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米菓の美味しさを支える『キングドライ』 坂本石灰工業所

 熊本県玉名市に本社・工場を構える同社(坂本達宣社長)の創業は江戸時代の後期にまで遡る。石灰は農業における土壌作りに欠かせない存在で、石灰岩から生石灰を製造する土中焼成炉は当時最大を誇っていた。戦後、有明海での海苔の養殖が本格化したが、その時に最も必要とされたのが、湿気に弱い加工海苔の品質を保持するための乾燥剤だった。

 そこで着目されたのが同社の石灰製造設備と技術。石灰の吸湿力が高いことは昔からよく知られていたし、安価で入手しやすいことも魅力だった。これを契機に社の業態は一変。鉱山経営から石灰乾燥剤のメーカーへと大変身を遂げることとなり、同社発展の大きな礎となったのである。

 いまでは石灰乾燥剤の市場シェアで30%近くを占める名実ともに業界トップのリーディングカンパニーとして圧倒的なブランド力を構築。米菓の袋を開けると、白色に包まれた同社の看板製品『キングドライ』が大抵の頻度で出てくるはずだ。シリカゲル乾燥剤でもシェア率は高い。(写真左)

 米菓や海苔の品質保持にとって、石灰乾燥剤はなくてはならない存在。裏を返せばメーカー側は安定需要に支えられていることから、その多くは未来を見据えた研究開発にはさほど関心を示さない。その中で同社だけは違う。石灰乾燥剤をはじめとする品質保持剤の新たな可能性へ向けた研究開発を怠らない。そのための投資にも積極的だ。

 そうした中で生まれたのが火傷をしない『乾燥剤I・C』(写真右)だ。熊本大学との共同開発による同製品は、石灰乾燥剤の唯一の弱点を克服した画期的なもの。通常は安全な石灰乾燥剤も、中身の生石灰を誤って水に接触させてしまうと300℃近い高熱が発生する。

 このため毎年、高齢者や子供の火傷が200件以上も報告されている。この『乾燥剤I・C』ならそうした心配はない。経済産業省のセーフデザイン賞の金賞をはじめ、多くの賞を受賞。また米国食品医薬局(FDA)からの「お墨付き」もある。熱を発生しないという安全性を担保したことで、これまで難しかった海外への輸出も容易に。坂本社長は「この『乾燥剤I・C』を世界中へ広めたい」と熱をもって話す。


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