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18Lの運搬を暗峠で試してみる。 電動アシストスポーツバイク「E-BIKE」cannondale Quick Neo L/O

  • もうすっかり自転車として定着した「電動アシスト自転車」ですが、この電動アシスト機構をスポーツサイクルに搭載した「e=BIKE 」の普及も加速してきています。 買い物に行く、通勤や移動手段として、などの電動アシストの利用効果は大きいことは理解していますが、「運動」が目的のスポーツサイクルにおいて、わざわざ大きく重たい原動機ユニットと大容量のバッテリーを積んで「運動量を控える」というE-BIKEの活用法には頭を悩ましていました。いいスピードに達するとアシストがされなくなるロードバイクや、担がなきゃならないかも知れない、押して行かなければならないかも知れないマウンテンバイクで「重く」なってしまうことはどうなのでしょうか。 条件が揃えばスポーツバイクの「E-Bike」はメリットがありそうですが、その条件が限られてしまうのではないでしょうか‥ 重い、ということはスポーツ用途には無理があるかも知れません、では重量を「問わない用途に活用するのはどうでしょうか。 そう考えるとE-Bikeは「実用的」な用途のほうが適しているのかもしれません。そう考えて、クロスバイクタイプのE-Bike,キャノンデール社の「Quick Neo(クイック ネオ)」に、丈夫なリアキャリアと安定の良いスタンドを装着してみました。速度に囚われないリラックスした姿勢のためにハンドルバーを交換、サドルもその乗車姿勢に合わせたものにします。当然ながらビンディングペダルを使いませんので、スニーカーや革靴との相性のよいゴム踏のペダルに変更します。せっかく大容量のバッテリーを積んでいるんですからヘッドライトも十分なものをソ着しまの舗装もしょう。そうして出来上がった「実用E-BIKE」ですが、その用途は街中で活躍の一般的な電動アシスト自転車よりも広範囲(長距離)の移動ができ、さらに急な勾配の地形を包括できること。もちろん荷物の運搬を伴って、での上です。

