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No.495 人々の心が交差するXなドラマ

その昔、「プロジェクトX~挑戦者たち~」(2000年3月~2005年12月、全191作品放送)という番組がありました。オープニング曲は中島みゆき「地上の星」ですが、「無名の日本人リーダーと、それに従い支えた多くの人々による挑戦と努力、そして、その成果の紹介」がテーマでした。無名の人々にスポットライトを当て、日本を支える人々の成し遂げた仕事によって浮き彫りにしてゆく斬新な方法は、多くの視聴者の共感を呼んだように思います。
 
1988年(昭和63年)12月に大噴火した伊豆大島の三原山から溶岩が流出しました。この時の自然災害に敢然と立ち向かった島の指導者たちを扱ったのが、2000年5月30日に放送された「全島一万人 史上最大の脱出作戦」です。

元町の助役は、島民1万人のうち、たった一人でも負傷者・死者を出すまい、そのために金がかかっても、全島民を島の外へ退避させようと即決し断行します。公務員にありがちな決済の金縛りを省いた、その緊急事態回避対応の速さに驚きます。
 
島の電力会社の人々の献身、意外な展開に体を張って命がけのバス輸送を行った運転手たち、幾つものドラマや家族の真実、会社への忠誠、職業人の誇りが画面に映し出され、見ていて胸が熱くなりました。
 
プロフェッショナルが、スクラムを組んでそれぞれの仕事を全うすれば、偉大な結果が導き出されることを知りました。島に残った電力会社員の息子は、
「お父さんは、強い!」
と、一番尊敬する人として父親の名前を上げました。
 
この伊豆大島脱出作戦の総責任者だったのは、元町助役の某氏でしたが、一大輸送計画の敢行とそれらを成功に導いた秘密を明かしました。
「30数年間の公務員生活で、様々なことをやって来ましたが、その一つ一つの積み重ねの結果が、これだけ大きなプロジェクトを成功させたのだと思います。」
 
経験に裏付けられた堅実な判断と、そして、英断の数々。一歩間違え、一時をロスすれば大惨事を招きかねない緊迫した状況の中で、叩き上げてきた苦労人と、一命を彼に預けて獅子奮迅の働きをした電力会社、バス会社、船舶関係の多くの人々の滅私奉公に、天は味方したのかもしれないと思いました。
 
1万人の大輸送船団は「命を尊ぶ」人々の献身によって舵が切られたのでした。国であれ、島であれ、上に立つ者の使命は、まさにここにありと教えられる番組でした。