No.793 まず一口、コップの水を飲んで…。

テレビドラマや映画、さらにはバラエティーやリポート番組などで活躍し、劇場やお茶の間でも親しまれたマルチタレントの渡辺徹さんが、昨年11月下旬に病没しました。明るいキャラクターの持ち主で、万年青年のような爽やかな笑顔が印象の俳優さんでしたが、61歳という若さで逝かれました。ご冥福をお祈りします。
 
渡辺徹さんというと、私には忘れ難い一つのお話があります。
その昔、「オシャレ30・30」(日本テレビ製作)というトーク番組がありました。調べてみたら、1987年(昭和62年)1月~1994年(平成6年)6月まで続いていました。フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんとジャズシンガーの阿川泰子さんが司会者です。
 
番組タイトルの「30・30」は、「30歳代のための30分のトーク番組」という意味でもあったらしく、当時、2人の司会者とも30代だったといいます。私が見たのは、1990年12月の放送で、その時にゲスト出場したのが渡辺徹さん(30歳?)でした。彼は、お母さんからこんな話を聞かされたそうです。
 
「男は、外に出れば七人の敵がいて、くたくたになって帰って来る。コップに水がいっぱいの状態でしょ。だから、疲れた父さんを先ずねぎらってコップの水を一口飲んであげる。その後、私の話を聞いてもらうんだよ。そうでなかったらコップの水は溢れるばかりで父さんは疲れ、私への不満は募るばかりでしょう。男の人の心のコップの水を飲んであげることが大切だよ。」
 
「流し」を業とする夫に泣かされたお母さんだったそうですが、夫婦が円満に立ちゆく一つの道を、その人生哲学から説いて下さったお母さんでした。その話は、徹さんだけでなく、私も含め、番組を見ていた世の男たちの心をとらえたことだろうと思いました。
 
21世紀に入り、男女共同参画の社会が築かれ、女性が社会の多方面で活躍しています。男女を問わず、その仕事や人間関係や組織の中での労苦は少なくあるまいと想像します。徹さんのお母さんの教えが、より切実に響いてきます。夫婦、親子のお互いが、心のコップの水を飲んであげられるようでありたいものですね。
 
「労いの言葉に緩む寒の水」
「俳句の集い!望生の俳句」(2013年1月3日)さんのブログの中に見つけた句です。なんだか、ジグソーパズルのピースがぴたっとはまったような気分になりました。

※画像は、クリエイター・『OOAK Arts』オーナーKanaのnoteさんの、タイトル「”OOAK Arts(オーオーエーケー・アーツ)”というアートショップの概要と、お取り扱い商品について」をかたじけなくしました。お礼申します。