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No.1294 名セリフ

たまたま欠席していた生徒の机の上に、1冊の本が置かれてありました。
 
『勝言(しょうげん)~心を鍛え、心を強くする~』(笠倉出版社、2012年)という本です。「人生の励みになるアスリートたちの言葉」という見出しもついています。誘われるように手に取って、ペラペラッとめくってみました。
 
そのP160に、野村克也氏(プロ野球監督)のこんな言葉が載っていました。
「ボールを俺の顔だと思って打て!」
 
野村克也氏(1935年~2020年)と言えば、プロ野球史上屈指の名打者・名捕手・名監督と謳われた人物です。「名選手、必ずしも名監督ならず。」の常識を覆した立志伝中の人でもあるように思います。
 
野球選手として、1954年(昭和29年)から1980年(昭和55年)までの27年間にわたり、南海ホークス、ロッテオリオンズ、西武ライオンズでプレーしました。戦後初(史上2人目)の三冠王、本塁打王9回、打点王7回、最優秀選手5回と、数々の金字塔を打ち立てた名選手です。
 
選手引退後は、
1990年から1998年までヤクルトスワローズ
1999年から2001年まで阪神タイガース
2003年から2005年まで社会人野球・シダックス
2006年から2009年まで東北楽天ゴールデンイーグルス
等々で監督を務めました。
 
彼の名言のように思われている含蓄のある言葉、
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」
は、江戸末期の文人で長崎の平戸藩主であった松浦静山(1760年~1841年)の言葉だと言われています。先人の名言は、敬意を表して紹介すべきだと思いますが、そうしないところが野村流なのかもしれません。
 
そんな野村氏は、歯に衣着せぬ物言いで指導することで人後に落ちぬ人でしたから、胸に一物ありそうな選手たちもいたことでしょう。
「ボールを俺の顔だと思って打て!」
の一言は、
「ようし、今に見ていろよ!」
と選手たちを発奮させ、やる気に火をつけたのではないかと思います。

「江戸の敵を長崎で討つ」ような、「仕返し戦法のススメ」を監督自らが奨励するという奇想天外なアドバイスです。人心を読み、活かす術を知っているという意味でも、非凡さを思わせる指導者でした。
今年は、氏の5回忌に当たります。

 

※画像は、クリエイター・プロレス観戦記書き | せかぷろ | プロレス“ザ・モンスター”ハラダさんの、「私的プロ野球スーパースター烈伝⑭野村克也」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。