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No.1299 失くしたものは?

「成人式」というと、我々戦後の世代には1月15日が思い浮かびます。1948年(昭和23)に制定された「成人の日」ですが、半世紀後の2000年(平成12年)から1月第2月曜日の祝日となりました。社会の構成員として公に認知を受ける儀礼に過ぎないとはいえ、その年齢を迎えられたことを家族や地域や社会や国がお祝いし、前途を祈ることは、望ましい行事だと思います。
 
とはいえ、東北・北陸の1月は雪の影響が多く、夏休み中に帰省する若者も少なくないことから、8月開催が多いそうです。一方で、寒冷地ではないところでも、男女が華美に着飾る成人式よりもお盆で帰省する若者たちと共に祝いたいとして8月の成人式を開催する市町村もあるようです。親の思い、成人する男女の思いも様々でしょうが、晴れ着うんぬんよりも、一度しかないその心を大事にして欲しいと思ったりします。

ある年の11月に、某市の社会教育課から1通の文書が届けられたことがあります。
「市の成人の日の記念行事として『恩師と成人者とのふれあいコーナー』を設けています。小・中・高校を卒業した新成人への祝福をしていただきたくご案内いたします。」
という依頼状でした。

その2年前に某市立中学出身の生徒を大学に進学させたばかりでした。その子のクラス担任が私だったことを調べて、わざわざ自宅宛てに依頼状を送って下さったようです。中卒者の進路や、転勤された先生方、それらにいちいち連絡するのでしょうが、大変な作業であろうと、にわかには信じがたい行いに頭が下がります。

成人式を少しでも思い出多いものにしたいとする社会教育課の皆さんの志の強さ深さが伝わってきます。それは、若者たちへの期待感の大きさでもあったのでしょう。

さらに、「お祝いメッセージ集」なるものを発行するので書き送って欲しいという別紙まで添えられていました。そのユニークな発想と、甚大なる労力に本当に感激しました。集いにも喜んで出席させて頂くことにしました。

それにしても、社会教育課のここに至るまでには、課内でも賛否両論があったに違いありません。行政として、どこまでタッチすべきか課題も残したことでしょう。しかし、敢えて踏み出した勇気と、それを後悔するほどの大変さを一身に受けて下さった事務局の方々の真心に打たれたことは、いうまでもありません。

今なら、そんな事は不可能でしょう。個人情報の壁が、それを許さないからです。それによって守られるものも多いのでしょうが、失くしたものを私は知ることになりました。

※画像は、クリエイター・スピカさんの、成人式の日の1葉です。お礼申し上げます。
「きれいな青空が映り込んだ革靴。 パリッとしたスーツ姿が初々しい。 少し照れくさそうな顔の成人式の朝。 さあ出発しよう。」
のスピカさんの言葉が素敵です。清々しさの漂う革靴の主に幸あれ!