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勤怠管理システム:機能の活用に際した運用課題について

企業には労働時間状況を把握する義務があり、勤怠管理システムは、そこで活用できるツールの一つです。昨今の勤怠管理システムは、従来のオンプレ商品等に加えて、ネットワーク環境さえあれば、GPSによる位置情報サービス機能との併用による遠隔管理も可能なクラウド版のサービスなども複数あり、広く利用されるようになってきました。

同時に、各事業者毎に異なる経営方針や運用の仕組みに際して、その要望に応えられる勤怠管理システムも増えてきましたが、選択肢の増加の分、企業が個々に担うべき義務に伴う運用の是非が問われる時代を迎え始めているようにも感じます。

そこでこの度は、日々汎用性を高める各種勤怠管理システムを前に「企業の運用課題」について考えます。

システムの活用は一手段に過ぎない

各事業者毎に経営方針や運用は異なり、自社に合った、労使双方が納得できる労働時間の記録方法を、勤怠システムの選定から積極的に検討する事には価値があります。但し、前提として、企業にある従業員の労働時間状況把握の義務に対し、勤怠管理システムは、それを適正に管理するための一手段に過ぎません。

たとえば、勤怠管理システム上の打刻時間が実際の労働時間と完全に一致するとは限らない為、打刻時間が実態と異なるようなことがあれば、事業者は従業員にそれを修正してもらう必要があり、労働基準法や安全衛生法への配慮をもとにすれば「従業員の申告をもとに、企業側で正しい労働時間となるように補正できる(申請をもとに管理者が承認判断をする)」機能や環境が必要といえます。労働時間の管理と把握が企業の責務である一方で、万が一、給与の未払いや残業時間超過等の事案が発生した際に、(その原因が従業員の打刻忘れによるものだとしても)責任が問われるのは企業側であるため、運用手法の検討時には、就業環境や事業形態をもとにした配慮が必要となります。

柔軟性の重要性

勤怠管理システムの導入や活用に際しては、経営資源の節約や効率性の向上を前提要件に設定するとしても、実際の労働現場では予期せぬイレギュラーも発生し得るため、運用手法の検討には柔軟性が求められます。たとえば、過度に厳格な運用設計は、労務担当者によるシステム外の確認、システム設定の頻繁な見直しなど、追加的な労務管理工数を必要とする可能性があります。
上記をもとに、システムの設計と運用においては、従業員の声に耳を傾け、彼らのニーズに応えることができるような柔軟性(注意と配慮)を持たせることが重要です。これにより、従業員は自らの労働状況を正確に反映することができ、企業はより正確な労働時間の把握と管理を実現することができます。

経営者の責任と視点

経営者は、勤怠管理システムの導入と運用において、ただ単に法的要件を満たすだけではなく、従業員の満足度を高め、組織全体の生産性の向上を視野に考慮する必要があります。これには、従業員のニーズや特殊な状況に対して柔軟に対応できる環境の整備が含まれます。それは、資源である労務管理における注意と配慮(水の汲み上げ)をもとに、従業員の実際のニーズや状況に基づいたサポートと注意を提供(再配分)することを意味します。経営者には、労務管理におけるリソースの再配分を適切に行うことが、持続可能な企業運営に繋がるとの視点が求められます。

おわりに

この度は、勤怠管理システムの運用設計における柔軟性の価値と、従業員のニーズや特殊な状況に対する適切な対応の必要性について考えました。

社会におけるサービスの提供環境としては、この度の場合、勤怠管理システム開発事業者側における取り組みとして、顧客からどれだけ利益を得られるかというLTV(Life Time Value)と、顧客がどれだけの価値を体感できたかというCLTV(Customer Life Time Value)の追求に伴い、様々な要求にも応えられる機能の実装が進んでいます。これにより、サービスを利用する事業者側には、選択肢と自由が備えられるようになったともいえますが、企業側の視点としては、その自由の使い方にも社会的な責任を伴うため、システム機能の活用には注意が必要となります。

勤怠管理システムにおける運用規程の設定は、労働時間の正確な記録と管理を目指す上での課題です。この課題に対し、従業員の実態に合わせた柔軟なシステムの活用を検討することにより、企業と従業員双方の利益の最大化を考慮できます。経営者は、システムのメリットを享受しつつも、従業員のニーズに配慮した運用を心掛けることで、本当の意味での適切な労務管理を実現することができると考えられます。

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