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#15 凪いだ心で検査結果を聞く


検査の期間は毎朝、近所の神社にお参りに行ってから病院に向かっていた。
この日はいつもより少し長く手を合わせた。


何卒御守り下さい


よし、準備は整った。検査結果を聞きに出発。


バスの中でゆうちゃんが聞く

ゆ「結果怖い?」

岡安は答える

岡「いや、なんか大丈夫だよ。なんだろうね、
あんなに怖かったのに今はすごく落ち着いてる。」


凪いだ心は病院に向かうバスの揺れでは波立たなかった。



病院到着。

ついてすぐに先生のところへ

岡「失礼します」

先「お座り下さい、検査お疲れ様でした、どうでした、大変でした?」

岡「何から何まで初めてだったんですけど
色々スムーズに出来ましたね」

先「それは良かったです、胃カメラの先生から
すごい吐いたと聞いたので少し心配してました。」

岡「え?そうなんですか?全く知らなかったです」

先「そうでしたか、鎮静剤使ってやられてんですね」

岡「はい・・・」


なんか恥ずかしい。ていうか胃カメラマン先生!
主治医の先生にチクたなっと思った。

(チクったというより患者の情報共有か…)


先「それで結果なんですけど…」


頭の中からつま先の方までギュンと血液が巡る。


先「やはり大方の予想通りガンでした。
病名は下咽頭癌です。
リンパにもやはり少し転移が確認されました。」


岡「はい」



聞き手の二人は驚くほど冷静に話をするりと飲み込んでいた。

自分でも驚いた。

もう一回ショックを受けたり落ち込んだりするのかもと思っていたが微塵もない。多分ゆうちゃんも一緒だと思う。

逆に『ガンかもしれない』ではなくなり
『ガンです』になったので
治療に専念するスイッチが
カチッと
入ったようにな気がした。

先「それと胃カメラでは食道、胃には転移は見られませんでした」

岡「はい」

静かに頷きながら耳立てて先生の話を追う。

先「大きさも早期発見というよりは少し進んだ大きさでして、ステージは3かなと言う診断結果ですね。」

岡「はい」

検査結果の色んな写真を見せながら説明が始まる。
MRIやCTの写真、喉元に白くぼやけた塊が映り込んでいて不気味で憎たらしかった。

先生はPCモニターに映る塊を測りながら大きさや形を詳しく伝えてくれた。

そして、気になるPET検査の写真も見せてもらった。

先「それでPETがこちらで…ここがガンのある場所、
位置になりますね」

先生が言っていた通りだった。
岡安の首には赤白い二つの丸い玉のような物が煌々と写し出されていた。

不思議で幻妖な色合いの画像に少し見入ってしまった。


ゆ「すごーい、岡ちゃんの喉めっちゃ光ってる!」

ゆうちゃんは夜空に仲良く2つ並んだ
双子座のカストルとポルックスを見付けた時のようなリアクションをしていた。

岡「うるさいよ、光ってる〜じゃないよ!
後、あなたも岡ちゃんだからね」


すると先生が


先「私も前回から思ってました。奥さんも岡ちゃんですよねって」

ゆ「すいません、結婚前からそう呼んでたので」


あはははははは


なんだ?この緊張感0のガン宣告は…


その後、すぐに治療方針の話に切り替わった。
手術での切除は転移もあるので難しい事、
抗がん剤と放射線を組み合わせた化学療法になる事、
この方法だと声帯温存が出来る事、
首の皮膚や喉の痛み、副作用は吐き気、
倦怠感が伴いかなりキツい事、
入退院を繰り返しながらの治療だという事、
セカンドオピニオンの事も話した。


岡安は1日も早く治療に入りたい気持ちが強く、そして声帯を残す治療を選択したかった。

一致している。

この病院で治してもらうぞ!



岡「先生、よろしくお願いします」




力強いく言う。
『ガンと闘う』の幕が切って落とされた。

                     つづく



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