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どうせ2日で終わる日記【31日目】

またしてもやってしまった。
日記の更新を昨日忘れてしまった。
これでは、最近たるんどるんじゃないかね?となんか口にひげをたっぷり蓄えた偉そうなおじさんに叱られてしまう。
イマジナリー偉いおじさんに叱られてしまう、それは怖い。
怖いので今日はちゃんと日記を忘れず書く。

ヒヤリハットデー

まあ今日に関して言えば忘れるどころか「今日書かずしていつ書くというのか」レベルの日だった。

ヒヤリハットという言葉は社会人なら一度は耳にしたことがあるのではないだろうか?
そう、かの有名なハインリヒの法則の最下層に位置する300個くらいあるやつだ。
一応ちゃんと説明しておくと、「一つの重大な事故の裏にはそれなりの軽微な事故があり、さらにその裏にはめちゃたくさんの異常(ヒヤリハット)がある」というのがハインリヒの法則だ。数字は各自で調べてくれ。

さて、いきなりなんでこんな話から入ったかというと、今日僕は厄日だったからだ。
何故だか知らないが今日だけでたくさんのヒヤリハットを経験したのだ。
という訳で今日経験したヒヤリハットを列挙する。もし何かの参考になってくれるのならば、これ以上嬉しいことは無い、というのは言い過ぎだ。ゴーゴーカレーのカレーを驕ってもらえる方が嬉しい。

・車の前で転ぶ

今日一番最初に経験して、かつ今日最大のヒヤリハット、いや事故だ、これは。

今日の朝、大学へ向かう途中で雨に降られた。
生憎傘を持っていなかった僕だが、リュックの中にはPCも入っていたため少し小走りで大学へ向かっていた。
しばらく走ると、眼前に信号のない横断歩道が見えてきた。
左手からゆっくりと軽トラが進んできているが、少し速度を緩めているところを見ると恐らく僕に気が付いて止まろうとしてくれているのだろう。
雨で急いでいるし、丁度道を譲ってくれたしで僕は速度を上げて走り出した。
ところで、すでに知っている人も多いだろうが横断歩道の白いところは滑りやすい。
僕の経験上でしかないし、実際に滑りやすいのかは知らないが少なくとも僕はあそこは滑りやすいと感じている。
普段ならば気を付けるのだが、生憎その時はPCのことで頭がいっぱいだった。
横断歩道に差し掛かった時――つまり丁度トラックの前に出た時、僕の足が突然暴走を始めた。
物理演算で足がとんでもない方向に跳ね返されて動く奴があるだろう。あれだ。あんな感じでそれはもう見事に大開脚をかました。
しかしそれも一瞬、次の瞬間僕はちゃんと重力に従い、尾てい骨から思いきり叩きつけられた。
最近太り気味だったせいで、その撃力は恐らく天文学的な数字をたたき出したに違いない。
勿論その衝撃は体側に伝わるので、尾てい骨だけでなく背骨や果ては内臓まで響く。

人生で初めて、転んだ衝撃で呼吸が出来なくなった。

よくアニメなどの戦闘描写で、壁にたたきつけられて「カハァ……!」となるシーンがあるが、あれは<真>だ。
本当に強い衝撃に身を包まれた時、呼吸というものが出来なくなる。
この瞬間は本当に怖くてパニックだった。如何せん尾てい骨を強打して呼吸が出来ない状況だ。「半身不随」とか「脊髄損傷」とか、嫌な単語が脳裏をよぎる。
一方、目の前でスっ転んだせいでトラックの運転手目線では突然車体の前から人が消えたように見える。たまったもんじゃない。驚かしてすいません。転んだだけなんです。

