No.208 老い迎え 心に川の 柳かな!

 21世紀到来の2001年(平成13年)から第1回が始まった「シルバー川柳」(全国有料老人ホーム協会)は、「老人の日」に向け公募しているものですが、昨年9月に第20回目を迎えました。第1回目の全国からの応募総数は3,375作品でしたが、20年後の応募総数は1万作品をこえました。「時代を映す老人たちのココロの文化」として定着しています。

 事務局の発表によれば、
 応募総数 10,663作品
 応募者年齢 平均年齢は68,6歳 最年長106歳(女性) 最年少11歳(女子)
 応募者男女比 男性:61,4%  女性:38,1%  性別不明:0,5%
ということでした。一言申さずにはおられない男性諸氏に「川柳」の精神がヒットするようです。

 入選作は20句(入賞率0,002%)という超難関です。そんな中から、酸味や苦みや辛味や甘味を感じる10句を味わってみました。

○「脳トレを毎日してます探し物」(新潟県、80歳、女性、主婦)
 (「万歩計半分以上探し物」第11回にも通じる探し物ネタ。プラス思考がグッド)

○「妻が言うひとまず預かる給付金」(大阪府、70歳、男性、無職)
 (これが妻のやり方かぁ!芸人おかずクラブのゆいPさんの言葉が脳裏を駆け巡る)

○「ゴミ出しの俺とカラスは顔馴染み」(千葉県、73歳、男性)
 (大好きですね、この発想!うちの団地内も、お父さんばっかりがゴミ出し要員?)

○「売ってない極楽行きのパスポート」(東京都、67歳、男性、無職)
 (行けるものなら行きたい浄土ですが「地獄の沙汰も金次第」とは真逆のようです)

○「円満の秘訣ソーシャルディスタンス」(北海道、77歳、男性、無職)
 (五・七・五が見事にはまった皮肉な秀句。笑いの中に真実が見え隠れする面白さ)

○「妻の留守たっぷり醤油寿司刺身」(東京都、70歳、女性、主婦)
 (「居ないとき妻の枕を尻に敷く」第19回を想起する自虐ネタ。なぜか涙が零れ)

○「要請をされる前から日々休み」(福井県、55歳、男性、会社員)
 (新型コロナ時代を先取りした日々休み営業。時代がようやく亭主に追いついた)

○「じいちゃんの敵は段差とパスワード」(福岡県、53歳、男性、会社員)
 (「そうだ、そうだ!」×10と言いたい名句。足と記憶にパンチの難敵です!)

○「幼な児に戻りて可愛い認知症」(東京都、106歳、女性)
 (好きでなった訳じゃないが、戻れるものなら戻ってみたい。「認恥」でもなく)

○「武勇伝俺の話は無観客」(島根県、52歳、女性、自営業)
 (聞き飽きた常連、広げ過ぎた大風呂敷。今は、何事も無観客がよろしいようで)

 ギニアのオスマン・サンコンさんは外交官を経て、TVタレントとしても活躍をしましたが、大分の講演会でこんな話をされたことがあります。
 「ギニアのことわざに『老人が一人亡くなると地域の図書館が一つなくなるのと同じ』というのがあります。それほど高齢者は知恵をたくさん持っており、図書館に匹敵するほどの力を持っているのです。だから、大切にされます。」

 少子高齢化が加速する日本にあって、老人の存在は迷惑がられたり、被害の対象となったりしています。更に、増え続ける認知症も、様々な今日的問題を派生しています。そんな中、106歳の老婦人が詠んだ川柳「幼な児に戻りて可愛い認知症」に文句なく拍手を送りたくなってしまうのです。心の豊かな長寿の国でありたいものです。