介護認定

ここ最近、介護認定が厳しく感じられます。
不自然なくらいに。
札幌だけなのでしょうか。

ここ最近突然なのです。
すごく違和感を感じます。

介護認定の際には、医師(主治医)の役目として「主治医意見書」というものを作成するのですね。
役所から作成依頼が届きます。
A4サイズ2ページ分に渡ってチェックしたり文書を記載するところがあります。

で、一番最後の「特記すべき事項」というところが自分は一番大事だと思っていて、好きなように文章を書くことができます。
その部分に患者さんの具体的な状況などを書いたりします。
自分は結構真面目に書いているつもりですが、そもそも主事意見書は基本的に一番状態が悪いときのことを書いています。
症状に波がある場合は、状態が一番悪いときのことを書くのが鉄則だと思っています。

今回、「驚きの判定」「杜撰な認定調査の実態」が明らかになったので、それを紹介します。

80代半ばの女性のケースです。
これまで癌の既往もあり、両側の大腿骨人工骨頭置換術を受けており、変形性膝関節症もある。
脊椎の変形あるいは潰れている脊椎も多く、腰痛、下肢痛もいつも訴えている方です。鎮痛剤が欠かせない方です。
整形外科からは以前脊椎の手術を勧められたそうですが、現在では他にもうやりようがないとさじを投げられている状況です。
軽度認知所の診断もあります

これだけの情報を見てもその方のADLとか歩行状態など想像できますよね。

想像通りで、スタスタ歩くなんてできませんし、施設の広くない自室には手すりだらけです。
手すりで部屋が埋まっているような状況なのです。
ちょっとした移動(トイレまでなど)は手すりを使って何とか移動しますが、長距離移動する場合は車椅子です。

この方の介護度の変遷をみてみましょう。
令和4年:要介護2
令和5年:要介護3
令和6年:要介護1

脳梗塞・脳出血等で麻痺になった場合などリハビリで改善を目指せるのであれば目指すべきですし、介護度が軽くなることが期待できます。
しかしこの方は80代半ば。
何歳になっても筋トレすれば筋肉がつくとはいえ、上記疾患名から想像できるように劇的に歩行状態が改善するとは思えません。
骨の根本的な問題があるのですから。
現状維持を目指すのが精一杯ではないでしょうか。

現に昨年から今年にかけてADLが劇的に改善なんてしていません。
それなのに、いきなり「要介護3」から「要介護1」です
あり得ません。

判定結果はクリニックにも通知が来ます。
役所からクリニックに通知するかどうかは選択できるのですが、自分は毎回「通知する」にチェックしています。

この結果を見たとき、あまりにもひどくて驚きましたし、怒りに震えてはいませんが、怒りの感情はちょっとわきました。
役所の認定員は「患者さん自身をちゃんとみていない」ことが明白です。

で、次の診察日に患者さんに話を聞いたのですね。
すると驚きの話を聞きました。

軽度認知症ですからしっかりしている部分もあります。
そこで聞いた話では、「物忘れのテストを一切受けなかった」というのです。
正確には「見当識(今の季節とか)」のチェックだけはされたそうですが、それ以上のテストは受けなかったとのことです。
認知症の診断名がついているのにです。

見当識障害がなくても、短期記憶障害があることもあります。
この方がどう答えたのか、見当識障害ありとチェックされたのか、チェックされなかったのかわかりませんが、適当に答えたことがたまたま「正解」ということもあるのです。
必ず短期記憶までチェックするのが筋です。

ひょっとしたら、患者さんが覚えていないだけで、認定調査の時にちゃんと短期記憶の確認をしていたのかもしれません。
しかしそれはそれで、患者さんが「ちゃんと覚えていなかった」ことの証明になりますね。
結局は認知機能低下ありとなります。

さすがに担当ケアマネージャーも「再認定」の手続きをしました。
認定結果に納得いかない場合、再認定の手続きを取ることができます。

主治医意見書を再度作成することになります。
そこで熱くなってしまっている自分の本領発揮です。
上記に書いたとおり、一番最後の自由に記載できる「特記すべき事項」の部分です。

そこに患者さんの状況を改めて記入し、最後にこんな文章を注釈として書きました。
しかも赤線引っ張って。

『※本人に確認したところ、認定調査の際「見当識」の確認だけされ物忘れのテストは受けていないとのことであった。それで「要介護1」の評価をするのは妥当なのであろうか?重度の整形疾患も患っておりADLは決して良くなく転倒リスクが高い。認知機能検査も含め正確に認定調査がおこなわれているか、患者さんをしっかり評価されているのか甚だ疑問である。』

