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もうけは後まわしにする

 ムサシオープンデパート朝市の運営の方針は、ひとまず自分たちのもうけは後回しにすることです。

 これは我ながらなかなかできることではない。仕事でやっているにもかかわらず「金もうけはさておく」なんてのんきなことを言ってるわけです。仕事ってお金に追われるからこそできることがあるわけです。それをさいしょから捨てちゃってる。それでなんとか回っています。よくこんなので回ってるなと思うこともあるし、なぜ回っているのかの謎はまだ解明できていません。

 でも完全に捨てるわけではもちろんありません。金は経済の血液です。経済的に自立運営ができないとスタッフの労力を買い叩かないといけない(つまり給与を下げる)し、設備投資もできなくなる。

 さいわい朝市は初期投資の額がさほどではありませんし、前回書いたように運営のムダは改善活動を続けることで削減してランニングコストも下げつづけています。ボランティアスタッフも手伝ってくれる。

 それでも金が回らなくなったらおしまいです。

 「金もうけはさておく」というのは、つまり自分たちの金もうけは後回しにするということです。けっして無償でやっているのではない。しかし短期的な金もうけをめざすと達成できないことがあるので後回しにしています。

 初出店の店や、比較的売上のすくない雑貨系の店などは、売上が数千円、出店料が数百円しか収められないという店もあります。毎週たくさんある。しかしそういう出店者もどんどん出てかまわないことにしたいんですね。

 なぜかというと、いま世の中に存在している大きな企業やチェーン展開しているレストランも、最初はだれかが小さな会社や食堂をはじめたところがスタートだった。その最初のスタートを気軽に切れる場所がもっとローカルにあっていいんじゃないか。

 いまやネットショップは簡単にスタートできるようになりました。小さな商売をネットではじめるのはかんたんです。しかし実店舗を持とうとするとハードルが高いのは変わりません。店を借り、スタッフを雇い、レジやエアコンを買い、光熱費の契約をし、家具や調度品を準備し、そのために銀行から金をかりてスタートするわけです。

 それだと失敗できないんですよ。試してみるということができない。朝市ならそれができます。趣味で作っていた野菜やアクセサリーを試しに売ってみるということができる。売れなかったら売れなかったで工夫を続けてくれればいいし、継続して安心してチャレンジができる。

 実店舗をもっているけれど、朝市にも出てくれる店もたくさんあります。新しいメニューを朝市で試験販売してみるとか、新しいスタッフのトレーニングの場に使ってもらうとか、実店舗とはまたちがった使いかたがあるんですね。

 その自由さを許容するために努力して運営コストを下げ続ける。まずは出店してみてほしいし、そのために間口を広げておく。そういう毅然たる意思表示でもあります。

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