見出し画像

教育長人事が3度目の提案で同意となった件

2024年5月10日、新温泉町の臨時議会で教育長人事案がありました。
この提案は議会の同意を得て、無事に新教育長任命となりました。
昨年11月末から空席となっていましたので、教育行政にとってはトップ不在なため進めたい事業も進められない状態にありました。
この人事と議会の議決について、町民から多くの疑問が寄せられておりましたので、記事を書きたいと思います。

※「反対の明確な理由」は本記事には書かれません。反対の理由が書かれない理由は書いてあります。あらかじめご了承ください。



経過

前教育長が2023年11月末に任期満了となりました。
11月の議会で町長から提案があったのは新しい教育長候補でしたが、賛成少数で不同意となりました。議会前の新聞報道で候補者が明らかとなり、一時騒動となりました。11月提案ではいくらかの質疑があり、無記名投票で採決となりました。

3月に2度目の提案がありました。11月の候補者とはまた別の候補者でしたが、賛成少数で不同意となりました。このときは、本会議の3日前に候補者に関する資料が配布され、質疑も討論もなく、無記名投票で採決となりました。

5月、3度目の提案。1度目、2度目とは異なる新しい候補者でした。このときも本会議の3日前に候補者に関する資料が配布されました。本会議では、質疑はありませんでしたが、賛成討論が一人あり、無記名投票でした。結果、14対1で同意となり、新たな教育長が決定しました。

また、前教育長は1度不同意となったあと、数ヶ月後に同じ候補者で2度目の提案があり着任が決まった経過があります。


教育長の「任命同意」の説明

基本事項

教育長の任命については、町長の提案権により人事案が出され、議会の同意権によって同意または不同意されるものです。予算等と異なり、議会には修正権がないため、人事案は多数決により同意となるか不同意となるかが決まります。教育長の任期は3年間です。

なお、教育長の再任はアリです。再任の場合も、人事案が出て、議会の同意を得て再任となります。今回(2024年5月)の副町長人事が再任ですね。
11月末で前教育長の任期が満了となり、新しい教育長候補が提案されたわけですが、議会が前教育長を却下したわけではありませんので、ご注意いただきたいです。

本会議の流れ

本町の教育長の人事案では、「議案の提案説明」→「質疑」→「討論」→「採決」の流れとなっていますが、国内の他議会では「教育長候補者の所信表明」や「教育長による質疑応答」の時間を設けるところもあります。決して多いわけではないですし、スタンダードがどうであるかは示されていません。
私は、「教育長候補者の所信表明」を提案説明のあとに入れると良いんじゃないかなと考えています。

候補者情報開示のタイミング

通例だと、本会議当日に候補者が明かされるようです。つまり議員は、当日まで何も知らない状態だそうです。ただし、歴代の教育長を見る限り、町内で名の知れた教育者ばかりなので当日に明かされたとしても議員ならば素性は知っている状態にあったであろうと思います。

今回、1度目の提案では、議員になんの告知もなく、新聞報道で候補者が顔写真入り紹介されました。議員としては寝耳に水でしたし、一部の町民はこの報道ですでに教育長が決まったのだと勘違いされておりました。通常、人事案は不同意となった場合を考慮して候補者氏名等をマスコミに流しませんので、相当イレギュラーでありました。
2度目と3度目の提案では、本会議3日前の資料配布でした。今後も町としては人事案を3日前に配布したい旨の答弁がありました。


不同意の理由

議員それぞれの判断で賛成・反対の表決を出しましたので、反対の理由は議員各々で異なると思います。不同意は多数決の結果ですので、議会としての理由があるわけではありません。
また、判断理由は基本的には述べるべきものではないと考えますので、ブログでも控えさせていただきます。「述べるべきものではない」の理由は後述します。



町民が抱いた疑問

Q.同意が当たり前。なぜ不同意したのか

教育長の任命同意について、同意が基本路線であることは理解します。
ただし、それは不同意してはならない理由にはなりません。議員各々の判断材料から反対すべきと議員が判断し、多数決の結果、不同意となることはやむを得ません。

Q.反対ありきの反対だったのか

新聞報道で、反対票を投じた議員に対して「なにがなんでも反対したいみたいだ」といった一部議員のコメントが掲載されておりました。
5月議会で教育長が決まったことから明らかだと思いますが、教育長に適すると判断されれば当然ながら同意されます。意地悪で反対している議員は居ないと思います。5月提案の候補者が11月に提案されていれば、同意されていたのではないかなと思います。
この筋違いのコメントに「恣意的だ」と怒る町民も結構おられました。

