「超実践的 Webディレクターの教科書」を読んでみた

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書籍名:超実践的 Webディレクターの教科書

著 者:中村健太、田口真行、高瀬康次

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はじめに

ディレクションをする中で、クライアントやライター・デザイナーとのコミュニケーションがスムーズにいかなかったり、情報の整理や共有が煩雑になったり、プロジェクトが予定通りに進行しなかったりすることがあります。もっと円滑にコミュニケーションを取り、効率良くディレクションをするやり方を模索するため、本書を読みました。

本書では実践的なディレクションのアドバイスがまとめられていて全て参考にできる内容ですが、本レポートでは、自分がまず身に着けていきたいことをピックアップしてまとめていきます。

差し戻し回数を減らす方法

デザインができたところで「やっぱりなんか違う」と差し戻しが何度も発生すると、自分だけではなくクライアントも疲弊してしまいます。こちらから見たら「何回やり直せばいいんだ」と思うかもしれませんが、クライアントからしたら「何回言えば分かるんだ」と思われてしまいます。

何度も差し戻しを発生させないための方法は、見積もりの段階で原稿・画像・ボタンの入った全画面のワイヤーフレームを提示し、やることとやらないことをその場でFIXさせてしまうことです。

しかし、通常のサイト制作だとライティングに入る前に見積もりを出すため、そこは原稿が大方決まった時点で再度デザインの見積もりを提示するなど、柔軟に対応できるように仕組みを変えていく必要があるのではないかと思いました。

また、最初から「クライアントが何を作りたいか」ということをベースに進行していくと、何度も差し戻しが発生する原因になってしまいます。クライアントは自分でコピーやデザインを具現化できないために発注しているので、クライアントの言葉に左右されてできた成果物では、結局課題を解決できなかったということになるからです。

そのため、最初に「どんな課題を解決したいのか」を明確にし、そのために最適な方法をこちらから提案することが、差し戻しを何回も発生させないためにも重要になります。

また、無駄なやり直しを発生させないためには、クライアントの担当者との関係性も重要です。特に大きなやり直しが発生する理由の1つとして、担当者と話して進めてきたのに、急に上の人が出てきて前提がひっくり返ってしまうということがあります。

そのような傾向があるクライアントでは、担当者の隣に立ち、一緒に悩みを共有する味方となると、協力関係を築くことができます。

成果物の質を上げる方法

ライターやデザイナーに依頼をした時に、上がってきた成果物のクオリティがディレクターが求めているものと違うということがよく起こります。

クオリティを下げないようにディレクターがやるべきことは、まずメンバーに、「各タスクにおけるクオリティとは何か」を明確に示しておくことです。

いつもリスプラで言われているところの、タスクの「基準」を示すということになります。

やり取りをしている人が増えたり様々なタスクが発生すると、必要な依頼内容と期限のみを伝えて、この「基準」が抜けてしまうことがあります。どんなクオリティを求めているのか、1つ1つのタスクで具体的に伝える必要があります。

また、もう1つ重要なことは、チームメンバーのモチベーションを上げることです。新しい仕事を依頼する時に、プロジェクトを始めるワクワク感と、プロジェクト成功の先にあるビジネスの成功をメンバーにも伝えることで、モチベーション高く業務にあたってもらえるようになります。

クライアントの満足を引き出すコミュニケーション

クライアントの満足を引き出すには、クライアントに言われたことしかやらない受け身のディレクションではなく、二手三手を読み、こちらから提案をすることが必要です。

クライアントはライティングやデザインのことが良く分からないからプロにお願いしているため、「どんなデザインにしますか?」というのはクライアントに聞くことではありません。

本書では、これをタクシーに例えていたのがとても分かりやすかったです。タクシーの運転手には2つのタイプの人がいます。1つは目的地を伝えるとルートを提案してくるタイプで、2つめは目的地を伝えたら、「どのルートで行けばいいですか」と聞いてくるタイプです。

運転手はその道のプロですから、素人であるお客さんに道を聞くのは、満足してもらいにくい対応といえます。

ディレクターも同様で、クライアントに聞くのは「何を解決したいのか。どんな結果がほしいのか」というゴールであって、そのゴールまでの行き方はプロであるディレクターから提案をするべきです。

今までの経験から、自分の見解をふまえた提案をすることが必要です。

デキるWebディレクターに共通するスキル

本書では、レベルの高いWebディレクターは、依頼された要求からビジネスを提案できるレベルであると書かれています。

サイト制作やメディア運営を依頼されるクライアントのゴールは、「利益を出すこと」です。そのために、戦略の設計やビジネスモデルの構築まで提案できるディレクターが一番強いとされています。

本書では、「デキるWebディレクター」と呼ばれるには、能動的に行動し、常に最良を提案し続け、それらを実現できるだけのスキルが必要であると書かれています。

それに必要なのは、以下の4点です。

①ビジネスの理解

能動的に行動するためには、ビジネスとはどう成り立っているかを知らなければいけません。本書では、ビジネスは全て数字で成り立っているため、まずは全てのものを数字で考えられるようにすることがビジネスを理解するために有効だと書かれています。

例えば人件費を考える時に、このタスクに何時間かかったら赤字なのか、何人かけたら赤字なのかなどを理解することが必要です。

②Web関係者(ライター、デザイナー、カメラマン、自分以外のディレクターなど)との人脈

Webディレクターには、クライアントの課題解決に必要な予算とスキルを用意することが求められます。そのため、様々なスキルを用意できるディレクターほど、様々なプロジェクトができるということになります。

