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No.535 いつもいつも思っていたお礼の言葉

こんな私のつたないコラムに感想を送って下さる方々がいます。いつも、お返事を差し上げたいと思いながら、パソコンの、どこをどうやったら返事できるのか、全く分からないので、そのままになってしまっています。いつもいつも、申し訳なく思っています。
 
昨日も、朝一番に、尊敬している方から頂いた「仁の音」コラムの感想に恐縮しながら、直接お礼できないもどかしさを感じつつ愛犬チョコと散歩をしていました。すると、ご近所さんの庭に真っ赤な衣をまとって色鮮やかに咲く花が目にとまりました。
 
「緋衣(ヒゴロモ)草」の和名をもつその花は「サルビア(salvia)」です。英語では「セージ」と呼ばれるそうですが、抗酸化作用や消化促進、解熱などの効果に気づいた古代ローマ人たちは薬草として用いたと聞きます。ラテン語で「健康・良い状態」を意味する「salvus」が「サルビア」の語源だそうで、家族の連想から「良い家族」「家族愛」という花言葉もあるそうですが、特に赤色のサルビアの花言葉は、「燃ゆる思い」、「エネルギー」だと知りました。
 
1969年(昭和44年)に発表された「サルビアの花」は、作詞・相沢靖子、作曲・早川義夫による懐かしいポピュラーソングです。当時、私は16歳でした。
♪いつもいつも 思ってた 
サルビアの花を
あなたの部屋の中に 
投げ入れたくて
そして君のベッドに
サルビアの紅い花 しきつめて
僕は君を死ぬまで 抱きしめていようと
 
なのになのに どうして
ほかの人のところへ
僕の愛の方が すてきなのに
泣きながら 君のあとを追いかけて
花ふぶき舞う道を
教会の鐘の音は なんてうそっぱちなのさ
 
とびらを開けて 出てきた君は
偽りの花嫁
ほほをこわばらせ 僕をチラッと見た
泣きながら 君の後を追いかけて
花ふぶき 舞う道を
ころげながら ころげながら
走りつづけたのさ
 
『土佐日記』の作者・紀貫之が、自らを女性に仮託して書いたのとは反対に、「サルビアの花」の作詞家の女性は、自らを男性に仮託したのでしょうか。あるいは、映像が思い浮かぶような物語をドラマティックに作り上げたのでしょうか。失恋の愛惜と憤懣と未練と自暴自棄を割り切れない感情でつづり、哀れで切なくて苦しい思いや、みじめったらしい気持ちを素直に言葉にして吐き出そうとした作品のように思われました。恋の燃ゆる思いが、悲恋の結末を迎え、抗いようもない事実と受け入れ難い思いが錯綜して、救いようのない言葉となって描かれるいびつな感情は、口ずさむ者の心を一層重くするのでした。
 
♪「いつもいつも 思ってた」の書き出しの言葉とメロディーが、コラムの返事をしたくても果たせない自分の心情と妙に呼応してしまったようでした。いただいた方々にお礼の言葉を差し上げられないお詫びを申し上げます。そして、これに懲りず、これからもよろしくお願いいたします。