ポートフォリオ TypeBをどう書くか?

皆さんこんにちは、こんばんは、おはようございます。年末ですね。さて、今回は総合診療専門に取得に必要なポートフォリオについての内容です。2020年度にエントリーした総合診療専攻医からTypeBへの一本化が決まりました。機構からは評価基準やサンプルの提示がないようなので、書いてみた感想やポイントをお伝えできたらと思います。

なんでポートフォリオ書かなきゃいけないの!?

そもそも論ですけど、ポートフォリオってなんじゃ?って研修開始する前に思いませんでした(笑)?総合診療研修を進めるうちに色んな知識がつくと、「あっ、なんか医学部で習ってた医学となんか違う。」って感覚になってくると思います。そこが総合診療の面白いところなんですがね!!

成人学習理論にKolbの経験学習サイクルというものがあります。(下の図参照)

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ポートフォリオを書くことにより、Kolbの経験学習サイクルが(少なくとも学びまで)回ります。 総合診療的な知識をより深くするためにポートフォリオを使っているのです。最低限の知識習得なので、優秀なポートフォリオを書くことを目的にするのではなく、ポートフォリオを書くことによって総合診療の知識を深めていくのが大切ですね。

TypeBを書き始める前に

J-GOALにかかれている文章を引用します。

最後に、「経験省察研修録(ポートフォリオ)の領域別要約」は、7つの資質・能力の修得のためのツールおよび記録であり、その出来栄えの良し悪しを評価するためのものではありません。よって、直接的に総括的評価(修了認定)に用いることはありませんが、最終的にこの書類はプログラム統括責任者のコメントを添えて日本専門医機構に提出して頂きます。専門医試験において、面接等の際の基礎資料として使用する可能性がありますので、予めご承知おき下さい

とのこと。最初にも書いたように、出来栄えを評価するものではなく、面接の資料となるかもくらいです。

また、機構のHPでは、

経験省察研修録の様式一本化について、2019年度版研修手帳に含まれていた経験省察研修録には、目標が細かく設定されているもの(タイプA)と、大枠(総合診療の7つの資質・能力)を示して自律的な学修を促すもの(タイプB)が存在し、混乱を招く結果となっておりました。これを受けて本機構の総合診療医検討委員会で審議致しました結果、タイプAはタイプBに包含することが可能であることから、2020年度研修開始の専攻医から経験省察研修録を自由度の高いタイプBに一本化することになりました。

このような経緯があるようで、2019年度のエントリーの自分はTypeAをTypeBに落とし込む形で記載しました。TypeBは”自由度が高い”と記載がありますが、大枠としての自由度が高いだけで、項目が設定されていることや各項目を500字以内で記載しなくてはならないことなどを踏まえると、文章的な自由度はTypeAのほうが高かったです…

まぁ文句を言っても仕方がないので頑張って書きましたが(笑)。

ポートフォリオとルーブリックの対応について

TypeBの大項目は以下、7項目です。新・家庭医療専門医に必要なPFとの対応表(プログラム指導医が作成したものを一部改変)を載せておきます。あくまで参考ですのあしからず。

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また、研修手帳に記載してある一般目標をまとめました。

1.包括的統合アプローチ

一般目標:1)疾患のごく初期の診断を確定するのが困難である未分化で多様な訴えの初期診療に対応し、また複数の問題を抱える患者に対しても、安全で費用対効果に優れ、不確実性や自己の限界を踏まえた医療・ケアを提供する能力を身につける。
一般目標:2)日常診療を通じて、恒常的に健康増進や予防医療、リハビリテーションを提供することができる。
一般目標:3)医師・患者関係の継続性、地域の医療機関としての地域住民や他の医療機関との継続性、診療情報の継続性などを踏まえた医療・ケアを提供する能力を身につける。

