愛読書で自己紹介
岡本と申します。
山根あきらさんの企画に参加させてもらいます!
3冊に絞るって難しい!どれにしよう!と頭を悩ませていたら、「自己紹介」って観点がすっぽり抜けたまま、とにかく好きな本を選んでしまった。
「やば!」と思ったのだけど、見返してみたら意外にちゃんと共通点がある。
今回選んだ3冊は、私に「書く」という動機を与えてくれる本たちだった。
私はたまに小説を書いていて、でも自分の作品に全然自信がなく、ちょっと筆も滞りがちで、「くよくよしていないで、もっとそのアウトプット頻度を上げなければ」と思ってnoteを再開した。
選び出した3冊は、「私も何か描きたい」という気持ちを思い出させてくれる、強めてくれる本たちで、今のそんな私の状態にぴったり。
まとまりのない3冊だけど、とりあえず、これで自己紹介とさせていただきます。
ぶらんこ乗り いしいしんじ
この本を読んだときの衝撃は、今でも覚えている。
もう新卒で働き始めていた頃に、たまたま手にした本で、読んですぐ「何だこれは」と思った。
久々に、読書で新鮮な驚きを感じた。
小さい頃に本を読んで、純粋にドキドキワクワクしたような、そんな気持ち。大人なのに、本でこんな気持ちになれるんだ、と思った。
語り口は平易で、現代なのかどこの国の話なのかも分からない、曖昧さがある。全体的に童話っぽい。
それなのに、柔らかい言葉で紡がれるこの小説の中には、楽しさも、不安も、恐怖も、希望も、愛も、全部詰まっていた。心がギュッと囚われてしまった。
こんな小説読んだことない。こんな小説があるんだ。と感動して、私もこんな風に、自分が作り出した世界に誰かを閉じ込めてみたいと思って、小説を書き始めた。そんな思い出の作品。
要約してしまうと「姉が、いなくなってしまった弟が残した古いノートを見つけて弟のことを回想する話」なので「何それ面白いの?」となるのだが、めちゃくちゃ面白い。そして泣ける。
いしいしんじさんの作品は全部おもちゃみたいな可愛さと軽やかさを纏っていて、それでいてふとした拍子に心の奥底をズドンと刺してくる。
月と六ペンス サマセット・モーム
あらすじは上記の通り。
サマセット・モームの小説は、登場人物の描写がすごくうまくて、「あー、いるいる、こういうやついるいる」の連続である。
たぶんめちゃくちゃ冷静で、ものすごく人を観察してたんだろうなぁ、スパイだったらしいし。
人物描写の中に若干皮肉が混じっているのが良い。
特に、天才にはなれない凡夫たちを描くときにその皮肉が効いている(と私は思う)。
その描写にちょっと笑ってしまったりもするし、「笑ってるけどあなたはあくまでもこちら側(凡夫)だよ」と突きつけられたりもする。
余談ですが、私は映画の『アマデウス』なんかも大好物なので(秀才の音楽家サリエリが天才で破天荒なモーツァルトに嫉妬する話)アマデウス好きな人は絶対好きだと思います。
こういうの書いてみたいな〜、書けたらいいな〜と何度読み返しても思う。
あと、これは翻訳の腕だと思うのだけど、文章がすっきりしていてするっと読める。
するっと読めるのに、イギリスからタヒチまで旅を終えたような、達成感と疲れと恍惚が入り混じった感覚になれる小説。
とかげ よしもとばなな
短編集で、私は表題作の『とかげ』が一番好き。何度も読み返している。
ある男性の一人称小説で、彼の恋人の「とかげ」についての話。主人公のプロポーズをきっかけに、とかげが自分の秘密を打ち明ける。
『ぶらんこ乗り』同様、要約してしまうと何の起伏もなさそうなのに、読むと面白いからすごい。(語彙力)
とかげのどこか浮世離れした雰囲気や、彼女の過去に起きた出来事は、ちょっとでも下手を打つと「そんなことあるかーい」と読みながら興醒めしてしまいそうなのに、よしもとばななさんの手にかかると、するすると言葉が頭に入って、「そういうものなんだな」と納得してしまう。
よしもとばななさんは、みんながモヤモヤ抱えたまま言語化できないものを言語化するのがすごくうまい。
物語の解決方法は結構力技のことが多いと思うのだけど(人智を越えた力とか、エネルギーの流れが、とかそういうやつがきっかけで解決に向かう出来事が起きたりする)「まあそういうこともあるよな」と思わせるだけの説得力がある。
その説得力は、人の気持ちとか、振る舞いとか、そういう細かい部分の精密な描写が積み重なったところからくると思うのだけど、ぜーんぜん小難しくない言葉の羅列で、それをやってのけてしまう。
自分の心の中に蓋をしている気持ちまで、するっと描き出されてしまう様は見事で、なんだかセラピーを受けているような気になる。
特にこの『とかげ』は、とかげと主人公の救いについての話だし、読んでいる人の心も癒す力の強い話だと個人的には思っている。
読むと、私にもこんな話書けたらいいなぁ、と前向きになれる小説です。
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