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中城湾港マリンタウンへ路線バスが走っていた

「中城港湾マリンタウン」とは、沖縄県西原町と与那原町にまたがった埋立造成地である。1993年から造成事業が開始され、2007年より埋立地の分譲が始まったが、その直後の2008年3月1日より約6年間のみだが路線バスが走っていた。


東陽バスが乗り入れを開始

乗り入れたのは東陽バスである。2008年3月1日から「57番・那覇マリンタウン馬天線」と「59番・那覇マリンタウン線」の2路線の運行を開始した。

57番・那覇マリンタウン馬天線

57番・那覇マリンタウン馬天線は、那覇バスターミナルを起点として、マリンタウン内を経由して、南城市の馬天営業所を終点とする路線であった。既存の37番・那覇新開線を、マリンタウン経由としたほか、開南経由ではなく、壺川経由となっていた。

57番・那覇マリンタウン馬天線と37番・那覇新開線の運行ルート
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

59番・那覇マリンタウン線

59番・那覇マリンタウン線は、那覇バスターミナルを起点として、マリンタウンを終点とする路線であった。ただし認可上は、マリンタウン内を循環して、那覇バスターミナルへ戻ってくる循環路線だったようであり、マリンタウン内のバス停は、片方向のみの停車であった。

59番・那覇マリンタウン線と37番・那覇新開線の運行ルート
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

マリンタウン内では異なるルート

路線名からすると、57番・那覇マリンタウン馬天線をマリンタウンで終点とした路線が、59番・那覇マリンタウン線・・・となりそうだが、厳密にはそうはなっておらず、マリンタウン内での経路は2路線で全く異なっていた。加えて、マリンタウン自体がまだ開発途中であったせいもあるが、2路線が新設されたものの、新しくマリンタウン内に設置されたバス停は3箇所のみであり、路線ごとに停車バス停が異なっていた。

57番・那覇マリンタウン馬天線と59番・那覇マリンタウン線の運行ルート
(マリンタウン地区を拡大)
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

運行本数は少なかった

2路線とも運行本数は少なく、57番・那覇マリンタウン馬天線は1日3~4本(平日)、59番・那覇マリンタウン線は1日2本のみ(平日)と、そもそも需要を見込んでのバス路線開設では無かったようだ。

57番・那覇マリンタウン馬天線と59番・那覇マリンタウン線の運行時刻表
(2008年3月 西原マリンパーク前バス停にて撮影)

マリンタウン内には、1.1haのバスセンター用地が確保されており、東陽バスが営業所を設置するという予定もあったようである。需要次第では増便、さらにはマリンタウン内にバス営業所を新設・・・という構想が、東陽バスの社内にはあったのかもしれない。

それからバスセンターの件についてですが、バスセンターも県のほうで、これも沖縄県内のバス企業の皆さんにプロポーザル方式の形だと思いますが、その用地を活用して拠点的なセンターとして活用していく企業の公募もしてきたと聞いておりますが、現地の東陽バスが非常に積極的でほぼ話がまとまっていたようなことも聞いていたんですが、やはり最終的にはどうしても採算性、あるいはそれだけの投資力というんですか、企業の体力では無理だということでこの話も消えてなくなったようでございまして、ですからバスセンターは今の地域から、場合によっては移動する、場所を変えるという方法も考えたらどうかという意見も多々あったんですが、最終的にはその辺の議論はそれ以上は進展していないようです。

与那原町議会 平成23年(2011年)6月定例会 6月16日-05号
太字は筆者によるもの
マリンタウン内に確保されたバスセンター用地
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

なお、59番・那覇マリンタウン線は、西原マリンパークでのイベント開催時には、臨時便が運行されるほどの需要はあったようだ。

2014年に2路線とも廃止

バス停の新設や運行本数の増便はおろか、ダイヤ改正すらされることなく、2014年8月31日をもって2路線ともに廃止された。約6年間のみの運行であった。廃止理由は「採算性の低さ」ということなので、赤字路線だったのであろう。

③について御答弁申し上げます。以前、東浜におけるバスの運行は実証実験ではなく、東陽バスの本格的な運用でございました。東浜を通過する路線バスについては、2系統の路線が運行しておりましたが、乗車率が低く、採算性が低いことから平成26年8月をもって廃止となっております。事業者に運行再開について確認を行った際には、現時点での再運行の予定はないとの回答でございました。

与那原町議会 平成30年(2018年)3月定例会 3月26日-03号
太字は筆者によるもの

なお、廃止された2路線の独自の運行区間のうち、マリンタウン内の区間は全廃となったが、壺川経由の区間については、与那原方面から那覇バスターミナルへの速達性という面で需要があると判断されたのか、翌日(2014年9月1日)より37番・那覇新開線の壺川経由系統として引き継がれている。

37番・那覇新開線に新設された壺川経由
OpenStreetMap®を元に作成 ©OpenStreetMap contributors

マリンタウンのバスセンター用地

ちなみに、前述したマリンタウン内の「バスセンター用地」は、2008年に公募したが応募は無く、2024年3月現在でも用地は確保されているようだが、その後の情報が無いことから、建設される目途はたっていないようである。

県と西原町、与那原町の3者で進める中城港湾マリンタウンプロジェクト(西原与那原地区)で県は、企業立地の進まないホテルやマリーナ、バスセンター用地など県所有地20.9ヘクタールについて用途変更も視野に企業ニーズ調査を始めた。2011年度末をめどに結果をまとめる。
 (中略)
県は2008年にホテル、コンドミニアム、バスセンター用地の購入者を募集したが応募は無かった。

用途変更含め調査 中城港湾マリンタウン/県、進出企業無く方針転換(2011年6月5日 琉球新報)


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