No.1091 こっつんこ

昨夕、講座に参加くださっているご婦人の御義父様のお通夜が行われ、お悔やみを申しに会場を訪れました。92歳の長寿の生涯を終えられたそうです。
 
少し早めに会場について、先に御焼香をすませ、お悔やみを申しました。
「長い間、よく親孝行なさいましたね!」
そう言葉をかけて深々と礼をしたのですが、彼女も深々と礼をしてくださり、お互いの頭がコッツンコしてしまいました。私は、距離感もつかめなくなっているようです。
 
その瞬間、ふと思い出したのは、童謡「おつかいありさん」でした。
♪  あんまり いそいで こっつんこ
 ありさんと ありさんと こっつんこ~
お互いに、上下真っ黒の喪服を着ています。悲しみアリとお悔やみ申すアリが頭をコッツンコしたようで、心の痛みを頭で分け合ったなと感じました。忘れられないお通夜です。
 
会場の入り口の脇に、御義父さまの思い出深い写真が数点飾ってありました。先立たれた奥様命のご主人だったそうで、「早く、妻のところに行きたい」と方丈様に話していたそうです。その奥様との挙式の晴れ姿が、白黒写真で撮られていました。70年近い時が巻き戻されました。

また、手のひらに載るほどの小さな一刀彫の仏様が、私たちを送迎してくれました。手先の器用なお義父様の迷いのない彫刻刀の跡にその心が宿っているようでした。心も彫っておられたのかなと思いました。


※画像は、クリエイター・echinusさんの「木を彫る」の1葉をかたじけなくしました。心を集中させて過ごす確かな時間が、切りくずにあらわれています。お礼を申し上げます。