12/6のこと

さる12月6日金曜日、目黒LIVE STATIONにて「song for you × Pre SAKKA SONIC アンプラグド」が開催された。

きたる2020年1月18日に開催される「SAKKA SONIC 2020」の前哨戦的な位置づけの、弾き語りライブである。ちょうど弾き語りでの出演を目指していたときに誉田哲也さんからお誘いいただき、出演を即決したイベントで、ライブハウスでセットリストを組んで出るという意味では人生初の弾き語りライブであった。

とにかく楽しみだった。弾き語りなのでたくさんあるストック曲の中からどれでも自由に演奏できるとあって、どの曲をやるか迷いに迷い、セットリストがギリギリまで決まらなかった。結局、新曲ができたことでいくらか引き締まり、長めのMCを想定して5曲を用意し、本番に臨んだ。

ひとりでステージに立つとなると緊張しそうなものだが、さすがにこのところのライブの連続で少しは慣れたのか、当日まで緊張はほとんど感じていなかった。16時半ごろに会場入りすると、誉田さんがリハの真っ最中。さまざまな機材を活用している姿を見て、あれもうちょっといろいろ仕込むべきだったか、と若干焦る。続く佐藤青南さんがギター1本で立っていたので安心した。

リハは何の問題もなかった。バンドに比べてやることが少なく、自分の声がよく聞こえるのでイヤモニも使わず、外音も確認したところきちんと聞こえるようだったので、僕はほとんど注文をつけなかった。曲をやるたびに「大丈夫です」「いい感じです」としか言わない僕を見て、共演者やスタッフさんたちも苦笑していた。

誉田さんがインタビューを1本受けるとかでいったん席を外されたので、開演までの時間は主に佳納子さんや青南さんと雑談して過ごした。佳納子さん、まだ音楽活動を始めて1年ちょっとらしいが、ライブを月に15本もこなし、路上でも歌って、音楽だけで食いつないでいるのだという。そんな生活もあるのか、と驚いた。小説がお好きだそうで、今日のイベントを楽しみにしていたと話す彼女に、持参した『白バイガール』を渡す青南さんは抜け目がなかった。僕も自著を持っていけばよかったよ。

青南さんは風邪か何かで喉の調子が悪いと言う。雑談をしている最中も声がかすれていった。そんな中、佳納子さんがコンビニの袋から取り出したのはファミチキ。何でも、歌う前に食べると喉が油で潤ってよく声が出るのだという。青南さんはそれに感化され、ファミチキを買って食べていた。僕もいつか試してみたい。

18時15分に開演すると、続々人が集まってきた。45分になり開演。トップバッターは大塚慶太郎さん。23歳とまだお若いが、青南さんも絶賛されていたとおり、とんでもなく歌がうまかった。バラード主体のセットリストだったが、これだけうまければ聞かせる曲をやるのは当然だろう、と感じる。

楽屋では佳納子さんが靴を脱ぎ、緊張するとしきりに言う。月に15本やっていても、路上で歌っていても緊張はするものらしい。その佳納子さんの出番、パワフルな歌声を響かせながら、アルペジオでもおもしろいフレーズを弾いていた。自分の出番が控えていたので2曲めまでしか聴けなかったが、その後の反応を見るに会場ではずいぶん好評だったようだ。

そしていよいよ僕の出番。下りた幕の裏側に立つと、さすがに緊張してきた。幕が上がり1曲目、『記憶の森』の前奏から始める。大学生のときに、当時大好きだったTravisの『Writing to reach you』を意識して作った曲だ。タイトルは元々『(I found myself in the)Forest』というものだったが、このたび歌詞を一部書き換えたところそぐわなくなったため、『記憶の森』に改題した。

テンポが大事な曲だったが、走らずに演奏することができたと思う。練習時にメロディが定まらなかった箇所も歌いきることができた。続くMCでは、予定になかったことだが、前のお二人の話を絡めてお客さんに笑っていただき、温かい空気を感じた。

2曲目、『ライト』。弾き語り活動を始めようと決意した10月のライブ以降に書いた新曲で、この日が完全初披露であった。延々繰り返されるギターのフレーズは、弾き語りのためというのを意識した。歌詞は初め抽象的なものを書きかけていたものの、作家なのだから言葉を前面に押し出したほうがいいだろうと考え直してメッセージ性の強いものにした。音楽的には、Syrup16gの影響があからさまに出ていると思う。

