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No.1291 染みました!

第22回「現代学生百人一首」(2008年、東洋大学主催)には、全国から63,272首の作品の応募があったそうです。その100首の入選句の中から、私的に、独断と偏見で、数首紹介させていただきたいと思います。フグよりもシビレさせる若者たちの感性です。
 
「平然と使われ続けた汚染米汚れているのは米か心か」
 北海道 高校3年 男子
 
「染みついた鉄のにおいがする髪をとかして思うもはや職人」
 青森県 工業高校3年 女子 
 
「生も死も書けば一文字十五夜のすすきの中にぽつんとひとり」
 岩手県 高校1年 男子
 
「朝起きてカーテン開けて目があった思わず会釈鳥なのだけど」
 埼玉県 中学3年 女子
 
「一歩ずつ大人になっていくたびに母の涙に気付いてしまう」
 埼玉県 高校1年 女子
 
「秋雨は魔法の絵の具雫ごと茂る青葉を紅く染めゆく」
 千葉県 高校3年 男子
 
「入試前夜食と共に『がんばってね』湯気でふやけた付箋紙一枚」
 東京都 高校3年 女子
 
「温もりを感じて開けた弁当の愛情と具は右によってる」
   神奈川県 高校1年 男子
 
「君の名の漢字を辞書で引いてみる心のしおりそうっとはさむ」
 長野県 高校2年 女子
 
「ありがとうたった五文字の日本語が百の気持ちを届けてくれる」
 大阪府 高校1年 男子
 
「笹の葉にたくさん揺れてる短冊は風が吹くたび願いをささやく」
 長崎県 中学3年 女子
 
「神様は誰も隅っこに行かせないように地球を丸くしたんだ」
 沖縄県 高校1年 男子
 
もうため息が出る秀作ぞろいです。三十一文字の世界に若者の揺れ動く心、鋭い洞察、喜怒哀楽が鏡のように映し出されます。「和歌」の懐の深さ、時代を超えて若者の声を掬い取る器の大きさ、人々の心を委ねられる豊かな五七五七七の土壌の魅力が満載です。
 
「生も死も書けば一文字十五夜のすすきの中にぽつんとひとり」
岩手県の高校1年男子の歌に「ズキューン!」とやられてしまった私です。15歳(16歳?)でこんな世界が詠めるのですね。柔道の練習試合で骨折して泣いた15歳のキャプテンの私が、ひどく幼く思えました。
 
「神様は誰も隅っこに行かせないように地球を丸くしたんだ」
沖縄県の高校1年男子は、若き哲学者ですね。その誕生に敬意を表します。
 
みなさんは、どの句がお好きですか?


※画像は、クリエイター・Tatsuo Tanakaさんの七夕の1葉です。織姫・彦星に願いを届けようとするのは、お隣の国も同じです。お礼を申し上げます。