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どうせ2日で終わる日記【18日目】

もう前置きが無くたって怖くない!

財布を忘れた

財布を忘れた。

こんな単純なミスで、ここまで僕がいかにこの社会の枠組みを逸脱することが出来ないかを痛感させられるとは夢にも思っていなかった。

僕が財布を忘れたことに気が付いたのは大学の最寄り駅に到着してからだ。
本当は家の近所で生茶でも買ってから大学に向かおうか、などと家を出る前は考えていたのだが、なんだかんだで乗る予定だった電車の発車時刻ギリギリになってしまい、とうとう大学の最寄り駅に到着するまで飲み物を買うことが出来なかった。
Suicaの残高は丁度今日の往復分ギリギリの額しか入っていなかったので、仕方なく現金で買うことにした。ついでに今日のお昼ご飯も買えればいいな、などと思いつつバッグをまさぐりながら歩く。
……バッグをまさぐりながら歩く。
……バッグをもっとまさぐるために止まる。
……バッグをまさぐる。
……バッグを覗き込む。
……
…………

無かった。

財布が無かった。

その時ふと脳裏をかすかな記憶がよぎる。
そういえば昨日散歩をしたときに小さいポシェットに財布を入れて持ち歩いた気がする。
そうだ、その時にいつものバッグに入れてくるのを忘れていたのだ。
僕は深い後悔を覚えた。ここにタイムマシンがあれば今すぐ過去の僕を殴りに行くことはせず、家に置きっぱなしの財布を取りに行く。

この現代社会はお金のない人間に厳しい。

公園を覗き込んでもコロナ対策のために水飲み場は封鎖されているし何なら誰も使っていないから鳥の糞がそれはもうねっちょりとくっついている。
何か食べようにも街中に木の実などが落ちているはずもなく、もし落ちていたとしてもそれは拾得物なのでちゃんと交番に届けなければならない。木になっているのは大抵誰かの所有地に生えている誰かの所有物だ。

僕はそこから約9時間、飲まず食わずで過ごした。
クリスマス時期に我先にホールケーキを買わんと厚着の人類でごった返す人気ケーキ店の店員くらい飲まず食わずだった。人気ケーキ店の実情は知らないが多分そういう販売店は忙しい時期は飲まず食わずになるくらいは忙しくなるだろう(偏見)。

ともかく、ここ最近、特に大学に入ってからここまで飲まず食わずになった記憶は無く、初めての体験といっても差し支えないほどには新鮮な体験だった訳だが、まさかこれがここまで辛いものだとは思ってもいなかった。
特にこの冬の乾燥した時期に一切の水分を口に含まないのは中々に辛い。
別に研究室の水道を飲んでも良かったのだが、ここ最近水道から直飲みをした記憶が無いせいで、小学生の頃あんだけやっていた直飲みに少し抵抗が出てしまって飲めなかった。シティーボーイだもんで……。

やはりというべきか、食欲に関してはさほど問題ではなかった。
確かにお腹はすいたし食べようと考えていたものが食べられないのは残念ではあるが、お昼を抜くことくらい希によくあることなので気にするほどでもなかった。
しかし飲み物、お前は別だ。
お前がいないと俺は死んでしまう。俺を置いていかないでくれ、たのむ……。麦茶……、愛しているぞ……(ゴクッ

家に帰ってからやっと口にした麦茶はいつもの数億倍美味しかった。


読者の皆様方もくれぐれも外出の際は財布だけは忘れないように。
財布があればこの現代社会大抵の場合何とかなる。

それでは

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