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私は何者か、385


難しいこともないものを、そのもっともっと手前で、足踏みし、尻込みし、そのまま土に溶けてしまうであろう自分。

しっているふりではなく、識っていることの全てを出し尽くしてもわずかの日数があれば足りることだろう。

花の名前、国の数、山の高さ、鳥の声、風の香り、果実のかたち。名もなきもののちいさな拳。山並み。海溝。黒い砂。

それより、水の流れる音。旅をしてきた風の囁き。傘などいらぬと雨のリズム。

グラスの縁を響かせる。冷たい水のそのなかで、指先までもがわたくしの自由にならぬ。あたりまえ。

与えられた時間を、浪費してはならぬ。
猶予の階乗など、もってのほか。

溶けてゆく自分を、それでもどうすることもできまい。

覚悟の、支度か。

まだまだ、何も知らぬまま、行かねばなるまい。

すこしだけ、やわらかく、やさしいあなたの息吹に触れたこと。
それを、贅沢というのであろう。

知らぬものには、知らせまい。

このまま、行くことにしよう。


わたしは何者か、



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