    さて、本当にそんなことができるのでしょうか。 大阪府と奈良県との府県境に「暗峠(くらがりとうげ)」という場所があります。急こう配で有名な峠越えで、ウソか本当か、最大勾配は31%ともいわれ、ロードのギア比ではまず無理、多段ギアのマウンテンバイクでも1度も足を着かずに登りきることは難しいとして知られています。しかもクルマ1台分の幅でしかないこの道は「国道」指定がされている極めて特徴的な道(日本道路100選)なのです。 よし、E-BIKEの実用テストとしてここを通行してみることにしましょう。ココをそのまま登って下ってだけでは他のスポーツサイクルで苦しいながらもできていることですので、さらに「18Lのポリタンを積載して」に挑戦してみましょう。中身は水ですので約18kgの荷役というわけです。 山越えの険しい区間は大阪側「枚岡(ひらおか)神社」から峠を越えて奈良県側の国道168号線と交わる「砂茶屋」までの区間。この間はかつての「奈良街道」 の様子をほぼそのまま保ったままの極狭区間でもあります。出発地まではクルマで運ぶ都合上、奈良県側をスタートして峠越え、大阪側の麓へへ降り立って再び登り返し、峠を経由してスタート地点の奈良県側麓へ戻る往復コースとします。実際には砂茶屋に駐車スペースがないため、少し進んだ「あそびの森」に車をデポすることにします。 少し雨模様です。しばらくはアスファルト舗装ですが、国道とは言え「すれ違い困難な1.5車幅」の道です。しかも生駒さんへの登りまでに手前に小さな峠「榁木峠(むろのきとうげ)」我あります。ここを自転車や徒歩で行く人が少ないためかあまり話題に挙げられませんが、実は暗峠側の大阪側の勾配に匹敵する急こう配なのです。その短さやアスファルト舗装であることで助けられていますが、なかなかの難関がスタート直後に待ち構えています。これからの長行程に備えてギアを低めにして難なくクリアします。アシストの出力具合を確認しながら、「そして走行モードを「SPORTS」で一貫することにしました。「ECO」では力不足を感じること、「TURBO」はともかく強めの出力で電池消費の実情を体感したいからです。 榁木峠から下って視界が開けると眼前にこれから目指す生駒山が現れます。普段六甲山を見慣れているため絶望高さには感じませんが、果たして不安定な18Lタンクを積んだまま往復の山越えを達成できるのかどうか・・・ 旧街道は単線の小さな踏切を渡り川をこえて登りに差し掛かります。昔からの集落の家前を通過する旧街道らしい道で淡々と硬度を挙げていきます。それほどキツイという勾配ではありませんが、通常のスポーツサイクルでは音を上げかねないボディブロー的な登りが続きます。当然ながら18Lを積んで、は挑んでみようとも思えないでしょう。E-BIKEは淡々と登っていきます。息が切れる、というほどの負担もありません。奈良県側最後の集落「西畑」の棚田をかすめて間もなく往路の暗峠へ到着しました。あそびの森から40分ほどのあっけない行程でした。ところが名物の「石畳」は700x35のタイヤ+18Lには厳しい試練で平坦~下り区間となるもゆっくり、そ~っと走らなければならない始末。最大の「試練」は意外な点でした。いきなり石畳の角で「ゴツン」と。荷台に重みが掛かっていると抜重もなかなかうまくいきません。幸いパンクはなかったようですが、慎重になります。改善としてタイヤ(ホイール)サイズの変更を予定していて部品をそろえる作業を進めています。実用車(運搬車)らしく26インチにしたいと考えています。 さて、コース中、最も急な枚岡神社までの「下り」のスタートです。ところがその先のコンクリート舗装にも「水切り」用の横溝が一定間隔で設置されています。幅約10cmほどですが通過の度にブレーキを緩めて荷重を逃がし、そっと通過・・・ これを長いそして急な下りの区間中ずっと続けなければならずとても辛く感じました。ブレーキが「油圧ディスク」だったことで相当救われましたがそれでもブレーキの能力が最大に発揮されました。とにかく、スピードが出せませんのでゆっくり、ゆっくりです。 そしてようやく近鉄線と交わる登りの基点へとたどり着きました。枚岡神社はすぐそこです。 ここからは復路、折り返しての登りになります。「あの辛かった下りを登るのか・・・」下って「辛い」ほどのものですから登りの辛さが想像できます。アシスト無しで登った際には、(フロントトリプルで)なんとかギリギリ押さずに登れた、のですがとてもじゃないですが18Lを運び上げる気は起きないものでした。急とはいえ住宅の建つ細い登りを登ってゆきます。奈良県側のそれとよく似た同じようななんとかア負担がシスト無しでも登れそうな坂ですがこれは難なくクリアしていきます。アシストの特性にも幾分慣れてきました。アシストされた上でどの程度の頑張れば、あるいはどうしたら力を抜けるか、は自転車の走行速度や入力トルクや駆動荷重によって算出されているようですがその特性を掴むことが身体を楽にしたり、バッテリーの消費を抑えるカギになるようです。なかなか巧く考えられた効率の様です。 最後の茶店を過ぎると建物はなくなり、ただひたすらな登りになります。容赦のない勾配とそしてそれが長々と続くわけです。歩く人を追い抜き、車に追い抜かれ、ながら淡々と登っていきますが、「止まって休まなければ」というほどになりませんので、やはり体への負担は圧倒的に少ないのでしょう。撮影のために止まってからの再スタートも可能です。スリップしそうになるほどの箇所もありますが、逆に荷重が効いて滑らずに済んだのかもしれません。見覚えのある「弘法の井戸」を通過して、間もなく再び暗峠へ到着。麓を出発して約30分でした。ふう。 峠からの奈良県側への下りは特筆してリポートする必要がない、快適な下りです。路面コンディションもよく、軽快に、そして一気に下ります。メーターを確認すると条件の良いところで30㎞/hを少し超える程度ですので、アシストはもちろん無効な速度域ですが、アシストがなくなったしまっても「かけ離れた」実用スピードでもないとも言えそうです。実用車としての速度領域と電動アシストの効果発揮領域に大きな隔たりがある使用用途でないことが確認できました。今回の実走とは関係ありませんが、ここ壱分駅踏切~榁木峠の手前までの区間は「旧道」としての保存、保全が「最悪」の区間です。途中に「大瀬・小瀬」という地名の小さな登りがあるのですが、住宅地に造成され、公園が作られ旧道がすっかり消えてしまっています。一体どういう市政をしているのでしょうか。旧街道の文化価値よりも目先の宅地開発の方を優先した悪しき例です。 旧道は榁木峠の実はかなりキツイ登りを登り切って、そして「あそびの森」へゴールして今回の実験は終了。 心配いしていました18Lの重量物を問題なく運搬して最酷な峠越えを完遂することができました。もしかすると50ccのスクーターでも無理かも、という条件でしたのでそれがアシスト付きとはいえ、自転車で可能なことが実験によって立証することができました。同時に、電動アシスト自転車の可能性や能力について、ただ「ラクになる」「運動がニガテな人にとって乗り物」というわけではなく、自転車(乗り)にとって「不可能」だった領域のことを「可能」にする、つまり乗り物として別の能力を持った「新しい乗り物(道具)」としての期待を裏切らないものであることも確信しました。例えば免許などの関係で車を利用しない人に速度を考えなければ移動や運搬の手段を与えることができることになります。例えば災害時など移動・運搬手段が大きく制限される中での多くの人が車の保有や免許に関係なく行動(移動や運搬)するための手段として最右翼だったりとも考えられます。 引き続き、電動アシスト自転車、E-BIKEの動向については注視、実験をして行こうと考えています。

  • (2020.7.14)

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