見出し画像

私は何者か、462


ぴあの、好きやで。ほんまに好きや。なんでこんなに好きなんやろ。なんでかわからんのや。って、彼が、彼の腕の枕のうえで眠る私に言う。

もう、それだけで、たとえ、それが、寝言であってもである。わたしと彼の符牒はぴたり。

そんな、ような、気がした。

明け方、空には、だれが消し忘れたのか、夜のいたずら書きが残されていて。それは、白や灰色のしゃらしゃらした雲と、ぼんやりと半分に切られたレモンのような月である。

もう、これ以上のものはないと感じて、それでも、人は、いや、我は、欲張りなのか。写真に収めた。それが、どれほどの真実に近しいかは別として、わたしの、胸に美しく咲く。


この日から、ふたりは空気になったような気がする。


こころとはまこと微かな動きをも見過ごさないのである。


好きとは、ほんまに、気持ちよいものよ。


わたしは何者か。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?