エビストにおける対比構造の面白さ

https://twitter.com/makichankichi/status/1066559890913583104

このツイートからちょっと発展して、そういった絶望と希望、アンドロイドと人間の対比の構図が綺麗でありながらも複雑化してきたからこそ今のエビストが面白いという話をちょっと書き残しておきます。

初期エビストがふわふわしたトンチキアイドルものにしか見えなかった原因の一つが、まあ『アンドロイド』という人類の敵であるはずの存在の薄さにあったと個人的には思っていたりします。
「アンドロイドをぶっ倒して音楽の未来を守ろうぜ!」という話でありながら、アンドロイドを倒す理由が正直「パフォーマンスは完璧だけど何かと機械的でつまらん」みたいなとてもふわっとした感じだったんですよね。
そうでありながらも主人公たるユニットのメンバーには何故かそのアンドロイドが存在していて、その理由が未来の世界の音楽を過去に戻ってきて救うためって、お前それTⅡ(ターミネーター2)のパロディやりたいだけだろとしか思えない感じで、書いてて頭痛くなってきたんですけども……。
そして肝心の敵であるアンドロイドもまあ単に漠然とした物語における障害という概念的なものでしかなくて、故に物語の上でみんなで力を合わせて勝ったところで何の感慨もないという困った代物だったのです。
それでも当時はまあまあそんなもんかという納得もあった理由が、話が脇にちょっと逸れるんですが、オマージュ元であるTⅡの存在にあると思っていたりします。
TⅡ世界におけるターミネーターって全員感情がないんですよね、シュワちゃんことT-800にしても最後の方はそういうものが芽生えかけたりはしていますが明確にそれが宿ったというわけでもなく、あくまで機械と人間の間の絆という枠の話なんです。
何を大真面目に今更TⅡの解説をしているんだ自分はという感じですが、初期エビストもそういう感情のない機械にそれが芽生えてゆき、メンバーとの間に絆が生まれていくという話になるんだろうという共通認識的なものがあったと個人的には思うわけですよ。
機械と人間の話、未来における機械の反乱の話。
いやTⅡじゃねえか。まあそうなんですけども。

さて、そんなどうしようもなくターミネーターパロディの一発屋にしか見えなかったエビストの物語ですが、そこからどうも様子が変わってきたのが『空乃かなで編』からなんですよね。
果たして運営が最初からこんな物語展開にするつもりだったのかどうか自分には正直もう全然わからなくなってしまったんですけども、確かにその片鱗みたいなものはリーディングイベントのシナリオの時から存在していて、次に空乃かなで編でガッツリ固まり、そして今2_wEiの物語で発展している真っ最中という感じです。
それでは一体どんな風にその様子が変わったのかというと、どうもここにきてアンドロイドというのが単純な、感情の備わっていない機械というわけでもなくなってきたんですよね。
まずアンドロイドでありながらも普通の人間と何ら変わらぬような心を持った存在として空乃かなでが物語の中に現れました。
それに続いて、むしろ完璧な感情が備わっているせいで憎しみと絶望に狂ってしまった虎牙姉妹という存在が今は物語の中で描かれています。
この時点で単なる機械であったはずのアンドロイドと人間の境界がかなり曖昧になってきているんですよね。
感情のない、人間に造られた機械、プログラムというよりは、まるで人間より進化した新しい生命体であるかのような様相を呈してきた。
そして人間達の都合で勝手に造られ、また勝手に消されてしまうという境遇に怒りを抱いている……。
いや、アマゾンズじゃねえか!
……マジで割と言い訳のしようもなくアマゾンズっぽくはあるんですけども、そんな感じで「アンドロイドが単なる主人公達のユニットのアイドル的サクセスロードにおける障害でしかない」という初期のぼんくらポイントが崩壊し、それどころか単純明快な「機械 vs 人類」の物語ではなく、感情を持った生物同士の生存競争のように変化してきたことで、今、相当この物語が面白いという話が今回一番言いたかったことなんですよ。
そして、その争いは恐らく簡単に互いを理解し、尊重しあって融和出来るようなものでもなく、行き場のない憎しみと絶望、真意の見えない敵意と思惑、全容を掴めないまま翻弄され流される立場など、様々な要因が複雑に絡み合って最早解き方もわからないような状態になっており、果たして一体これがどうなるものかとハラハラしながら見守るしかない状況なんですよね今……。
先が読めない。
ただアンドロイドサイドを駆逐し尽くして終わりでは我々も納得出来るわけもなく、かといってここから本当に手を取り合うことなど出来るのかという程にあらゆる状況も捻れていて、もしこれが本当に綺麗にハッピーエンドへ収束出来るのだとしたら相当な名作になるのではないかという確信すら生まれつつあって、だからもうただただみんなストーリーを読み、その補完となるライブにも行き、与えられた楽曲もよく噛み締め、一体今後どうなってしまうのかを語り合おうじゃないですか。
みたいな、そういうところにこんなとりとめのない話の結論を強引に持っていきつつも、後はちょっとした余談を。

さて、そんな風に美しく絡まっていく物語の中でも個人的に一番気になっていて、かつ面白いと思っているポイントがメイという主人公ユニットのメンバーにいるアンドロイドの帰趨でして、最初期ならそれこそ「親指立てながら溶鉱炉に沈むエンドだな」とか思っても違和感のないキャラだったんですよ。
機械的で感情の希薄なキャラクターであり、そのオマージュ元っぽいT-800にしても感情の片鱗は芽生えても自分は機械であるという自覚を越えないまま自らを使い潰せるキャラなので、こちらもそんな風に片鱗以上の感情を得るような存在ではないと最初は思っていました。
しかし、こうしてストーリーが進むにつれてどうも彼女自身感情が全くないわけではなく、実はしっかりとしたそれも、そしてそれをきちんと理解出来る心も備わっていて、そうでありながらも更なる感情を渇望しており、徐々に人間へと近づいていく存在であることが判明してきていたりします。
しかし、そうして人間に近い感情を獲得していくにつれ、T-800が根本的には機械であるからこそ躊躇をしなかった「自分の同族を己の手で殺していくこと」についての葛藤が生まれないのかということや、そうして同族を狩り尽くした果てにアンドロイドの支配から未来を解放したとして、じゃあ最後に残った自分をも躊躇なく消せるのかということに思いを馳せると、何だかこう、今から背筋がゾクゾクするものがありますよね……。
虎牙姉妹の例を見ても、恐らく人間へと近づくにつれ『生きたい』という願いが強くなっていくだろうに、同時に自分は打ち倒されるべき存在である宿命から逃れられないメイちゃんが果たして最期に一体どのような選択をするのか……。

いや、アマゾンズじゃねえか!

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