令和の囲碁講座番外編④コスミを守りの手だと思っているなら大間違いぞ!また秀策殿が氏んでおられる。
なんとなく、囲碁記事をもう一つ挟んでから、普通の記事を書くことにしました。
ネタは何にしようか迷ったんですが、やっぱり、今一番ホットな流行りである外ツケについて、もう一記事かけて捕捉しておこうかなと。
ということで、今回の例題は、二連星からコゲイマにかかり、白が堂々とコスんで位を保ったところで、大きくなった左辺を黒がツケから割っていった場面から切り取りました。
次の一手を考えて下さい。
もう2週間以上前の事で棋譜も残していないので忘れてしまったんですが、僕が見た時は、こんな感じの分かれになってた記憶。
ごくごく常識的な形ではあるものの、僕としては違和感を覚えました。
「えっ、今までに散々、上ツケ(外ツケ)ではなく置きから打つ事を推奨するけど、そうはいっても、結局は同じ形に持っていく事になると話してきたのに、これだと何か黒におかしいことあるの?」
と、逆に僕に対して違和感を持たれるかもしれませんが、時と場合によるんですよね。
ただし、黒が常識を外れる必要があるように、次の白の一手も、ちょっと工夫が必要と思われる場面です。
秀策のコスミから成る左下の形ですが、部分的には、二通りの後続手段が考えられます。
一つはカケ。
黒が受けてくれるなら、はっきりと利かしになっているんですが、この局面だと受けるとは限らないんですよね。
6のケイマの地点も大きい。
白が下辺を連打するなら、黒も上辺を止めます。
いずれ、左上のハネ継ぎが絶対の利きとなるため、見た目以上に黒は厚く、また、右下の黒が安定すれば、左下は置きから手が生じます。
(それを見越して、かかりには10とケイマに払う受けをしてる。)
慌てて黒の手に乗ってきたなら、8から出ぎって外を固め右辺を地にします。
白の対応として、もう一つ、考えられるのは、コスミかからのコスミツケのサガリという、ガッチガチな手堅い行き方ですね。
が、今回も同様に、黒はケイマに踊り出ます。
9と10は見合いで、白が下を連打するなら、以下、黒は上下で白地を値切って十分です。
上を受けるなら下を止めて、11の曲がり一本を利かされるのも許し、それでも、右辺のスケールは足りてます。
以下は一例ですが、下辺を止めると左下つけ引きのヨセが生じるため、割と余裕で黒が勝ちそうです。
やはり、相手の手のいいなりになって、自分の強い意思を曲げるのは良くない。
ここまで見てもらって分かるように、ポイントは黒にケイマを打たれるかどうか、あるいは、打たれて困るかどうかです。
そこで、かけでもコスミツケでも無い、常用の形以外の手順が求められるんですね。
そんなこんなで、僕ならば5と左辺側を肩ツキします。
仮に、すぐに黒がケイマしてきた場合、6と連打するのが痛打となる。
ツケコシがきつすぎるため、せっかく軽快に踊り出したのに8と継がざるをえず、一気に黒は重くなりますし、白は普通の進出の9の手がしっかりと後の攻めに繋がってるため好調子。
以上から、白が肩ツキで応じた場合、黒のケイマを実質的に封じています。
で、黒は受けるしかないですが、10までは必然として、11の置きが手筋。
確か、ガチモードのアキラと佐為の碁会所での初戦(アキラが手震えながら打ってたやつ)にも似たような形が出てた気がします。
以下、黒がどれだけ抵抗したところで、かなり利かされて外の白が厚くなります。
なので、変な事はせずに普通に生きて、少し、白持ちかなといった感じ。
黒にケイマに打たせなければ、白は成功と言っていいかなと言う結論でした。
そこで最初の問題図?に戻るわけです。
黒はどうしたらいいでしょうか?
