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ISO9001品質システム審査員のころ

 もう30年以上前のことですが、60歳台になって大学の同窓会に行くと、同期の連中は、いままで順調であった人々も、そろそろ定年で何も仕事をしていない人がぼつぼつ出始めた。また、もうすぐに役員定年だ、という人もいた。男にとって趣味の世界だけで、その後の長い人生を生きることは、大変キビシイことになる。男には、何かがほしいというのが実感です。しかし、組織のなかでしか仕事をしてこなかった人々にとっては、会社を離れて,何かをする、ことは、やりたくってもやり方が分からないようです。それで、悩んでいる人が多いようです。「今日よう(教養)と今日いく(教育)」が大切なことになる。そういう人には、私は、資格をとることを勧めていました。

 私は、1年半ほど努力して1996年に中小企業診断士工業部門の資格を取りましたが、実際には、思いとは違って、なかなかいい仕事を受けることが出来ませんでした。労多くて、得ることが少なかったとつくずく思います。すぐに今後多くの仕事が期待できる企業品質登録制度(いわゆるISO9000 品質システム)の審査員の資格を取得し、そのつてをたよって、財団法人日本品質保証機構の嘱託として、採用していただくことが出来ました。大学同期の知人の力添えがあってのことでした。そして1996年6月初めから、ISO9001品質システムの審査業務に携わることになりました。 

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 1996年秋からフルに審査をしており、昔調べた記憶では、年間約70社、8年間で延べ約500社の工場、事業所の審査をしました。 その後は、所属は、関連企業の株式会社国際規格研究所に移動しましたが、同じJQAの品質システム審査業務をしていました。この品質システムの仕事は沢山あり、70歳の2004年6月の誕生日までの8年間は、審査員として忙しく過ごしており、あっと言う間に経過しました。審査日数は、最初は年間160日~170日程度でした。ほとんどが全国各地への出張で体力的には大変厳しい仕事でした。8年間の後半には、健康のことなどを考えて、年間140日程度に減らしてもらっていました。自分の専門性から電気・電子関連の企業が中心でしたが、流通業や繊維産業など多くの企業の品質システム向上の指導をさせて頂きました。一応自分の現役時代の経験を生かすことも出来、生きがえを感じることが出来ました。審査業務をするにあたって企業の機密に触れるので、JQAとの間に守秘義務を交わしており、個々の企業に関する内容については、お話しすることは出来ません。

 地域的には沖縄から北海道まで、日本全国に亘っていて、航空機や新幹線による移動が多いので、過労にならない様、審査期間中もできるだけ早朝のウオーキング等を続け、健康管理に細心の注意をしていました。そのお陰か風邪を引かず、健康を理由に仕事を休んだことはなく、なんとか満70歳の歳まで勤めを続けることができました。一度タイのアユタヤの工業団地に、海外進出していた日本企業に審査に出かけたこともありました。行きの飛行機の中で、タイ語の最低の挨拶を一緒懸命に覚えました。「こんにちは、私は安達です」とタイ語の挨拶をしました。後は通訳がつきましたので、日本語で行いました。

 仕事がら全国各地へ出かけました。その際、健康維持を考えて、余裕があるときは(できるだけ)早朝に街を散歩しました。町並みや景色を見てくることが楽しみとなっています。たまには、前日に一日早く出かけ、一日追加して泊まって観光をする機会もあり、出張の疲れを癒やされました。ある年の年賀状に、一年間に行った場所を並べてみたら、心無い人から苦情がでました。「出張で出かけているのではないか」、とのいうことのようでした。「なにをまた」とは思いながら、勤め人の悲しみ、翌年の年賀状からはやめました。時にはデジカメで風景写真も撮っていました。そして出張先のホテルで、夜にパソコンのスライドショウを一人で楽しんでいました。(今その時の写真を探しています。出てきたら追加します。)

 思い出に残ることは、北は、網走ゼロ番地、札幌TV塔、三沢市のさびれた旧商店街、秋田のきりたんぽ、角館の武家屋敷、盛岡の前沢牛、会津若松のお城、荒砥市のそば、久慈市のリアス海岸、佐渡・真野町・七尾・和倉温泉(加賀屋)、長野・駒ヶ根市、栃尾の岩魚の刺身。南は、那覇の首里城、鹿児島の城山公園、高知の宿毛町、須崎のうつぼのタタキ、高知城の桜の開花、琴平・こんぴら宮、うだつがあがる脇町。西は、宮島の厳島神社、岡山・備前町、天の橋立またのぞき、福知山城。中部は、犬山城、水窪のしし鍋、等…

 2004年6月で、60歳代が終るまで続けました。その後の、満70歳からの第三の人生のスタートは、あきらめの気持ちもあり、多少は余裕をもって計画ができると考えていました。

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