主治医意見書に赤線引っ張る医者なんてそうそういないと思います。
モノクロの書類なのに、きれいで豪華な2色バージョンのできあがりです。

患者さんのADLをちゃんと評価していない、認知症のテストも省いている。
あまりにも杜撰でいい加減な認定調査です。
こんなのがまかり通っていいわけはありません。

本当は認定調査の結果が送られてきたとき、そこに記載してあった区役所の担当者に電話しようとしたくらいでした。
自分が電話をするなんてよっぽどの時です。
でも患者さんに一応確認してからにしようと思いました。そんな矢先にすぐに再認定の手続きをしてくれていたので、「赤線」に自分の気持ちをぶつけた感じです。

で、そんなときに他の患者さんのご家族からも大変興味深い話を聞くことができました。
その方は要介護5だったのですが、今回突然要介護4と判定されたのです。
ご家族もケアマネさんも大いに疑問を持っていました。

そこで認定調査の時のお話を聞くと、前回の判定の時に見当識障害のチェックのとき、聞かれたことに対して間違ったことを答え、「チェック」が入ったそうなのです。
しかし今回は同じく見当識障害のチェックを受けた際、「答えられなかった」そうなのです。
そこで「答えられない=チェックが入らない=問題なしという判定」ということになったそうなのです。

あまりにもバカげた判定方法じゃないですかね。
判定員があまりにもおかしすぎます。

以前から実は介護認定が軽くなる人が増えるとボーナスがもらえるという制度があるとは聞いていました。
インセンティブ交付金あるいは保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金というものです。

介護事業に関して事細かに評価され、それに応じて自治体が国から交付金を得られる仕組みです。

その評価の中に
「要介護状態の維持・改善の度合い(要介護認定者の要介護認定の変化率はどの程度か)」
というものがあるのですね。

評価を高めよう、交付金を多くいただこうと恣意的に介護度を軽くしている、とも考えられなくはないのです。
この国が決めた予算を各自治体が奪いあっているとも言えます。

ちなみに「保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金」の国の予算は、
令和4年:400億、令和5年350億、令和6年300億
と、年々減らされています。

高齢化社会だと言われており、要介護者が明らかに増えているというのにです。
逆行して介護への締め付けが強くなっているのですね。
国は国民のことを思ってなんていないことがよくわかります。

まぁしかし、この「保険者機能強化推進交付金・介護保険保険者努力支援交付金」なんていらないっちゃいらないと思うんですけどね。

一例として札幌市の評価結果について、札幌市のHPでみることができます。
https://www.city.sapporo.jp/kaigo/incentive/index.html

ここにどんな評価指標があるのかについての詳しい資料がPDFであります。
https://www.city.sapporo.jp/kaigo/incentive/documents/hyokashihyo_r6.pdf

39ページにもわたるこの資料を見ていると頭が痛くなります。
「配点合計 400 点満点。」とか書かれていたり、テストかっての。
資料をさらっと見ていただければいいのですが、あまりにも項目が細かい。
こんな細かいことチェックしてやるなんて、膨大な事務作業です。
こんな膨大な事務作業に時間を費やすなら、「患者さんを実際にみてちゃんと評価できる体制作りをしろ」と言いたい。

自治体職員は予算獲得のために時間かけて手間かけて評価を行っているのです。
ここに関わる人件費だとか考えても無駄にしか思えませんね。

ちなみに、介護度の変化と関わる評価項目は、39ページあるPDFのなかの、15~18ページ目に当たります。

『目標Ⅳ 高齢者がその状況に応じて可能な限り自立した日常生活を営む(配点 100 点)』

というところですね。
配点は100点だそうです。
どうでもいいけど。
(でも400点満点中の100点ですからかなりウェイトは大きいです)

ここで
『短期的な(あるいは長期的な)要介護認定者の平均要介護度の変化率の状況はどのようになっているか。』
という評価指標によって、点数が決定します。

評価する作業もくだらないけど、こんなことも書いているのもくだらなく感じてきましたが続けます。
点数点数とか、配点とか、どうもテストを想起してしまって嫌な気分になってきます。

ちなみにここの資料の「留意点」というところにこのような事が書かれています。
とっても重要なところです。

『なお、要介護認定は、被保険者本人の心身の状態や介護の手間を丁寧に把握した上で、介護サービスの必要度を判定する重要なプロセスであり、全国一律の基準に基づき実施される必要があるため、当交付金における評価を考慮し、要介護認定が行われることは不適切であることについて留意されたい。』