言い換えれば、どうしたら桂馬に打てるのかという問題。
そこで、今回は角では無く、トビを利かしてから先んじてケイマに進出してみます。
これなら、確実にケイマが打てる。
ちなみに、白が妨害しても良い事はありません。
左下でコスんで力を貯めた以上は、左上隅をあっさりと明け渡してしまっては空ぶってますし甘いです。
※ちょっと訂正。
曲がってきたら伸びていいですね。
冒頭の形とはスペースがかなり違うので、普通に治まれそう。
囲碁では、「美人は追うな。」と言う格言がありますが、黒があっさりと隅を献上して早逃げしようとしてるんですから、白もその流れに乗ってしまえば良い。
貰えるものを素直にありがたく受け取って満足する。
それ以上は求めない。
謙遜?も行き過ぎれば嫌味になるというか、たかだか人間一人にばかり意識を集中するよりも、それ以上に優先しないといけないことがある。
空気が読めない、流れに逆らう、つまりは、その場の環境に適応しない方が問題で、どこでも自由に打つことが許されている囲碁というゲームだからこそ、場を読む能力を求められている気がします。
この碁でいうと、最初に白がコスんだことで、一局の碁の流れが決まったような感覚が僕にはあります。
全ての石が平等である囲碁においては、派手なムードメーカーみたいな手が主役になるとは限らない。
地味で、いっけん、守りに寄ってるように見える手が一局の中心になることは、ままある。
僕にとっての秀策のコスミって、そういう存在なんですね。
なので、そこを意識せずに踏み込み過ぎたり、あるいは堅くなりすぎるのは、どちらも秀策の特性を殺してるようなものではないかなと。
(コミの無い時代に先番で無双してたという部分ばかりに目が行って正しい評価が出来ないみたいな。)
ちょっと脱線しましたが、そもそも、コスミがどうこう以前の部分的な問題として、最初に左上にツケた目的は左辺で生きる事ではなく、左辺を割って二連星と握手して連動させる事のはずなんですね。
だからこそ、飛びからケイマみたいな発想が生まれる。
普段の僕が角置きとツケを使い分けてるのも、その辺を意識してるからであって、秀策のコスミが打たれた後、そこで正面切って闘う理由がないです。
『自分が強い場所では、大きな戦いにひきずりこむ。相手が強い場所では、なるべく軽く躱す。』
誰でも、知ってるド基本を忠実に守っているに過ぎないんですが、自分や他人の手にばかり意識が向いてる人、つまりはその場の空気が読めない人って、意外と初心者の頃に習った事を忘れてる事が多いように感じます。
善悪がどうこう、棋力がどうこうとか以前の問題。
(言ってる事とやってる事が違う。囲碁普及を口にしながらも、実は本心では囲碁の衰退を望むように。)
ともかく、黒が飛びからケイマに打った後の変化を見てみましょう。
今の時点での即座のツケコシは特に怖くないです。
三段バネで捨ててしまってよろし。
白としては、ツケコシではなく、踊りだしから全ての黒を攻めたいところ。
秀策のコスミは地にはならない手なので、攻めにこそ活かしたい。
この後の進行ですが、白の側もこすんだ後にケイマにかけるのが大きいのは先述の通り。
既にケイマに打ってる黒も今回は受けます。
そしたら白も手を引いて隅に戻りますか。
ひと段落した後は、11,13と自身を補強しつつ下辺の黒を重くして、簡単には捨てさせないように手回しします。
上の黒の一団は現段階では急襲したところで躱されて終わるだけなので、下辺と絡ませて仕掛けるタイミングを待ちます。
(というか、白の方も全体が薄いんで。)
それを黒が把握して意思疎通が出来てるなら、その後の利かしも全て素直に受けるはずです。
ここで意地をはっても地が少し増えるだけで、その代償に左の黒を全部取られては割に合わない取引。
黒が下辺を最後まで受けてくれたなら、白もいったんは中断し、上辺に手を戻して仕切り直しですね。
並べた所、ほぼ互角な雰囲気でした。
今回はこれで終わりですが、実戦でもよく使い実感が伴いやすい上ツケについては、次回、もう一度だけ、記事にしようと思っています。
(今度は、上ツケ一本からのオオゲイマジマリへの横ツケコンビネーションについてを予定。)
この記事に限らず、昔から言ってるように、囲碁が強くなれない理由も、囲碁界が衰退してる事を嘆く理由も、根本はいっしょだと僕は考えています。
努力が足りないとか、個人のやりたい事が見つからないとか、やってる事がちぐはぐだとか、頭が固く柔軟先生が足りないとか、そういうのは表面的な要素でしかなく、それら一つ一つ、部分部分に注目したところで余計におかしくなるだけでしかない。
(それが顕著なのが運動神経とか。)
全部を同時に満たす事をやるしかなく、囲碁でそれを具体的な手に落とし込んだ場合に、僕はワンパターンの碁形になってるというだけで、ここに至るまでの背景には色々とあるんですよね。
なので、そこについてを改めて話した後に、次回、上ツケの問題をもう一つ紹介しようかなと。
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