No.302 芽を吹いた川柳

 し・し・知らなかった…。
 キッチン・バス工業会では、創立40周年を迎えた2005年(平成17年)に、「11月2日」を「キッチン・バスの日」と制定したそうです。「いい(11)風(2)呂」からの命名かなと下衆の勘繰りをしていましたが、「Kitchen-Bath」の「K」がアルファベットの11番目、また「B」はアルファベット2番目ということで11月2日になったのだとか…。そりゃ、そうですよね。「いい風呂の日」は、11月26日を「イイ(11)フロ(26)」として、日本浴用剤工業会が登録した記念日ですものね。

 そのキッチン・バス工業会が「台所・お風呂の川柳」を募集して今年で17年目だそうです。今から10年ほど前の入賞作品になりますが、手元にあったいくつかの入選作品には、人生の機微や哀歓や可笑しみを感じさせられる句が見られますので、ご紹介します。

 第7回(平成23年度抄出)入賞作品から
  大賞 太陽が沸かした風呂を月のぞき
 最優秀 残り物ひと手間かけて星三つ
 特別賞 ハンバーグこねたら消えた絆創膏
 特別賞 慣れたのか慣らされたのか妻の味
 特別賞 「いい湯だな」日本にこんないい言葉
  入賞 帰省する子を待ちわびて磨く風呂
  入賞 子の成長洗う強さを背で感じ
  入賞 温かい順番、風呂、猫、妻、娘
  入賞 ケチは今エコに変わって堂々と

 第8回(平成24年度抄出)入賞作品から
  大賞 息子寝て「母」から「私」に戻る風呂
 準大賞 ばあちゃんのなぜだか旨い握り飯
 最優秀 スカイツリー見えるお風呂の灯消す
 特別賞 錆びないね湯船と流し妻の口
 特別賞 つらい時日本人には風呂がある
  入賞 ガスで炊く白いお米にひとめぼれ
  入賞 ガスの火は手をつないでる人のよう
  入賞 キャラ弁はどこから食べる迷い箸
  入賞 キッチンに立つ娘の背中に恋の文字

 「川柳」は、江戸時代中期の人・柄井川柳(からいせんりゅう)がその始めと言われていますが、句作はほとんど知られておらず、むしろ撰者名だけが有名です。1790年(寛政2年)に残した辞世の句は
 「木枯らしや跡で芽をふけ川柳(かはやなぎ)」
この時、川柳は72歳でした。

 彼の没後231年目の今年ですが、その句意にたがわず「川柳」は日本の韻文の伝統文化として多くの人々の心に句作を芽吹かせています。