わかりますか?
『当交付金における評価を考慮し、要介護認定が行われることは不適切であることについて留意されたい。』
ってはっきり書いてあるんです。

つまり、
「交付金欲しいからって、事実と異なるように介護度を下げるとかずるいことするんじゃないよ」
ってことです。

わざわざこんな注意が書かれているということは、そういうことがあるってことです。

札幌市は膨大なお金かけてオリンピック招致して失敗したし、札幌ドームという負の遺産も抱えているし、長谷川議員のための無駄な役所職員の出張費もかかっちゃったし、予算獲得に向けて血眼になっているのでしょうか。
介護のための交付金ですから他に流用なんてできなそうですけど、とにかくカネカネカネになっているのかもしれません。
※あくまで個人の勝手な憶測です。

ちなみに札幌市は、『目標Ⅳ 高齢者がその状況に応じて可能な限り自立した日常生活を営む(配点 100 点)』に関わる点数は、100点満点中70点
まだまだ点数を伸ばせる余力があるということで目をつけられているのかもしれません。
しかし老化していくのが自然なんだし、そんなみんな都合良く介護度が軽くなるわけじゃあるまいし、ここに点数をつけるのが間違っています
インセンティブ交付金が導入された理由として、「事業所が利益の心配をせずに介護度改善に取り組んでもらいたいから」ということがあるようですが(利用者の要介護度が下がると介護報酬も下がるから)、介護認定に不正が生まれる可能性があるわけですから、こんなものやめた方がいいと思います。

理不尽な介護認定には断固として戦います。
赤線で。

「理不尽な認定結果によるあなたの再認定請け負います」
なんて言えたら格好いいですけど、飛び込みの方の主治医意見書は承っておりませんのであしからず。

「主治医意見書だけ書いて欲しい」とかたまに依頼あるんですけど、その患者さんを日常的に診ていない、何も知らないのに責任持って書類を書くことなんてできるわけがありません。

患者さんの日常を知らなければ、家族の方や介護スタッフからの話を参考に書かなければなりません。
しかしその話には、状態が誇張されていて嘘があるかもしれないし、言われるがままに操り人形のように書くわけにはいきません。

だいたい「主治医意見書だけ書いて欲しい」なんて、その後通院する予定もないのに、なぜ「主治医」と言えるのですかね。
確かにかかりつけがない方もいるでしょうが、「主治医意見書」というネーミングが悪いのか、何かシステムを変えた方が良いようにも思います。
「主治医意見書」という名前である以上、自分が主治医でなければ書けません。

話を元に戻しますが、上記で紹介した以外にも、おかしくて違和感のある介護認定結果がここ最近出まくっているのです。
おかしなことが起きています。
これまでにもごくまれにおかしな判定はありました。
赤線引っ張ったのもかつてにもありました。
でも本当にごくたまにのことです。
数年に1回レベルの話です。

それが今のところ最近で赤線引っ張ったのは上記1名ですが、赤線引っ張りたい候補が増えてきています。

評価チェックとか無駄なことに労力をかけないで、もっと現場で汗流せよ。
最低限、まともに介護認定してくれよ。
と言いたいですね。

再認定になったら、こっちはまた書類作成しなければならないのですから、これまた無駄な労力です。
もちろん書類作成には費用がかかりますから、お金だって無駄にかかるわけです。
結局交付金もらったって、無駄にカネを浪費する羽目になるのです。

結局自治体は、おとなしい家族・文句を言わない家族に期待しているのでしょうね。
再認定を求めない家族です。
介護度がいきなり下がれば、介護保険でできることが当然少なくなります。
すると、必要なのにオーバーしてしまった介護サービスは自費となります。

自治体は当然カネを出したくないのです。
おとなしく自費でやってくれるなら、自治体としては万々歳でしょう。
再認定を求めない家族は結構いるのではないでしょうか。
「役所が決めたことだからそれに従うしかない」と思っている方は結構いると思います。

でも安くない介護保険を払い続けてきたんですよ。
受けれるものはしっかり受けなければなりません。
判定に不服があったら、堂々と役所に文句言いましょう。
それで何か害を被ることはありません。

ちなみに介護度が下がると利用料の単価が低くなるんですね。
ですから、介護度が下がってもその範囲内で介護サービスが済むのであればそれに越したことはありません。

しかし最初に紹介した例のように、要介護3から要介護1なんてあまりにも変わりすぎです。
明らかに必要な介護が受けれない部分が出てきます。

もはや、人をちゃんと評価できない認定調査なんて、まるで認定調査員がロボットのようです。
ひょっとして認定調査にAIが導入されていたりして。

と思ったら、そんなものがありました。

要介護認定支援AIサービス Aitice®

札幌市で使っているのか、どの程度普及しているのかわかりませんけど、上記患者さんで使用されていたりしたらまったく使えないシステムですね。

AIが進歩しようとも、それを使う人間がいい加減だとなんの役にも立たないことのよい実例です。

無駄に医療機関の食いものにされないように、自分でできるケアなど役にたちそうな情報を大公開していきます。