寿命とは

今回はワクチンだとかシェディングの話ではありません(いや、ちょっとワクチンの話ありあます)。
本業の訪問診療のお話です。

ゴールデンウィーク明けすぐに2件のお看取りがありました。

一人は104歳の女性です。
2025年1月からこの方を担当していたので、まる9年になります。
この方は最後まで女性でした。
診察時に「先生結婚してるの?」「立候補しようかな」と言ってみたり、診察時に手を握ると自分の手を口元に持っていて手の甲にキスをしたり、頬ずりをしたり。
高齢ということもあり、寝ている時間が非常に長いのです。
診察時に声をかけて目を覚ますと、上記のように一瞬目が覚めて、それが済むとまたすぐに深い眠りに入ります。
認知症の診断名はついていましたが、この方観察能力は抜群でした。
自分が髪を切るとそれにすぐ気づくのです。
「お兄ちゃん、髪切ったね」「かっこいいね」とか。
看護師さんの髪の変化にも敏感でした。
すごく褒め上手なのですね。
いつも寝ているのに本当によく気づくなと感心していました。

この方、施設入居でしたから当然新型コロナワクチンは接種されています(たぶんフルです)。
そしてコロナ禍では、コロナにも感染してしまい一時入院されました。
当然入院中には新薬を使用されています。
入院と聞いたとき、施設に戻ってくるのは難しいかなと覚悟していましたが、無事に帰ってこられたのですね。
しかしなぜか顔面が「ドス黒い」のです。
実はワクチン接種後にコロナ感染したケースで、顔がドス黒くなる方が他にもいました。
新薬の影響かわかりませんが、とても不気味な症状です。

しかしそれも乗り越えまた平穏な日々を過ごされていましたが、先日眠るようにお亡くなりになられました。
大往生ですね。

高齢ですからワクチンのリスクを考えると自分だったら絶対に勧めませんが、この方はワクチン接種をしてもそれを乗り越え、コロナに感染して新薬を投薬されてもそれを乗り越え寿命をまっとうされました
本当の寿命はもっと長かった可能性もありますがそれはわかりません。
しかし眠るように苦しまず亡くなられたのであれば、これが寿命と捉えてもいいのかなと思います。

この世で104年間過ごされたのです。
本当にお疲れさまという感じですね。

お二人目は90代の女性です。
この方はずっと九州地方に一人で住んでおられました。
しかし転倒・骨折などもあり、札幌の義理の娘様が札幌に呼び、同居することになったのです。
義理の娘様はご主人をご自宅で看取っており、札幌での二人暮らしが始まったのでした。

義理の娘様は、その義理のお母様を本当に大切に丁寧にサポートされ、天使のような女神様のような方でした。

さてその義理のお母様、当初は顔つやもすごく良く、血圧も問題ないし健康そのものという感じだったのです。
しかし2024年2月突然の血尿を認めました。
尿路感染の可能性もあったのですが、繰り返し認めたので泌尿器科で精査すると膀胱癌が判明したのです。
ちなみにこのとき受診した泌尿器科は当初行く予定のないところで、本来は別の病院に受診する予定だったのです。
しかし近くの泌尿器科に急遽変更したら、たまたま担当した先生が、その義理の娘さんの従兄弟(医師)をご存じだったとか。
本当に不思議な巡り合わせです。

明らかな転移はないものの、高齢ということもあり手術はしないで経過をみることとなりました。
積極的な治療はしないとはいえ、何かしてあげたいというのが心情です。

そこで自分は丸山ワクチンを提案させてもらいました。
するとその義理の娘さんも丸山ワクチンのことはご存じで、話はスムーズに進み、書類をすぐに作成して丸山ワクチン接種を開始しました。
もちろんご家族の協力あっての丸山ワクチンです。

実は膀胱癌に対して「BCG注入療法」というのがあるように、丸山ワクチンと膀胱癌は相性が良いような印象があります。
(BCGと丸山ワクチンは正確には成分は異なりますが)
他の患者さんでも、膀胱癌で肝転移のあった方が丸山ワクチン開始後落ち着いて過ごされていました。
実は丸山ワクチン開始後、肝転移が消えたのです。
当初余命も宣告されていたようですが、3年間過ぎてもご存命です。

上記の義理のお母様の経過に戻りますが、丸山ワクチン開始後血尿が止まりました
良い経過かなと思ったのですが、どんどん痩せていってしまったのです。
そして自力で歩くことも困難になり、あっという間に寝たきりとなってしまいました。

娘さんは実は元教師で、しょっちゅう教え子さんたちがご自宅に遊びに来られ、介護のお手伝いにきてくれたりしたのです。
入浴介助もしてくれたと伺いました。
それだけ人望のある先生だったことがよくわかりますね。
本当に女神様のようです。

そしてあっという間に食事も取れなくなり、それでも娘さんが作るジュースは「おいしい」と言って飲んでおられました。
自分も飲ませてもらいましたが本当においしいのです。

