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No.683 一つの光明

人との待ち時間調整のために、街角にあった喫茶店の窓から暮れ泥んでゆく様を眺めたことがあります。師走間近のころでしたが、時計の針を追いかけるように暮れて行きます。
 
「春の日は暮れそうで暮れぬ」と言いますが、「秋の日はつるべ落とし」の謂いです。たった30分ほど、ぼーっとしていたのでしたが、外は一気に暗くなりました。黒いカーテンが引かれたようでした。

人生も斯くして暮れて行き、わが体力も同じように速い速度で変化していっているのでしょうが、眼前の景のようには見えないものだから、幸か不幸か気付かない(気付けない?)だけなのかも知れません。
 
普段、喫茶店でこんな贅沢な時間の過ごし方をしたことがなかったので、新鮮な感じでしたが、かえって意図せぬ気づきに繋がってしまいました。我が人生も、暮れ方です。
 
翌朝、なぜだか4時ごろに急に目が覚めました。外は、まだ真っ暗です。眠れなくなったので、BSシネマで放映された「ベン・ハー」の録画を観ました。副題に「キリストの物語」とあるように、
「西暦1世紀の初め、ローマ帝国支配下のエルサレムに生まれたユダヤ人貴族の息子ベン・ハーの波乱に富んだ半生を、イエス・キリストの生涯と絡ませて描いた歴史スペクタクル大作。」
ということですが、1959年(昭和34年)の製作で、上映時間が212分に及ぶ超大作です。主役のベン・ハー(ユダヤ語で「ハー(人名)の息子」の意)は、ご存知チャールトン・ヘストン(36歳)が演じました。ご親切にもトイレ休憩を挟む幕間の時間もセットされていました。
 
観終わってふと気付いたら、「復活」を告げる光明のように夜がすっかり明けていました。人の視覚は、さまざまな物思いと直結する役目も果たすのでしょうか、昨日「人生の暮れ方」を見たようで暗くなっていた気分が、一気に晴れていくのが分かりました。

※画像は、クリエイター・マドモアゼル・鳩 〜365日の五行詩〜さんの、タイトル「聖母」をかたじけなくしました。お礼を申し上げます。