玉砕の美学 2

2024年1月2週

私は馬柱屋さんである。

競馬には無限のアプローチがあるが、基本的には、競走成績(馬柱屋さん)、パドック(馬体屋さん)、調教(調教屋さん)、血統(血統屋さん)の4つに分けられる。まぁ、ほとんどの人は4つ全部を齧りながら馬券を買う。

私は馬柱屋さんなので、無理に買う必要のないレースがある。馬柱が真っ白な新馬戦である。これは他の3つのカテゴリー、特に血統屋さんの稼ぎ場と言っていい。なので、無理に買わなくていい。

それでも、例外はある。それがシニスターミニスターだ。シニスターミニスター産駒は調教、特にウッドコースで動かない。ヘロヘロの調教時計が並び人気にもなりにくいが、レースになれば走るのである。こういうことを調教屋さんや血統屋さんは知っていて、上手く換金している。私はそのつまみ食いをするのである。

土曜京都3R、◎はキャピタルサックスだが、相手が決まらない。◎は硬い軸だと思うので、例のワイドを買いたいのだが、無理に相手を選んではいけない。私も学習するのだ。そこで、半分遊びで選んだのが、大外のストレングス、シニスターミニスター産駒の初出走だ。

こういう馬券を買っているから、負けるんだよなぁ…と思いつつ眺めていると、ストレングスはふわっと出て、後方からの競馬、大外から好位に行ってくれ!という私の希望は打ち砕かれた。

ところが、このストレングス、4角で手応えがいい。でも、なぁ、それで伸びないシーンを何万回と見てきたのである。それが本当に伸びてきたから、胸キュン。キャピタルサックスが狭い所を割って抜け出し、それにストレングスが迫った所がゴール。やはりシニスターミニスターだ。シニスターミニスターだけは信じられる。

その直後の京都4Rの新馬戦にもシニスターミニスター産駒を発見。メイショウカシワデとワンパットの2頭から、そんな旨い話はないよなと思いつつ、ワンパットの単勝を買うと、8番人気ながら3着に頑張った。4角では圏外に下がる雰囲気だったので、いやぁ~実に立派な走りだった。

いや、待てよ。確か前にいたのはメイショウカシワデではなかったか?嫌な予感は的中したが、メイショウカシワデは2着、どちらを選んでも単勝は外れていた。いや、待て、待て。2頭いたなら、馬連でもワイドでもいいのだ。単勝を買うから外れただけなのだ。

その2、3着のワイドが、3460円、驚くほどの配当ではないが、今の私には十分である。ほんの30分前に世話になったのに、何故私はシニスターミニスターを信じられなかったのか、真っ白な馬柱に書き込んだ払戻金額を眺めながら項垂れるのである。


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