そういう訳で、僕は大勢の人が行きかう道のど真ん中でアクロバティックな技を決めてしまった。
呼吸は未だ安定せずむせ続けているが、人間あまりにもパニくるとパニックになる前にとっていた行動をしようとするもので、僕は立ち上がってそのまま歩き出した。
後ろでトラックが僕の後をついてくるように止まったり動いたりしている。違うんだ。別にあなたに轢かれた訳じゃない。それとも怒っているのか?違う、当たり屋とかでもない。
正直パニックで記憶が曖昧なのだが、今思い返せばトラックはそこまでスピードを落としていなかったようにも思える。
ということはもしかしたら僕は単純に突然道路に飛び出して突然目の前ですっ転んで突然起き上がりどこかに行ってしまったヤバい危険人物ということにはならないだろうか?ということはトラックの運転手は怒ってたんじゃなかろうか?
なんだか不安になってきた。もう段々そうなんじゃないかと思い始めてきた。記憶が曖昧すぎてなんも覚えていない。
どちらにせよトラックの運転手には本当に申し訳ないことをしたと思っている。ちゃんと謝ればよかったが、そこまで思考が回らなかった。というか何も考えられなかった。

少し歩いてるうちに呼吸は収まったが背中が痛い。というか何なら今も痛い。少し痛めた程度ならいいのだが、これがずっと続くようなら病院に行ってくる。
良い子の皆は雨が降ってもスニーカーで走らないようにしようね、お兄さんとの約束だぞ!

・私にハサミが舞い降りた

そんなこんなで若干の痛みを感じながら研究室へ向かった。
今日は普通に研究室で解剖作業があったため解剖道具を揃えて、作業を始めようとした。
しかし、その時事件は起こった。
僕は机の下に標本があったので、それを取り出そうと身をかがめた。
その次の瞬間、頭の上に軽い衝撃を感じ、直後カランと高い音が耳に飛び込んでくる。
僕はその音のした方向に「あ、ペンでも落ちたかな」なんて考えながら振り向いた。

ハサミがあった。

しかもただのハサミじゃない。
解剖用のハサミだ。

解剖をしたことある人間なら知っているだろうが、解剖用のハサミは先に丸い円が付いたハサミと先の異常に尖ったハサミの二種類がある。どちらも切れ味は抜群で、一般のご家庭にあるようなハサミとは比べ物にならない。
どちらも結構ヤバい代物なのだが、僕の頭の上に降ってきたのは後者、つまりかなりヤバい方だ。
咄嗟に僕は頭頂部を触る。
湿っている。
え!??!?!?!と思ったがこれは単純に雨で髪が濡れていただけだった。
奇跡的にケガは無かったものの、踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだ。

・歯ブラシに刺された

これは僕が夕飯を食べ終え歯磨きをしていた頃の話。
「今日はついていなかったなぁ」などと考えながらボーっと歯磨きをしていた。
すると、いつの間になったのか、歯ブラシの柄の方に歯磨き粉が垂れてしまっていた。
しかし僕はあまり気にも留めず「まあ後で一緒に洗うからいいか」などと考えながらボーっとしていた。

僕は歯磨きは強くやってしまう方だ。
優しく擦ればいい、というのは情報としては知っているが、長年の癖がなかなか抜けきらず、意識していないとつい強めに磨いてしまう。
今日もそんな具合で力を入れながら歯を磨いていた。
しかし、当たり前だが力をこめればその分物体は動く。静止摩擦力を越えたら物は動くのだ。
そしてさらに、普通なら動かない物体でも、間に何かを挟めば摩擦力が小さくなることがある。

ここまでくればもう分かるだろう。

そう、歯ブラシが飛んでいったのだ。

正確に言えば、僕に当たって跳ね返って飛んで行ったのだ。

力を込めているため、歯磨き粉によって手を滑らせた僕の歯ブラシは、それでも手に当たり続けていたせいで操縦が不可能になり、まず口の中で暴れ始める。
具体的に言うと口蓋に突き刺さる。
瞬間僕は勿論反射的に「おえ~」となるので、その勢いで歯ブラシは洗面台へと落ちてゆく。

こうして、洗面所に僕の小さな嗚咽音と歯ブラシの落ちた高い音のみが響いたかと思うと、次の瞬間には静寂が訪れていた。

どうしてこうなのか。

どうして今日はこうなのか。
僕が何か悪いことをしたというのか。

そもそも、今思えばこれらは全部ヒヤリハットとかではない。

事故だ。

単純に、事故だ。


僕はむせび泣いた。




今日はもう寝る。
それでは。

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