テレマン 新パリカルテット第6番 ホ短調 TWV43:e4

ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681年-1767年)はドイツの盛期バロックを代表する作曲家です。

現代ではドイツのバロックの作曲家、といえばヨハン・セバスティアン・バッハがまず思い浮かびますが、当時名声があったのは各地の宮廷楽長や教会楽長を務めるなど広く活躍していたテレマンのほうでした。
ちなみに、バッハとは終生親交が深く、バッハの息子カール・フィリップ・エマニエル・バッハの名付け親にもなっています。

1737年(56才)から8カ月、フランス・パリに滞在中に書かれたのが、この「新パリ四重奏曲」です。

「四重奏曲」と聞いて、皆さんは「どんな楽器で演奏するんだろう?」と思われるでしょうか?
古典派以降の作品と違って、バロックの曲には明確に楽器が指定されていないことがよくあります。(「○○または△△のための」というように)

今回の演奏では「フラウトトラヴェルソ、バロックヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボ、チェンバロ」の「5つの楽器」で演奏しています。

・・・・・・ん?5つ?四重奏曲なのに?

これはバロック音楽にかかせない「通奏低音」というパートに関係があります。
記譜は低音とそれに付随する数字(現代のコードネームのようなもの)のみで、奏者は書かれた低音とそれに合った和声を即興で演奏します。
今回はテオルボ(大型のリュート)とチェンバロがそのパートを受け持っています。

2人で同じ楽譜を見て、それぞれが即興で弾く・・・・なかなかスリリングで、かつ楽しい作業です。「即興」といってもあらかじめ打ち合わせはします。「この音は入れよう(抜こう)か」「ここは上の旋律とハモリを入れるとキレイかも」など。
しかし「即興」なので、結局はその場でお互いいろいろお約束じゃないことをするのが常ですが(笑)。

さて、テレマンは「もっともたくさんの曲を作った」としてギネス認定されている作曲家です。
商才にも長けていたので、自分の曲を一般のアマチュア向けにどんどん出版しました。ということで、そういった「アマチュア向き」の曲はわりと演奏しやすく、でもあまり深みもない・・・・なことが多いです。

しかし、この新パリ四重奏曲は細部に至るまで非常に緻密に書かれており、テレマンの代表作の一つと言えるのではないでしょうか。

テクニックもかなり高度なものを要求されます。
加えて、古楽器演奏となると4パート分の奏者を揃えるということ自体がまず困難です。


私自身ずっと演奏したかった曲なのですが、大阪南部で活動するアマチュアグループ「アンサンブルシュシュ」で今回やっと演奏が実現しました!


コロナ禍の中の演奏会となり、お客さまにも感染防止のご協力をいただきながらの開催となりましたが「初めて古楽器の音を生で聴いて感激しました」「心が穏やかになる音ですね」とお声がけいただきました。
こんな時代だからこそ、音楽の力をあらためて実感しています。

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