スキルを用意するには、その道のプロとつながっていることが重要です。そのため、SNSなどを活用して、ライターやデザイナー、カメラマン、イラストレーターなど、様々な人脈があるディレクターは強いといえます。

③仕事の軸を見出して、自分の強みを具体化する

ディレクターは色々なことをやっていますが、「なんでもできる」は「何もできない」ということでもあると著者は述べています。自分は何に強みを持っていて、何ができるのかが分からないと、発注する方も何を頼めるのかが分からなくなってしまいます。

④提案力を磨いて、推進力を身に着ける

先ほども書いたように、ディレクターには提案力が求められます。

私が特に参考にしたいと思ったことは、クライアントや社内の他の担当者から依頼が来た時に、そのデメリットと合わせて別の解決方法をセットで伝えるということです。

クライアントや制作に携わっていない人はWeb制作のプロではなく、また、制作に携わっている人でもマーケティングのプロではないことがあります。

そのため、最善ではないと思われる依頼があった時には、ディレクターがそのデメリットをしっかりと伝え、さらにもっと良い方法を提案する必要があります。

本書では、提案力を磨くためにやるべきこととして、自身が経験したこと、他者の経験談として聞いたことについて、多面的に考察することが大事であると書かれています。

例えば失敗をしたときに、「大変だった」で終わりにせず、失敗を回避するにはどうしたら良かったか、もっと大きな失敗に発展する可能性はなかったかといった、様々な角度から考察をすることで初めて、その経験が「失敗」ではなく「知見」として蓄積されます。人から話を聞いた時も同様に、「自分ならどうしていたか」を考えることが重要です。

このように経験に対する考察をしていくことで提案の引き出しが多くなり、提案力が磨かれます。

分かった「つもり」を避けるヒアリング方法

コンセプトやサイト構成を設計するための最初のヒアリングで「決まった」と思っていた方向性に基づいて進めていったら、いざ成果物が出来上がった時にクライアントのイメージと違っていたということがあります。

このように分かった「つもり」、聞いた「つもり」を防ぐ方法としては、ヒアリングしているその場でアウトプットをするという方法があります。

まず、ヒアリング前にクライアントのビジネスについてある程度のリサーチはしてある前提で、例えばクライアントから、サイト制作をして解決したい課題を聞いたときには、なんでもいいので「それってこういうことですか」「そのためにこういうことをしていくのはどうですか」など、その場でアウトプットをすることが重要です。

こうすれば、認識がずれていた場合はその場で軌道修正をすることができるため、ムダなやり直しを発生させたり、クライアントに不要なストレスをかけることがなくなります。

ディレクション力を養うトレーニング

本書では、ディレクション力を養う具体的なトレーニング方法がいくつか紹介されています。特に自分の能力不足を補うために、下記の4つのトレーニングを試していきたいと思います。

♦企画力を磨くトレーニング

調査対象のお店を決め、お店の前に来たら、入店する可能性があるターゲットユーザーと、お店がユーザーに到達させようとしている「コンバージョンポイント」、ユーザーが「入店する(しない)理由」「コンバージョンする(しない)理由」を考え、どうしたらユーザーを入店させ、コンバージョンさせられるかを考えます。

♦デザインイメージ共有トレーニング

質問を受ける側(A)と質問する側(B)に分かれ、Aが複数のWebサイトのスクリーンショットから1つを選びます。与えられた制限時間内に、BはAがどのサイトを選んだのかを質問して当てます。

♦提案力を養うリニューアル案トレーニング

題材となるサイトを1つ決め、流入経路はどこか、ターゲットとなるユーザーをスムーズにコンバージョンポイントに誘導するために必要なコンテンツは何かを考えます。

♦ヒアリングの切り口を増やすトレーニング

クライアント役、ディレクター役、オーディエンス役の3人を決めて、「お題(何かの商品やサービス)」と「課題テーマ」を決め、ディレクター役がクライアント側が抱える課題や要望を軸に10分間ヒアリングを行います。

10分経ったら、クライアント役は「もっとここを掘り下げてほしかった」などの改善点を、オーディエンス役は、第三者の視点から、双方のコミュニケーションで感じた違和感などをフィードバックします。

まとめ

本書を読んで、クライアントとのコミュニケーションで私に一番足りていないのは提案力だと思いました。クライアントの課題やビジネスとして実現したいこと(目的地)を聞いて、そこに行くまでの行き方として最良のものを提案し続けるというディレクターを目指していきます。

そのために、自分や他者の経験を様々な角度から考察し、知見を貯めていくことを行っていきます。

また、大きなプロジェクトを推進するには、様々なスキルを集めることが必要です。せっかくフォロワーが増えてきたので、Twitterをもっと活用して、色々なWeb関係者と積極的に関わり、人脈づくりをしていきたいと思います。

また、制作メンバーやクライアントとの認識の相違が発生することも、今の自分の課題です。制作メンバーには、各タスクのクオリティを明示すること、クライアントには、ヒアリング時に必ず聞くだけではなく「こういうことですか」とアウトプットをすることを実施し、コミュニケーションミスを防ぎます。

その他、最後にまとめたディレクション力を高めるためのトレーニングも、社内のディレクターやOMチームのメンバーに協力を依頼して、ワークをやってみたいと思います。

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