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サンタ村、知られざるトナカイの現状

―もいも〜い。フィンランド支局の記者トナカイです。本日は、フィンランドはラップランドにありますサンタクロース村にて、元従業員のトナ・カイさんにお話を伺いたいと思います。

トナ・カイ:よろしくお願いします。

─ではさっそく、トナ・カイさん。サンタクロース村でのお仕事ですが、どういったことをされているのでしょうか。

トナ・カイ:そうですね、サンタクロースのもとで働くったって色々あって、みんなが思い描くようにクリスマスにそりを引く仕事ばかりじゃないんですよ。

─そのようですね。今回、トナ・カイさんは、そのような、いわゆる花形のそり引き以外のお仕事に注目してほしいということですが。

トナ・カイ:クリスマス当日、そりを引くのは上位たった1%のトッナガンと呼ばれるトナカイ集団であって、その他の大勢のトナカイのおかげで、サンタクロース村はまわっているんですよ。
例えば、年中、サンタクロース村は観光に力を入れてるんだけど、そのときお客さんのソリ体験や餌やり体験で働くトナカイだっているんです。

餌やり体験ではたらくトナカイ

─そうですよね、クリスマスは1年に1日だけですもんね。

トナ・カイ:どうしてもクリスマス以外のところに注目されないけれど、彼らの努力あってこそのサンタクロース・ビジネスなんですよ。彼らの中にはトッナガンに選ばれるため、飛行の練習に日々励むものだっています。日中、仕事したあとに、夜な夜な飛行場で汗を流してるんだ。命懸けの世界なんだ。

─そうなんですね。

トナ・カイ:もちろん、体にも負担がかかる。怪我をした彼らのゆく果てを知っていますか?トナ肉ですよ。

─トナニク?

トナ・カイ:トナカイ肉です。ラップランドでの人気なお土産ですよ。缶詰にしてあったり、トナカイバーガーがあったり。その材料にされるんです。まさに命懸けなんです。

地元で人気のトナカイバーガーとトナカイソーセージ


─私たち一般のトナカイには想像もできない厳しい世界なんですね。

トナ・カイ:ええ。先月話題になっていたサンタクロース村でのトナカイのストライキがあるでしょう?

─そうなんです、今回はそのこともぜひお伺いしたいと思ってまして。

トナ・カイ:ええ、あれもね、やっぱり僕は避けられなかったことだったと思うんですよ。サンタクロース村が一時閉業することになったから、批判も多く集まったけど、トナカイ達だって命を張っているんだもの。元従業員という立場で言わせてもらうけれど、命懸けのトナカイ達に対してあの待遇は十分ではなかったと思いますね。

そり引き体験ではたらくトナカイ


─サンタクロースのもとで働くトナカイの労働環境について考えさせられますね。

トナ・カイ:すみませんね、ちょっとシリアスな感じになっちゃって。ほかの記事の雰囲気と違っちゃいますよね?でも、深刻な問題だからね。

─いえいえ、大変貴重なお話を聞くことができました。あの〜、取材を終わらせてもらう前にちょっと気になってたことがあって、、、

トナ・カイ:はい、なんでしょう。

─ただの噂ですが、上位1%のトッナガンに選ばれたトナカイの鼻は赤く光ると言われてますが、、、トナ・カイさん、うっすーら光ってません?

トナ・カイ:さて、どうでしょう。

─え、えとー、今回サンタクロース村の元従業員さんであるということで取材させていただく流れになったので、トナ・カイさんの経歴などを細かいところまで調べられてなかったのですが。すみません、勉強不足で。

トナ・カイ:とんでもない、ただ一頭の元従業員の話として聞いてもらえれば結構です。

─あのー、失礼ですが、お部屋の電気消してみてもよろしいでしょうか。

トナ・カイ:え、ええ、構いませんが。


真っ暗な部屋に赤く光る球体がひとつ


─あ、あ、あのー!!

トナ・カイ:へへっ

─え、え、えとー、、、

トナ・カイ:まぁまた今度お酒でも呑みましょうよ。

─は、はい!い、以上、サンタクロース村の元トッナガン、あ、言って大丈夫です?あ、え、いや、え、え〜、以上、フィンランドからでした〜!!


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