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No.1287 着た切りスズメ、みじめ!

昨日の「虎に翼」(第14週・67話)で、初代最高裁判所長官・星朋彦(平田満)が、穂高重親(小林薫)に最高裁判事を依頼する場面があり、前のめりになって観ました。
 
穂高「いやあ、私なんかに声を掛けてくださるとは…。」
 星「分かりますよ。もう自分は、人生を頑張り尽くした。時代も変わった。役目を終えた。いわば、出がらしって話で…。でもねえ、出がらしだからこそ、出来る役目や、若い奴らに残せることがあるんじゃないかな…。」
穂高「……。」
 
星長官の平易でいて含蓄のある殺し文句にシビレます。人を見る目のある大人物です。
 
昨日、職員室を出たあたりで、同じ国語科の後輩先生から、
「ズボンの後ろ、真ん中のベルト通しにベルトが通っていませんよ!」
と背後から笑顔で声を掛けられました。
 
「えっ?」と後ろに手を回すと、確かにベルトが通っていません。
「あらま!」
ぜーんぜん気づいていませんでした。当方「舌切り雀」ならぬ「着た切りすずめ」です。先週からずっと同じズボンを履いている訳ですが、むくつけき男子生徒も、見目麗しき女生徒も、廊下をすれ違う先生方も、誰一人として教えてはくれませんでした。
 
「誰が、爺さんのそんなところを見るもんですか!」
妻に話せば、そう言われるに決まっている(?)ので、敢えて地雷を踏むようなことはしませんが、梅雨の候とは言え、世間の風は冷たいものです。
 
さすがに渉外部長のK先生、細やかな気配り目配りが、こんなところにもあらわれます。私は歩きながらベルトを通しなおしましたが、なるほど、フィット感がありました。
 
「でもねえ、出がらしだからこそ、出来る役目や、若い奴らに残せることがあるんじゃないかな…。」
と星長官はおっしゃいましたが、
「出来ないことを若い人に教えられている『出がらし』たぁ、俺のこったぁ!」
頭の中の出がらし君が、悔し紛れの見栄を張りました。


※画像は、クリエイター・桜井飛英さんの「ロンドンのファッションショー」で撮影した1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。さすがに、ベルト通しにしっかり通っていますね。