スーパーで働いてる人は見てる#2
昨日の朝、天国へ旅立ったお客さま。
いらっしゃいませ!今日もご来店ありがとうございます💕
9月も中旬に入り、それとなく風が涼しくなった気がします。
わたくしもリアルスーパーに勤めだして8年が過ぎようとしています。
8年もいればいろんなお客さまに出会って参りました。
ご年配でいつもおふたりで仲良さげにお買い物に来られるお客さま。
奥さまはいつもニコニコとまるで如来様のような微笑みでねぎらってくださる心の優しい方。ご主人は小柄な方ですが声のとても通る方です。
しばらく奥さまをお見かけしないなぁと思っていました。
そのうちにご主人もお見えにならない日が続きました。
もしかして奥さま、お体の調子でも悪いのかしら・・・。
それからまたしばらくして、ご主人がひょこっとお見えになりました。
やっぱりおひとりでお越しになりました。
さすがに気になっていましたが、ご家庭の事情もおありのはずなので立ち入ったことをお伺いしてはと思い、「ご無沙汰しております」と当たり障りのないところからお話いたしました。
すると・・・ご主人がいつも被っていらっしゃる帽子のつばをギュッと握りしめてこうおっしゃいました。
「家内がな~昨日死んだんだよ」
悲しい現実の中で
「俺より先に逝ってしまって、俺はこれからどうしたらいいのか」
わたくしはすでに言葉を失っており、答える術が見つかりません。
さほど大きくないスーパーの荷物をお詰めいただくための台をはさんで話を伺います。
信じられないだろ?俺が一番信じられないんだよ。何でどうしてってな、さっきまで顔見てたんだけどな・・・。
人間て言うのは本当に言葉を失うほどの悲しみに遭遇すると涙出ないものなんですね。
んでな。
はい。
顔見てたら腹減ってきてな、情けないだろ~こんな時なのに腹減って仕方ねぇから抜け出して買い物に来たんだよ。
そう・・・だったんですか。
そしたら、家内の好きだった中村屋のどら焼きだろ~あとほら、これこれ・・・赤飯な。こんな時に赤飯なんて常識ないけどな。
腹減って買い物来たのに全部アレが好きだった食べ物ばっかり買ってしまって、俺甘いもの食えないのに・・・。
荷物を一通り詰められてお客さまはお帰りになられました。
お見送りをしてサービスカウンターへ戻ってみたら本当に悲しみがこみあげてきてしゃがんでひとり、泣きました。
思えばここに就職した時からずっといらしてくださったお客さまです。
お名前を知ってるわけではなくお住まいも存じ上げているわけではありませんでしたが、よく手を握ってくださった奥さまの優しさを思い、仕事中だということも忘れて泣きました。
そしてその後。
それから3カ月ほどご主人はお見えになりませんでした。
それがまたひょっこりと今日お越しいただきました。
月並みでしたがここも「ご無沙汰しております」ふとお顔を拝見するとずいぶんと日焼けなさっているようにお見受けしました。
四国にな
はい。
四国にお遍路で行ってきたんだよ。ほらこれと一緒にな。
見ると小さな瓶が首からぶらさがっていました。
奥さまの遺骨を持って四国霊場へ行かれていたとのことでした。
とりあえずまだ迎えにはこれんだろうからな
はい。
1人ぼっちになってしまったと思えば乗り越えることは厄介だけど
いつも2人でいると思えば悲しみは乗り越えられる。
本日もご来店ありがとうございました。
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