最後は下腹部がつらそうな様子をみせ、しかし本人はうまく訴えられません。
麻薬系の貼り薬を少量から開始したのですが、5月上旬眠るように亡くなられました。

お看取りに伺ったのですが、その姿をみて「美しい」と感じたのです。
「美しい」と感じるなんて始めてかもしれません。
このように感じるのが自分でも不思議に感じました。
亡くなられたご遺体も美しいと感じましたし、その空間全体も「美しい」と感じたのです。
何と表現したらいいのかわかりませんが、優しさに包まれた空間というか…。

ご自宅でご友人たちとお別れされたそうです。
娘様より掲載の許可をいただきましたので、その様子をご紹介させていただきます。

うしろの夕焼けもきれいです。

看取りに伺いながら居心地が良いというのもおかしな話ですが、しばらくそこにいたい気分であったにもかかわらず診療の合間でしたのですぐにおいとますることになりました。

車でご自宅を出発してすぐ、赤信号で停車しました。
すると前方から蝶々がやってきてフロントガラスの前まで来て飛び去っていったのです。
まるで挨拶に来たかのように。
すぐに「あぁ、○○さん(亡くなった患者様)だ」と思いました。

以前ブログにも書きましたが、「蝶々」のことを古代ギリシャ語で「プシューケ-」と言います。
「プシューケ-」には別の意味もあり、それは「心」とか「魂」だそうです。
蝶々は海外でも「死者の魂が宿る」とされているのですね。

ちなみにこの方のお宅には年老いたワンちゃんもいたのですが、自分が膝ついて看取り確認をしている間、そのワンちゃん自分の足の裏をずっと嗅いでいたそうです。
確かになんか足の裏がくすぐったい感じがしたのですよね…。
真剣な場面であったのですがなんだか微笑ましい感じでした。
余談でした。

2月に症状が出現し、膀胱癌と診断されその時点では明らかな転移はなかった。
しかしあれよあれよという間に進行し5月に亡くなられました。
たったの3ヶ月です。
膀胱癌にしてはあまりにも急激すぎる展開です。

実はこの患者さん、ワクチンを5回接種されていました。
世間で言われている「ターボ癌」、自分が言う「突然癌」のケースだった可能性があります。

そもそも膀胱癌でこんなに急速な進行なんて聞いたことがありませんし、ましてや90歳を超えている方です。
癌が発症しようとも通常は進行はゆっくりのことが多いです。

ワクチン接種が悔やまれるところですが、最期眠るような美しい表情だったのがせめてもの救いです。

ADLが急速に低下し、介護量がどんどん増えているにかかわらず、娘様は介護保険を利用せず自分で工夫をされ最後までがんばっておられました。
一応介護申請はしたものの、あまりにも役所の手続きは遅すぎるし、しかも使えそうな介護サービスがなかったとのこと。
中途半端な介護サービスを利用するくらいなら、自分で工夫をしてやり慣れた方法でやった方が楽とのことでした。
娘様の方が潰れてしまうのではないかと心配になりましたが、教え子さんたちの協力もありまっとうできたようです。

大事なご家族のために最期の最期まで献身的に看病・介護されたお姿には心から頭が下がる思いです。
亡くなった患者さんのお顔を拝見したときも、まるで娘様に「ありがとう」と言っているかのようでした。

大切な家族が亡くなってしまうと、「あのときもっとああしていれば良かった」など後悔することも多々あるかと思います。
考え出したら後悔はつきませんが、ここまで献身的に看てこられたら、やりきった感の方が強いかなと思いました。

あの世に帰った魂は、残されたご家族が悲しんだり後悔することを一番つらく思うそうです。

患者さんの魂、娘様ともにとって美しい最期だったのかなと思います。

上記お二人のケース、ワクチンを打たなかったらもっと長く生きたかもしれません。
しかし神さまではないですからそこはわかりません。
最期の表情が穏やかであったら、それがその人の寿命であったと考えた方が良いのかもと思いました。
この世での肉体の寿命です。
魂は生き続けると思っていますから。
この世でのお役目を終え、元いた世界に帰るのです。

ワクチンのことを考えたらきりがありませんが、最期の最期に家族など周囲に気づき・学びを与え旅立たれたのかもしれません。
もちろん自分も学ばせてもらいました。

上記お二人は素敵な最期だったと思います。
素敵な最期なのに「ワクチン」という汚れた言葉で云々語りたくないなと思いました。

「お疲れさま」「ありがとう」
という言葉が自然に出てきますね。

と、よさげな話を書いておいて最後にどうでもよい雑学です。
上記で「蝶々」の話題を出しましたが、蝶々の専門的な数え方って、1匹とか1羽とかではなく「1頭、2頭、3頭…」なんですって。
一般的には「匹」で数えるのでよいそうですが。

「あっ蝶々が2頭飛んでる!」とか言って、横目でチラッチラッと見てきたら、きっとその人はきっと自分の知識をひけらかしたいのでしょう。
そんなときは、「よく知ってるね!すごいね!」と感心したフリをして優しく対応してあげてください。

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おおきな木ホームクリニック
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