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No.1177 骨太の役者に叱られながら

韓国ドラマ(再放送)に、「沼る」ほどではありませんが、ちとハマりました。それまで、韓国の役者さんと言ったら「大長今」(チャングム)のイ・ヨンエさんしか知りませんでした。
 
ところが、イ・スンジェという役者さんが、
「ホジュン 宮廷医官への道」(1999年~2000年、MBC)でのホジュンの師匠で医師のユ・ウィテ役
「商道(サンド)」(2001年~2002年、MBC)での松商の大房・朴周命(パク・チュミョン)役
「イ・サン」(2007年~2008年、MBC)での李氏第21代国王・英祖(ヨンジョ)役
「馬医」(2012年~2013年、MBC)での三医司の首医コ・ジュマン(チュマン)役
などを演じているのを見るうちに、すっかりやられてしまいました。
 
例えば「馬医」(第20話「心の帆」)での一場面。馬医だった主人公の才能をいち早く見抜き、医官への道を開いてくれた人物が三医司の首医コ・ジュマン(イ・スンジェ)です。彼の信念のある哲学的な言葉に、主人公の馬医ペク・クァンヒョン(チョ・スンウ)は心打たれます。いや、私の心も射ぬかれました。「心の帆」とは、けだし名言です。いわく、

主医「今まで良くやった!患者を思う一途な気持ちがあったからこそ出来た     
  事だ。海に浮かぶ船は皆一様に波風にさらされる。だが同じ波風を受け 
  ても、ある船は東へある船は西へ進む!何故だか分かるか?
   船が向かう先は風や波ではなく船にかかる帆で決まるからだ!人は多
  くの試練と苦難に見舞われる...運命とは実に過酷なものだ!
   だが忘れるな!どんな時も行き先を決めるのはそなたが上げる帆だ!
  何があろうと今の様に心の帆を高く上げよ!」
馬医「はい、首医様!今のお言葉は一生忘れません!」

「馬医」第20話(心の帆)より

イ・スンジェさんは、1934年10月のお生まれだそうですから、今年90歳にもなる韓国の俳優さんです。ソウル大学在学中から映画や演劇に興味を抱き活動したそうです。かの国の名優の一人ではないかと思いますが、なぜだか思想的で信念のある生き方をする役が少なくありません。私自身、彼のセリフに学び、教えられています。
 
そのイ・スンジェさんは、セリフのNGがないことでも有名だそうで、
「記憶力の鍛錬あるのみ」
「記憶力は俳優にとって生命線とも言えるもの。自分の記憶力に自信が持てなくなってきたら引退を考えるタイミングだ」
という厳しい姿勢を自らに課し貫いてきた人のようです。それは、役者人生の少しでも長くありたいという願いがさせるのでしょう。既に言葉ではなく、人生で語っています。
 
「最近の韓国ドラマは頭に残らない」
88歳の時にそんな提言をし「韓国時代劇」の再構築の助言をしている記事も読みました。
 
骨太の彼に敬意を表しつつも、肉厚の私は「チコちゃんにも、スンジェさんにも叱られ」ながら、細い骨で何とか生きています。


※画像は、クリエイター・ふうちゃんさんの、タイトル「ふうちゃん207」から「孤独もまた良き時間と思う瞬間をイメージしたイラスト」の1葉をかたじけなくしました。私も心の帆に風を受けながら70年を生きてきたのですね。お礼を申し上げます。