2.一般的な健康問題に対する診療能力

一般目標:1)総合診療の現場で遭遇する一般的な症候及び疾患への評価及び治療に必要な身体診察及び検査、治療法を適切に実施できる。
一般目標:2)総合診療の現場で遭遇する一般的な症候に対し、適切な鑑別診断と初期対応を行って、問題解決に結びつけることができる。
一般目標:3)総合診療の現場で遭遇する一一般的な疾患・病態について、適切なマネジメントができる。
一般目標:4)地域住民が最初に受診する場において、見逃しがなく安全で効率的な医療・ケアを提供するために、適切な臨床推論の能力を身につける。

3.患者中心の医療・ケア

一般目標:1)患者中心の医療の方法を修得する。
一般目標:2)家族志向型の医療・ケアを提供するための体系化された方法を修得する。
一般目標:3)患者との円滑な対話と医師・患者の信頼関係の構築を土台として、患者中心の医療面接を行い、複雑な人間関係や環境の問題に対応するためのコミュニケーション技法とその応用方法を修得する。

4.連携重視のマネジメント

一般目標:1)患者や家族、地域にケアを提供する際に多職種チーム全体で臨むために、様々な職種の人と良好な人間関係を構築し、リーダーシップを発揮しつつコーディネートする能力を身につける。
一般目標:2)切れ目のない医療および介護サービスを提供するために、医療機関内のみならず他の医療機関、介護サービス事業者等との連携が円滑にできる能力を身 につける。
一般目標:3)所属する医療機関の良好な運営に寄与するために、組織全体に対するマネジメント能力を身につける。

5.地域包括ケアを含む地域志向アプローチ

一般目標:1)わが国の医療制度や地域の医療文化と保健・医療・介護・福祉の現状を把握した上で、地域の保健・医療・介護・福祉事業に対して、積極的に参画する能力を身につける。
一般目標:2)地域の現状から見出される優先度の高い健康関連問題を把握し、その解決に対して各種会議への参加や住民組織との協働、あるいは地域ニーズに応じた自らの診療の継続や変容を通じて貢献できる。

6.公益に資する職業規範

一般目標:1)医師としての倫理性、総合診療の専門性を意識して日々の診療に反映するために、必要な知識・態度を身につける。
一般目標:2)常に標準以上の診療能力を維持し、さらに向上させるために、ワークライフバランスを保ちつつも、生涯にわたり自己研鑽を積む習慣を身につける。
一般目標:3)総合診療の発展に貢献するために、教育者あるいは研究者として啓発活動や学術活動を継続する習慣を身につける。

7.多彩な診療の場に対する能力

一般目標:1)外来医療で、幅広い疾患や傷害に対して適切なマネジメントを行うために、必要な知識・技術・態度を身につける。
一般目標:2)救急医療で、緊急性を要する疾患や傷害に対する初期診療に関して適切なマネジメントを行うために必要な知識・技能・態度を身につける。
一般目標:3)病棟医療で、入院頻度の高い疾患や傷害に対応し、適切にマネジメントを行うために必要な知識・技能・態度を身につける。
一般目標:4)在宅医療で、頻度の高い健康問題に対応し、適切にマネジメントを行うために必要な知識・技能・態度を身につける。

では、自分の経験も踏まえてポイントを記載していこうと思います。

実際のポイント

TypeBは下記のように5つのブロックで形成されています。

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1番のポイントは①から書かないことです!!

自由度が高いが売りなので、正直①の学んだポイントは最後に後付して書くのが良いかなと思います。本来は①を意識して事例を見つけ、経験し、記載するのが理想的ですが、そんなの無理です(笑)!!

そのため②→④→③→①→⑥(or②→③→④→①→⑥)と書くのが良いかなぁと思いました。では、この6つを以下にして書くか詳細にみていきます。

②その能力が必要だと考える理由や、考えるきっかけとなった出来事

ここで事例の概要を記載します。ポイントは
・大項目の7つの資質になんとなぁく合致した内容をメインに記載する。
・ここで記載する内容は伏線です。あまり事例の詳細を記載せず、モヤモヤをしっかり記載する。

の2点です。特に2つ目の点を意識すると後が楽になるかなぁと思います。モヤモヤをしっかり書いて伏線にして、後の記載でそれを解決していく構図が良いと思います!!

