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No.1052 涙の味は?

「はがき」の魅力を引き出すコンクールがあります。その志がいいんです。

はがきには、SNSやメールとは異なるパワーがある。
そう信じて、はがきを使ったコンクールを開催しています。
宛て先は奈良県御所市にある、郵便名柄館。

大正3年に築かれ、役目を終えて朽ちていた郵便局舎が、
平成27年に開局当時の姿に復元されました。

その再生を記念して始まったのが、このコンクールです。

「はがきの名文コンクール」のHPより

その第1回「はがきの名文コンクール」の入賞作数編が2015年(平成27年)10月19日の西日本新聞コラム「春秋」に抄出の形で紹介されていました。

8歳の女の子は「かみさまへ」と書き出した。「まいごになったら、かえり道を教えてください。わたしだけじゃなく犬のクーちゃんやまいごのみんな、おじいちゃんおばあちゃんにも道を教えてください。▼夫婦で物忘れが進んだ、と61歳の女性。「神さん、これはお別れの準備やろか?その内相手の事も息するのも忘れそうや」「でも神さん、お願いです。あと少し夫婦漫才やらしてください。私らええコンビですねん」▼一言の願いを書いてポストへ。「はがきの名文コンクール」から先日発表された受賞作を紹介している。3万9千通の応募があった▼生後間もなくポリオで足が不自由な71歳の男性は、母親におぶわれた幼時の思い出の後に続けた。「願い事はただ一つ、今度は僕が母をおんぶして歩きたい」▼大賞は90歳の男性。先立った妻へ宛てた。「前略。どうだい、ソッチ。もう馴れたかい。コッチは万事に不馴れで閉口してるよ」「君のつくる味噌汁(おみおつけ)が飲みてえよ。こん畜生め、後略だ」▼最後に、余命を宣告された51歳女性の願い事。「私に何かあったとき、一生懸命看護してくれた娘が病院のそばを通るたび一人涙流しませんように。そばで誰かが悲しい背中をさすってくれますように」「部活に励んでいる息子の弁当がコンビニの弁当になっても、どうか一緒に楽しく食べてくれる仲間がそばに居てくれますように」

西日本新聞コラム「春秋」

私は、昨2022年の第8回「はがきの名文コンクール」の入賞作品の中から、次の「佳作」3作品を紹介しようと思います。

佳作  女性・75歳・愛知県
重度の脳梗塞で入院中の夫と久々の面会
その日付き添って下さった しのぶさんという看護師さんは自分の名札を見せて
「ご主人が私の名前を(きょうと)って読んだので 私ひらめいてじゃあ神戸は?と聞いたら(な、ぎ、さ)ってゆっくり嬉しそうに言ったんですよ」
とんち問答みたいなこの話は夫の十八番「昔の名前で出ています」と、わかった
ああ 茶目っ気は健在だった きっと心で歌ってる
私も台所で歌うからね
明日も平穏な心持であってほしい
 
佳作 女性 ・58歳・石川県
犬・猫の殺処分のドキュメンタリー番組を見て大泣きした息子は、二年間誕生日プレゼントを辛抱し、保健所から一匹の子犬を救出した。
生後三ヶ月で捨てられた雑種犬に息子がつけた名前はリュウ。
息子は、大雨の日も、雪が降り積もる日も、受験当日もリュウの散歩を欠かさず、来春、獣医学部を卒業する。
耳も遠くなり、一日の大半を寝て過ごすようになった老犬リュウももうすぐ十五歳。
あと数年したら太一が診てくれるよ。
それまで元気でいてね。
 
佳作 男性 ・69歳・兵庫県
友よ、お前はアホか。
賀状終いなんて誰に言っているんだ。
お互い退職し、年に一回会うこともなくなったが、お前の存在確認ができないではないか。
俺の存在確認はどうするんだ。
「自惚れるな、比重が違うんだ」と言われれば仕方ないが、取り敢えず俺は出し続けるよ。
高校受験の時、切磋琢磨した記憶が今も鮮明に残っている。
だから、俺の存在は通知するよ

2022年の第8回「はがきの名文コンクール」佳作より

佳作には他に小中学生の作品もあります。一度そのページをご訪問下さい。
それにしても、涙って、こんなに塩っぱかったのですね。


※画像は、クリエイター・素晴木あい@ AI絵師さんの、「佐原の街で撮った郵便ポスト」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。