藤岡康太とマジッククレストの話。

日本競馬の至宝が言っていた「負けたレースは見ない」と。負けた理由は全て分かっているから。逆に「勝ったレースは何度も見る」、何度見ても勝っているから(笑)。

一介の競馬ファンである俺は、外したレースは嫌々でも見る。次は当てたいから。当てたレースは何度も見る。何度見ても当たっているから。

そんな中に、何年も繰り返して見るレースがある。2013年7月28日、2回小倉2日目、12R、サラ系3歳500万下も、その一つだ。勝ち馬はマジッククレスト、鞍上は藤岡康太だ。

前走、新潟のダート千二で13着に惨敗したこの馬を、俺はどうしても諦め切れず、千㍍なら、ダートの千㍍なら弾けるかも知れないと馬券を買った。出足は遅く、早さ負けして後方から、4角でも中団の後ろがやっと。それでも、ずっと手応えは良さそうに見えた。

弾ける!そう確信した直線、前を行く全ての馬を豪快に差し切った。小倉の短い直線、あまりにも鮮やかだった。単勝9番人気、52.6倍、馬連132.1倍、◎○の決着は快哉を叫ぶ結果だった。だから、何度も見る。この馬券が買えたのだと。この予想ができたのだと。自分を慰め、励ます。藤岡康太、何度見ても、スーパーライドだ。

でも、俺とあいつはその先が噛み合わなかった。メルヴィンカズマは何がしたかったんだ?ゴージャスガールは死ぬか?辞めるか?の酷さだ。シルバーポジーはお前に騎手免許があることが信じられなかった。エイシンデネブは許さない。絶対に許さない。

俺は叩くよ。もう騎手を叩けるのはファンだけだから叩くよ。こっちは毎年JRAの全レースを1度は見てるんだ。全てのタイム分析をやってるんだ。全てのレースラップを研究してるんだ。何だそれ?何が一介の競馬ファンだ。中毒じゃねーか。だから、俺は叩くよ。別に、人となりとか知らねーし、興味もねーし、俺と騎手の間にあるのは、馬を挟んだ真剣勝負だけだ。それでいい。

でも、ケイアイパープルは良かった。歴史的和解だ。ナミュールは最高だった。超カッコ良かった。タウンゼントシェーン、これは俺が悪い。ユハンヌス、負けたらキレてた。よく最後まで諦めなかった。

ちょっとだけ噛み合ってきたな。でも、どうせまたやらかすんだろ。また叩くぞ。それでも、俺、知ってんだよ。マジッククレストを。あのスーパーライドを知ってんだよ。だから、期待してんだよ。

また下手くそって言いたかった、辞めろって言いたかった、戦って、戦って、ないすがっつ!って言いたかったよ。

俺、変な奴だからさ。立派な競馬ファンは、豪快な追い込み競馬を見た時、ディープインパクトと日本競馬の至宝の話をすると思うんだ。でも、俺はマジッククレストと藤岡康太の話をするよ。変な顔されるんだろなぁ。でも、いるよ。中にはシルクフォーチュンじゃねーのかよ!って突っ込んでくれる奴が。俺とそいつはお前のことずっと覚えてるよ。

久々に見たら、やっぱ凄かった。何かもう言えないらしいから、言っておくわ。

マジッククレスト、藤岡康太、完璧だった。これはスーパーライド、ないすがっつ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?