Q.無記名投票ではなく、起立採決や記名投票すべきじゃないのか

人事案は無記名投票がスタンダードです。
全国町村議会議長会が編集している「議員必携」という本があります。これは議会運営のスタンダードや考え方が示された本で、本町議会では全議員が所持しています。事務局もよく議員必携を開いて手続きを確認しています。

以下、議員必携から引用します。

無記名投票を用いたほうが良いと思われるものには、人事問題、地域的問題等のように個々の議員の賛否を明らかにしない方がより公正な結論が得られるような場合が考えられ、逆に政治的な責任を明らかにしたほうがより公正な表決が得られるような場合などに記名投票を使用することが考えられる。

議員必携 第12次改定新版  127頁

議会運営では起立採決が基本ですが、人事案については上記の通りです。スタンダードに背いてまで、記名投票や起立採決にすべきだとは私は思いません。

Q.なぜ質疑や討論を一切しなかったか

2度目提案の3月議会では、質疑討論がありませんでした。質疑討論もなく不同意は良くないとの一部議員や町民から意見が出ております。
他の議員の考えはわかりませんので、私の見解を述べます。

◆慣例について
人事案における質疑や討論は、候補者本人の人格攻撃となる恐れがあるため慎重に行われるべきということを聞いたことがあります。なるべく淡々と採決まで行われるべきだと。
実際、「〇〇を理由に不適合だと思うが、なぜこの候補者か」のような質疑は本人の耳に届けば軋轢を生むことになるでしょう。
かなりセンシティブな議案だからこそ、議員個々の事前の調査で判断が下されます。ただし、この慣例は「暗黙の了解」と言えるまで浸透はしていない感じがしています。

再任提案であれば、本会議の段階で候補者は特別職(および一般職)の公務員ですので、多少踏み込んだ質疑はしやすいと思います。

◆質疑について
「候補者の選定理由は」くらいの質疑があっても良かったかなと思います。ではなぜ、私は質疑をしなかったかと言いますと、判断が変わるような答弁は返ってこないだろうと思ってしまったからです。
1度目提案のとき、「どのような教育をしたい候補者なのか」「なぜこの候補者を選んだか」のような質疑がありました。答弁は町長です。このときの答弁で、候補者の考えが十分に伝わるようなものは出てきませんでしたし、町長のみの視点で全てが語られていたように感じました。
本会議で候補者から答弁があるわけでもなく、配布資料には経歴だけで教育のことが一切書いていない。そういったことと先述の慣例から質疑を控えました。

◆討論について
無記名投票の意味が部分的になくなってしまうことと発言によっては今後の地域運営に支障をきたす可能性があるため討論は避けてよいものかと思います。

Q.表決の判断は3日前に資料をもらえれば十分じゃないのか

2度目の提案が不同意になった際の新聞報道で、「3日前に資料を配布されたからどんな人物か判断できなかった」という議員のコメントが掲載されました。
これに対し町民から「3日前に配られたならそこから十分調査できるじゃないか」「判断できないから反対するのか」といった意見がありました。

私は、3日前なら十分だと思いますし、自分なりに判断して表決しました。
コメントを出した議員の本意は不明ですが、人事問題というセンシティブな議案だから回答を濁しただけではないかなと憶測しています。反対の理由を明確に述べてしまったら、そういう見方で町民から候補者へも視線が向けられる可能性があります。その配慮だと思います。

また、このコメントの件で、反対した議員は全員この考え方をしていると思われている町民がおられます。基本的には「町議会には派閥がある」と考えている方かと思われます。実際には、派閥はなく、議員個々の責任のもと表決を出しておりますので、一部議員の扇動で票が動いているわけではありません。

Q.前教育長をなぜ変えたか

議会が前教育長を下ろしたと考える方がおられますが、それは違います。
前教育長のままの再任提案があり、それが不同意となれば議会が下ろしたような形にはなるかと思いますが、再任提案はありませんでした。
11月末で任期満了、そのタイミングで別の新しい教育長候補者を町長が提案した形になります。

前教育長が非常に愛されていたことは私の耳にも入っております。



終わりに

5月10日に臨時議会があり、同日に着任となりました。任期は3年間、3年後の5月9日までとなります。
新教育長のもと、新たな教育がスタートします。
6月定例会では、新教育長の所信表明もあると思いますし、多くの一般質問で教育の方針に関する質問があると予想されます。

長い教員経験と教育委員としての実績を持たれる新教育長です。新温泉町の子どもたちがより良い環境で教育を受けられるようになることを期待して、本記事を終わりたいと思います。



よろしければ、サポートお願いいたします! 塾の生徒のためにクリエイティブな本を購入します。