10月26日のこと⑤(そして、これからのこと)

ライブの翌朝は信じられないほど体が重く、疲れを実感させられた。打ち上げのあと、ライブに来てくれた友達と飲み直すか悩んだのだが、行かなくてよかったと思った。それどころじゃなかったのだと思い知った。

ライブの出来がよくなかったことで気落ちしてはいたものの、そんな暇はないとばかりに翌日も予定が入っていた。CHACCA CHALLENGEという名のオーディションの参加者限定で音楽セミナーが開催されると聞いて、参加してみることになっていたのだ。(CHACCA CHALLENGEのページはこちら。ツイッターかGoogleかFacebookのアカウントがあれば簡単にアカウントを作れて、1日1回投票できるのでぜひ譫言に投票してください。中間発表は13位でした。10位以内で最終審査に進出できます)

明利さんは都合が悪くなったので、僕と吉住で参加してきた。内容の詳述は避けるが、主にインディーズミュージシャンがどうすればバンドとして成功し、きちんとお金を稼げるようになるのかといった話を聞かせていただいた。はっきり言って、無料で聞けるようなクオリティではなかった。1万円払ってでも参加する価値があったように思う。

うつむきかけていた僕だったが、このセミナーで目が開く感覚を味わった。いまの時代、バンドとしてやれることは際限なくある。いいライブをするのも大事なことだが、決してそれだけがすべてではない。自分たちの強みを理解したうえで、その強みを生かして活動するには何をすればいいか、戦略をしっかり立てることが重要だと理解したのだ。極端な話、ボカロPがそうであるように、ライブしなくても曲さえよければ成功する道筋はあるだろう。

下を向いている場合じゃない、と思い知らされた。ライブの翌日がセミナーで本当によかったと思う。これからできることを考えて、ワクワクした。懇親会では講師や参加アーティストなど、お近づきになれた方もいた。個人的にアポをとって後日お会いした方もいる。引っ込み思案な自分にしてみれば、この行動力は成長の証だと思えた。

僕は、顔を上げた。バンドの姿勢も変わった。より建設的な意見を出し合い、やれることをしっかり丁寧にやっていこうという意思が明確になった。

10月26日のライブの直前に動きもあった。MVを見てくれたというバンド、胡蝶ノ梦から、ライブ出演のオファーをいただいたのだ。10月26日のライブを終えたら、今度は音楽性の近いバンドと共演させてもらえるよう、またライブ探しをしなければいけないと考えていたので、これは思ってもみないことでうれしかった。(11/24胡蝶ノ梦自主企画『セイブツロン』@町田The Play House、17時半開場18時開演、チケット前売り2000円。ご来場お待ちしております)

また、10月26日の反省を踏まえ、場慣れの必要性を痛感した僕は、弾き語りでもライブに出演しようと決意、ライブハウスを探し始めた。するとそこに、誉田哲也さんから弾き語りライブ出演のお誘いをいただいた。これは本当に驚いた。渡りに船というやつだ。もちろん、迷わず引き受けた。(12月6日 目黒ライヴステーション「Song for you × Pre SAKKA SONIC アンプラグド」18時開場18:45開演、チケット前売り2400円。ご来場お待ちしております)

明らかに、音楽活動が軌道に乗り始めていた。僕が運命論者であることはすでに記したが、神様みたいな存在が、僕が音楽活動をやることを歓迎しているように感じられた。それは励みになった。

というわけで、僕はいま、ちゃんと前を向いている。自分たちにやれることをしっかり考え、実践していこうという気持ちになっている。もっとがんばって音楽活動を絶対成功させようじゃないか、それで僕や明利さんにとっては小説家としてもプラスになるところまで持っていってやろうじゃないか、と本気で思っている。

さて、長かった連載もこれで終わりだ。初ライブの意気消沈から、10月26日に向けての活動、本番を経て、いまの心境までを勢いに任せて書き綴った。書かないほうがいいようなことや、明かさないほうがいい裏事情まで書いてしまった気もするが、自分と向き合い、しっかり振り返り、また感謝を伝えることができたので、書いてよかったと思う。

音楽活動は楽しい。やっぱりやめられない。もちろん小説を書くことも大事だ。僕は小説を書くのが好きだ。両立するには、そのぶんだけ必死にならなければいけないだろう。中途半端が一番かっこ悪い。これからも、全力で取り組んでいく。それが関わってくれたたくさんの方に対する、一番の恩返しだと思うから。

最後になるが、『珈琲店タレーランの事件簿6 コーヒーカップいっぱいの愛』発売直前に、10月26日の出演者の皆さんから、オリジナルのメッセージつきのコーヒーをいただいた。これは予想だにしないサプライズで、本当にうれしかった。僕にとって『音楽と小説のエンターテイメント!』は特別なイベントになったし、共演者の皆さんとも特別な関係になったと思っていたけれど、ほかの皆さんにとってもそうであったように感じられたのがうれしかった。心からの感謝の気持ちを述べることで、この連載をしめくくりたいと思う。

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(終わり)

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