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No.625 燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや?

何が好きですか?
「ハイ、妻の笑顔です」
食べられない物は何ですか?
「ハイ、海老と牡蠣のフライです」
では、嫌いな物は何ですか?
「ハイ、ひそひそ話です」。
 
国会討論会で審議が白熱している最中に、自らの名前を記した黒い拍子木の様な議員名札(「氏名標」?)を前にして惰眠を貪る愚かな政治家もいますが、いっそう不快感を催すのは、お互いが顔を近づけ、「いかにもよからぬ打合せ中」とでも言いたげな「ヒソヒソ話」をしていることです。他人に聞かれないようにするのが耳打ちですから、いい話の訳がありません。天下国家を論ずるはずの議場でヒソヒソ話に花を咲かせて給料を得ておられる、誰もがうらやむ御身分です。
 
しかし、この図は、政治家に限りません。こと、慎重を要する会議や壇上に祭り上げられた名士たちは、顔を寄せ合って耳打ちすることを一向に恥じません。その姿は、醜悪です。なぜなら、小声で話す事に「碌な話」はないからです。人に聞かれては困るからヒソヒソ話すのであって、
「今、我々は穏やかならぬ話、密やかな話の真っ最中!」
と堂々と目の前の人々に宣伝している様なものです。いや、戦国武将が主君に対してやったように、人前を意識してわざと目立ち、蜜月関係をアピールする行為かもしれません。さしたる内容もないのに…。
 
この点で、青空のもと、天下の往来で、隣近所のご婦人方が、
「寄らば寄れ、聞かば聞け」
とばかりに噂話を大きな声で語り合う「井戸端会議」の方が、より親近感を持てます。この方々に天下国家を論じさせたら、下手な二枚舌の方々よりよほど良い国が創れるかもしれないと思ったりします。高給など一切ご無用の、利権も忖度も全くない世界の人々ですから、しがらみがありません。政権与党が政治に携わった長い同じ時間を、じっと黙って井戸端会議党にそっくり委ねられてはいかが?
 
富士山に月見草は似合っても、天下国家を論じる鴻鵠の方々にヒソヒソ話はまったく似合いません。燕雀の老爺心ながら、一言申し上げます。

※トップ画像は、クリエイターななほし(杉山七瀬)さんの温かみあるおしゃべりの「ヘッダー画像アルバム」を利用させていただきました。