④その能力を活用して解決を試みた課題とその結果。

ここでのポイントは
・伏線の回収を行う
・どんな能力を使ったかを明確にする
・詳細に書きすぎると字数が足りなくなるので注意する。

個人的にここはサラッと書けるかなぁと思います。ただ、教育や地域健康増進などの分野ではここがかなり膨らみますので、それらのPFは本当に言いたいことだけを絞って書くのが良いでしょう。

先にも書いたように、TypeBは出来栄えの良し悪しを評価するものではないと明示されてますので、自分の中で本質が理解できていることが大事です。

③その能力を修得するために行った学修

参考文献も含めここに記載します。勉強したことであれば何でもOKじゃないかな?

自分は「〇〇については参考図書1)を用いて学習した。」みたいな感じで書いて、その後に1)・・・と文献や参考図書を記載しました。

セミナーやオンラインで学修したことを書いてもOKだと考えてますので、④で記載した能力の勉強方法を記載しましょう。

①実践を通じて身に付けたい(身に付けた)能力

身に付けた”(「身に付けたい」ではない)能力を書きましょう(笑) 。その方が書きやすいです。

大体の目安は各大項目の一般目標を参考にすると良いと思います。一般目標を全て含有するのは無理なので、一般目標からメインテーマを1つ決め(多少改変した方が書きやすいです)、後は④で使った能力を言葉巧みに記載しましょう。メインテーマさえ決まっていれば、分野を問わずフレームワークや方法論を記載して良いと思います。ただ、大項目が霞まないようにだけ気をつけてください。(自由度が高いが故に許さる方法じゃないかと思いますが。。。)

⑥さらなる改善計画

ここは、時間がたってから今までの内容を見直して書いてもOKだと思います。正直、総合診療の知識が多ければ多いほど書きやすいので、皆さん研修が終わるまでに沢山の知識を身に着けましょう!!

ポイントは
・できなかった点を反省するか?
・できていた点をもっと良くするにはどうするか?

と考えると良いと思います。そして書き方としては①深める②広げるが書きやすいと思います。

①深めるでは、使用した方法論をもっと突き詰めていくということです。患者中心の医療のIllnessやHealthはよく捉えられたけど、コンテクストの理解がもう一歩進めば・・・みたいな感じです。その方法論のなかでうまくいかなかったことや使わなかったことなどを記載して改善計画をたてると良いです。
②広げるでは、LEARNの方法論で行動変容を促したが、一部うまくいかなかった。そのため、動機づけ面接法を使用していきたい。とか、患者中心の医療でコンテクストの理解が今ひとつだった。本事例では家族の協力も必要であり、家族志向ケアの面に視点を向けるとよかった。とか、みたいな感じで(ふわっとしすぎているので本当に書くときにはもっと詳細に書いてくださいね。)書くと良いと思います。

最後に、誤字脱字や論理性を確認して提出すると良いでしょう。まぁ、とりあえず出すのが大事かなぁ(笑)

結局書かなきゃ専門医は取れません(笑)

TypeBについて色々思うところはありますが、とりあえず書かなきゃ専門医がもらえません。頑張って書きましょう。

もう一度言いますが、大事なのは書くことではなく知識や技術を習得し深めることにあります。正直7個書くだけじゃ、知識的にはまだまだ足りないと思いますので、新・家庭医療専門医のフォーマットに沿って書いて、落とし込むのがBetterじゃないでしょうか?(あくまで家庭医療専門医を取りたいと考えてる自分のバイアスがかかっていますが…)

患者中心の医療・ケアだけでも患者中心の医療、家族志向ケア、BPSモデルなど身に付けたい能力たくさんあるけど、記載するのは1つでいいです。それじゃ、総合診療医的にはちょっと不十分かなぁ。なので、7つPFを書いて専門医とっても勉強は続けなきゃですね。

少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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