『世界「倒産」図鑑』を読んで学んだこと

----------書籍情報----------------

書籍名:世界「倒産」図鑑
著 者:荒木博行
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はじめに

私はクライアントのコンテンツマーケティングを支援していますが、適切な施策を提案し、企業のコンテンツを制作するには、その企業のビジネスモデルを理解することが重要です。

経営者がどのようなリスクを背負いながらビジネスモデルを組み立てているのかを知るため、本書を読んでみました。

主体的に考えられない現場

♢そごうの倒産事例

1830年に古着屋「大和屋」として創業したそごうは、1919年には呉服店として本格的にデパート業に参入し、今のそごうの原型が作られました。

その後、1962年に社長に就任した水島氏が、初めて百貨店のチェーン化(各店舗を独立法人化する)を成功させ、そごうの店舗を全国に作り、規模を拡大していきます。

そごうが全国展開に成功した背景には、「地価」という要素がありました。

そごうは出典予定地周辺をあらかじめ買い占め、出店で地価を上げることで資産を増やします。そして、その土地の店舗が新しい店舗の債務保証をしながら銀行から資金を調達し、また新しい店舗をつくるというサイクルで、どんどん店舗を増やしていったのです。

しかし、このサイクルには2つの問題がありました。

1つ目はそごうの独立法人同士が支え合う複雑な形になっていたため、経営の内情がブラックボックスになることです。資金の貸し手である銀行や水島社長を含め、誰もグループ全体の経営状況を把握できない状況になっていました。

2つ目は、地価が下がった時は全てが逆回転するということです。

実際にそごうは、バブル崩壊、阪神・淡路大震災など、日本全体に訪れた不況の波により、倒産に追い込まれることになりました。

本書では、このそごうの問題点を、「現場の社員に主体的に考える能力がなかった」という切り口で考えています。

そごうは水島社長のカリスマ性により、強固なビジネスモデルが確立されていました。それによって長い間安定的に収益を生み出していたため、社員はビジネスモデルを疑うことなく、余計な事は考えずに言われたことをやっている方が合理的であるという状態になっていました。

最初のバブル崩壊の時に、水島社長は「景気が回復すれば元通りになる」と考えていて、ビジネスモデルの見直しをしようとしませんでした。

その時に社員がビジネスモデルの改善点に気が付き、意見を出して建設的な話し合いができていたら、結果は変わっていたかもしれません。

失敗しながら学習する

♢ポラロイドの倒産事例

ポラロイドは、写真の現像に数週間待つしかなかったような時代に、インスタントカメラを発明したことで急成長を遂げます。

しかしその後、競合のコダックが60分で現像できるフィルムを開発したり、日本企業がより画質の良いコンパクトなデジタルカメラを開発したりしたことで、ポラロイドは「待たずに見られる」という優位性を失い、衰退をしていきます。

もちろんポラロイドでもデジタル化に向けた企画が進みましたが、デジタル技術の市場が当時は未知数で分析ができなかったことと、当時はデジタルカメラの写真の品質はアナログと比べて「粗悪品」と見られていたことから、最終的に企画が可決されることはありませんでした。

そうしているうちに市場に後れを取り、倒産をしてしまうことなります。

本書では、ポラロイドは「分析」にこだわるのではなく、失敗を前提とした「学習」に意識を向けるべきであったと書かれています。

既存市場では、市場規模や成長率、利益率などの「市場の魅力」を測るためのロジックに基づいた分析をすることができます。

しかし、革新的な新たな技術の場合は、既存市場のような分析はできません。しかし、分析ができないからといっていつまでも既存市場の中だけで戦っていては、新たな技術に置いて行かれてしまいます。

大きな企業になるほど分析重視の体制ができていきますが、変化のある市場の中で成長し続けるためには、失敗を恐れず、学習気質を維持し続けることが必要です。

新しいルールに則った戦い方をする

♢トイザラスの倒産事例

トイザラスは「おもちゃのスーパー」というコンセプトで、豊富な商品のラインナップと価格破壊によって全米で2割ものシェアを取り、世界最大のおもちゃスーパーとなりました。

しかし、その後、eコマースの台頭により倒産への道を歩んでいきます。

おもちゃのネット販売にいち早く参入したのは、カリフォルニア発のベンチャー企業イートイズでした。イートイズのサイトはトイザラスと比較して圧倒的に使い勝手が良く、商品によってはトイザラスの10倍以上のラインナップをそろえていました。

トイザラスも遅れてネット販売に参入し、トイザラス・ドット・コムというネット販売の子会社を立ち上げました。しかし、トイザラスは既存の店舗を優先させ、トイザラス・ドット・コムに価格決定権などの自由を与えませんでした。

トイザラス・ドット・コムは本社から厳しい制約が課せられたことにより身動きが出来なくなってしまい、eコマースの競合他社に対する戦略を立てるといった動きが取れなくなってしまいました。

その後、Amazonとトイザラス以外のおもちゃを売らないという契約をしますが、Amazonに契約を切られてからは業績が回復することはありませんでした。

eコマースの台頭という新しいルールを認識せずに既存のルールの中で勝てる戦い方をしてしまったことと、新たなルールで勝つために、Amazonという他人任せで対応してしまったことが、トイザラスを倒産に追い込んだ原因だと本書では分析しています。

まとめ

本書を読んで、経営者が懸念している倒産のリスクには様々なものがあるということが分かりました。

多くの倒産事例で共通しているのは、下記のことが挙げられます。

・長期間成功しているビジネスモデルを社長も現場の社員も疑おうとしなかったために、経営の欠陥に気が付けなかったこと

・「どうすれば市場に勝てるか」というルールが新しくなっているのに気が付かずに、いつまでも既存の戦い方で戦っていたこと

・現在の技術ややり方を過信する、または失敗を恐れて、新しいことにチャレンジして学習するという姿勢を持続できないこと

今、コロナの影響により、特に市場がスピード感を持って変化をしていっている時であると思います。

そのため、経営者に任せきりにせずに、現場の社員も自分自身で市場の動きを見て、今のビジネスモデルを改善するにはどうすればいいかを考える視点を持つことが必要だと思いました。

また、クライアント支援という視点で見た際には、市場で勝つためのルール変更や、新しい技術やサービスの登場に高くアンテナを張ることで、情報提供や提案ができると思いました。

また、今回の書籍で学んだことは、サービスの種類や業界によって、地価や株価など脅威になり得るものや、その脅威の影響度が異なるということです。

そのため、クライアントのビジネスにとっての脅威となる要因は何なのかをしっかりと理解し、クライアントが敏感になっているものは何か、どんなリスクを抱えているのかといったことに寄り添ったコミュニケーションや施策を行えるようにしていこうと思います。

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