それからMCをはさみ(反応が大きかったのには驚いた)、3曲目『万華鏡』。今回持ってきた中で唯一の、アップテンポの楽曲だ。歌詞もメロディも少し古めのロックンロール色をあえて押し出した曲で、ちょっとギターが難しく、というより忙しく、何度か小さなミスをしたが、勢いで弾ききった。歌はもともと気持ちよく歌えるキーだったので心配はなかった。ちなみにDVDで見返すと、ブレイクのあとが前のめりになってしまっていたので、このあたりは今後の課題だ。

4曲目『きみの匂い』。先の配信でも披露した曲で、MCでも話したとおりアダルトなムードの漂う曲だ。言ってしまえば、僕の音楽的センスを知ってもらうためにセットリストに入れた。こういう曲も作れるんだぞ、というのを示したかった。この曲がもっともギターが難しく、何ヶ所か怪しい部分があったが、何とか致命的なミスは避けられたように思う。この曲もハイトーンが続くので、もう少し余裕を持って歌いたいが、途中でバテたりすることもなかったのでまあ合格ラインだろう。

そしてラスト、『アリス』。豊田市でのトークイベントや配信などで演奏してきたラブソングだ。本当は最後にアップテンポな曲を持っていこうか迷ったのだが、『アリス』はツイッターでも6日にやると宣言してしまっていたため、この曲で締めることにした。DVDで見返しても音響がよく、静かな部分でもギターやボーカルがしっかり聞こえていたようだ。最後まで、気持ちよく歌えた。

あっという間の30分間だった。演奏、歌、MCに至るまで、総じて未熟ではあったがそれでも、初めてにしては上出来だと思えた。何より楽しかった。バンドとは異なる魅力を示せたと思う。何せ、バンドで演奏している曲は結局、1曲もやらなかったのだから。ギター単体でもおもしろいフレーズを弾いているように聞こえる曲、しかもいまのバンドではやっていない静かめの曲を中心に選んだので、意識がバンドのときとはまったく違っていて本当に楽しめた。

弾き語りライブ、最高。機材少ないから楽だし、歌いやすいし、ひとりだからいつでも出られるし、新曲含め自分のやりたい曲ができるし。これからも、積極的に弾き語りライブに出演していきたいと心から思えた。もちろん、バンドはバンドでやりつつ、ね。でも、弾き語り用の曲を音源化することも考えていきたいな、と思う。

さてそのあともライブは続く。佐藤青南さん、おそらく普段よりもかなり声が出にくいように感じておられたのだろうけれど、それでも力強い歌声を響かせていた。やっぱり上手だ。練習不足だったりする部分はあったそうだし、本番後も落ち込んでおられた様子だったけれど、ぜひまた弾き語りライブもやってほしいなと思う。本気出して、新曲なんかも書いてくれないかな。

いよいよトリ、このイベントの発起人でもある誉田哲也さん。とにかくアイデアがすごかった。ルーパーを使ってギターを打楽器として用いつつ重ねて弾いたり、右手をストロークではなく弦を指で叩くようにして演奏したりと、見ていて本当に飽きず、楽しかった。上手なのは言うまでもないが、ギターのフレーズもかなり凝っていて、引き出しの多さに圧倒された。実はサカソニのときはアンコールのスタンバイなどもあり、あまり演奏をちゃんと聴けなかったのだが、誉田さんは生粋のギターキッズなんだと改めて思い知らされた。おひとりだけレベルが違ったな、という印象。恐れ入った。

終演後は物販しつつ、お客さんといろいろお話しした。本や色紙を持ってきてくださった方もいらして、サインをした。CDも売れた。誉田さんのバンドのベーシストで、幻冬舎の編集者でもあられる茅原さんが、僕のライブを褒めてくださったのはうれしかった。曲のコードワークもよかったし、演奏も一番落ち着いて見えたとのこと。自信になった。

その後、打ち上げへ。多くても10人くらいでひっそりやるのかと思っていたら、会場に20人以上待ち受けていたのでびっくりした。大変にぎやかな打ち上げになった。僕もお隣の誉田さんや青南さん、茅原さんたちといろいろな話をして楽しんだ。サカソニとアンプラグドの展望についても多く語られた。皆さん前向きで、サカソニとアンプラグド、さらには地方ツアーなども見据え、定期的にやっていきたいという話をし合った。

というわけで、本当に楽しい1日でした。満員に近い入りで、イベントとしては成功だったと言っていいでしょう。ご来場いただいた皆様、共演者の皆様、スタッフの皆様、ありがとうございました。

弾き語りライブ、少しは手応えも感じたので、継続してやっていきたいです。出演のお誘い、お待ちしてます。

またやるときにはぜひ、聴きに来てくださいね。新曲用意してお待ちしてます。

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