない。

まとめ

糸満バスターミナルおよび糸満営業所の移転の歴史を以下に示す。

糸満バスターミナルの位置関係
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

注釈

  1. 運輸要覧 昭和49年(1974年10月 沖縄総合事務局運輸部発行)p.116

  2. 昭和50年度 業務概況(1975年7月 沖縄県陸運事務所発行)p.24

  3. 沖縄バス30年のあゆみ(1981年6月 沖縄バス発行)p.57

  4. 運賃及び粁程表 昭和52年3月14日改定(1977年 沖縄県バス協会発行)


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