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#21 パジャマを着た妄想


部屋は4人部屋の廊下側の一角に決まっていた。


名前を確認し荷物を下ろし看護師さんから説明を受ける。

バーコードのついたリストバンドを岡安の左手首に
ぐるりと巻きつけながら

看「入院中は色々な場面でこのリストバンドのバーコードでの認証が必要になりますのでくれぐれも取ったりしないようにお願いします」

食事、消灯時間、通話できるエリア、洗濯物の階などを教えてもらうが、もうその辺は勉強済だった。

看「では後ほどお昼ご飯を参ります」

岡「はい、わかりました……ふぅ〜」


と一息。
カーテンをシャーッとして早速着替える。

実はゆうちゃんのお母様からパジャマを頂いていたのだ。
パジャマなんて何年ぶりだろ。
いつも寝間着は上下スウェットとかだったので尚更嬉しい。


心配をかけてこんな心遣いまでして頂き本当にありがたい。

だけど・・・

本当はこんな事言っちゃいけないのは分かっている…

せっかく用意してくださったのに…

ごめんなさい…


入院感が半端ないパジャマ

だ…


入院感ってなんだよって話なんですが…

そんなのも存在しないんだけど、
入院専門ショップ?で購入したの?
と言わざるを得ないデザインだったのだ。


〜入院専門ショップ〜

「いらっしゃいませ、どうぞご覧くださいませぇ」

「あのーすいません。今度、娘婿が入院するんで、パジャマを贈ろうかなと思いまして?」

「入院は初めてですか?」

「はい、初めてで、今年41歳です。」

「なるほど、初めてなんですね。
ではあまり小慣れた感じってよりも、
オーソドックスな入院デザインがいいと思いますよ」

母「入院デザイン…」

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「こちらは明るい色で飽きのこないシンプルなデザインなっております。
長期入院の方とかには好評いただいてますね。
胸にさりげなく【NEW IN】のロゴを施しており、
お見舞いに来た方々に一つお持ち帰りエピソードとして」

「お持ち帰りエピソード?」

「他の友達などにお話しするときに事欠かないように
あいつお見舞いの時、胸に【NEW IN】て書いてあるパジャマ着てて笑ったよ、みたいな」

「えっ…そういう事まで考えたデザイン…
ちなみにそんな長期じゃないんですよね」

「なるほど、ではこちらはいかがですか?」

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「さっきのに比べると地味じゃないですか?」

店「今のトレンドは『シック』ですよ、病院だけにね」

母「・・・」

「こちらは長袖なんですが、袖の部分もゆったりしていて腕が捲りしやすくて、点滴や注射、血圧を測るなんかもしやすいんですよ」

「なるほど」

「ボタンも大きめで開けやすくなってます。心音を聞いたり、心電図をとったりする時なんかは重宝しますよ」

「この柄ももしかして意味あるんですか?」

店「もちろん。このストライプがポイントで、入院中色々な管とか線がつけられると思うんですけど、その管や線とこのストライプが折り重なって一つのデザインになるんですよ。デザイナーの遊び心がたっぷり詰まったパジャマですね」

「そんなことまで計算されてるんですね」

入院専門ショップなので…そこに力入れております」

「じゃあ、これにします」

てな感じで購入してくれたのかな、と妄想を膨らませた。

一気に楽しくなってきた。
退院したら入院専門ショップ行ってみたいものだ。

退院出来たなら買いたい物がないかぁ…

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                     つづく

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