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デザイン通信vol1 -デザイン≠スタイリングの話-

私は、前職は350名規模のデザイン会社で働いていました。
今回はデザインという意味について前職の経験を元に考えてみます。

私のことを少しだけお話させてください。
株式会社LIGで編集を少しの間だけやっていましたが、LIGを除く全ての会社ではセールスとして働いていました。
前職ではクリエイティブの企画営業でしたので、無形商品を扱う楽しさと難しさを経験できたと思います。

営業する上で「自社商品を知る」という意味で、前職では、「デザインを売るとはどういうことか。そもそもデザインとは何か。制作との違いはあるか。」などよく考える機会に恵まれました。
その上で得た知識や定義の説明をできればと思います。

デザインとは何か

デザインは問題解決のツールという話は、
ウェブの記事や書籍で目にすることも多いのではないでしょうか。
その本意を伝えるべく、「デザイン思考の先を行くもの」という本にまとめられているので引用したいと思います。

デザインの始まりは視点の提供

例えば頭の中で千円札のスケッチを描いてみてほしい。
多くの人がこんなスケッチ(fig.I)をすると思う。
でももし、千円札を横から描いた人がいたとしたら (fig.2)、その人は紙幣の挿入口を「デザイン」した人である。そう、 デザインのはじまりは、シンプルに「新しい視点の提供」と言える。ところが日本でデザインという言葉を使うと、「絵心」「センス」「クリエイティビティ」という言葉と一緒に使われることがある。敢えて強調するが、デザインと、センスやクリエイティビティは、全く関係がない。とにかく新しい視点を提供するということ、それこそがデザインなのである。
引用元:「デザイン思考の先を行くもの」第1章デザインの誤解

紙幣_デザイン

問題解決としてのデザイン
「デザインは問題解決」 ということは、私たちも多くの本や記事で目にしてきた。しかし、その本意は伝わりきっていないのではないかと思う。

例えば傘について考えてみよう。傘というプロダクトは、「雨が上空から降ってくる」という問題に対して、「手で持てる軸の先に膜をつけて水滴をさえぎる」という解決の糸口を見出したものだ。ここまでがデザイン。膜の模様や、柄の形状のことはデザインとは呼ばない。靴というプロダクトは、「地面がゴツゴツとして歩きにくい」という問題に対して生み出された「分厚い靴底と足を布のバンドで固定して脱げないようにする」という解決策である。傘と同様、表面の生地の柄や素材は、デザインとは呼ばない。

つまりデザインカとは問題解決力のこと。 あくまで「問題を発見し、解決の糸口を示す」能力なのである。私たちが普段「デザイン」と聞いて想像する「オシャレなグラフィック」等は、厳密にはデザインの範晴ではない。絵心、造形力、センス、クリエイティビティは一切関係ないのである。
引用元:「デザイン思考の先を行くもの」第1章デザインの誤解

靴_デザイン


例が秀逸で非常に分かりやすいため、多めに引用させてもらいましたが要点は下記です。

1. デザインは、新しい視点の提供 
2. デザインは、問題解決。装飾(スタイリング)のみを指す言葉ではない。

前職に新卒で入社した私は、日本人の多くがそう思っているように、「デザイン=スタイリング」と強く認識していたためデザイナーと会話していて彼らの視点が全く別のところにあることに強く驚かされました。

・「顧客の要件整理をしていたら最適解(媒体)はウェブサイトでは無いと思います」

・「動画を作りたいと依頼を受けているが、制作業務だけでなく運用媒体やプランまで提案しませんか」

など、あくまで顧客の問題解決という点に焦点を当てて制作領域だけではなく、上流概念のコンサル領域にまで前のめりに提案すること。それがデザインの本意であると教わりました。

これは、入社前はデザインとはスタイリングである、すなわち、レイアウト構築や綺麗なグラフィックと考えていた私にとっては新鮮でした。

同書では更に次のように書かれています。

実際に辞書で「デザイン」という言葉を引いてみると次のように出てくる。

デザイン(design)[名](スル)
1建築·工業製品·服飾·商業美術などの分野で、実用面などを考慮して法形作品を意匠すること。「都市をデザインする」 「制服をデザインする」「インテリアデザイン」
2図案や模様を考案すること。また、そのもの。 「家具にデザインを施す」「商標をデザインする」
3目的をもって具体的に立案·設計すること。 「快適な生活をデザインする」
出典:デジタル大辞泉(小学館)

日本では何気なくこれらの意味を総じて「デザイン」 とまるっと呼んでしまっている。ところがここに大きな落とし穴があったのだ。実は、欧米では「デザイン(design)」とは3のこと。そして1と2を意味する単語として「スタイリング(styling)」という独立した言葉が与えられている。留学したての頃、私はこの点にまったく気づかず、コミュニケーションにおいて大きな遅れをとってしまった。つまり「デザイン」とは、 課題解決や設計に特化した言葉であって、私たちがイメージするような 「物事をきれいに整えること」は、「スタイリング」というまったく別の作業として存在していたのだ。

すなわち、言葉の輸入元の欧米では、designは「目的をもって具体的に立案·設計すること」、stylingは「建築·工業製品·服飾·商業美術などの分野で、実用面などを考慮して法形作品を意匠すること。図案や模様を考案すること。また、そのもの。」のように別の言語で記されていると言うことになります。

前職は外国人の割合が3割ほどだったので、欧米やアジア圏の方と話す機会も多かったのですが、どうやら上記は本当のようです。
そしてだからこそ、海外ではデザインのプレゼンスが非常に高くなっている傾向があり、日本ではまだまだデザインの価値が認識されていないと感じました。

しかし近年国内でもCI(*Corporate identity)やブランディングの価値が再認識されつつあります。
日本で100年以上続く大企業のメーカーもVI(Visual Identity)の整理や、ガイドラインに沿った制作で他社と差別化したいという依頼を頂きました。
最近ではモールサイト(楽天、Amazonなど)で購入してもブランドを覚えてもらえないので、自社ブランドサイトで商品ブランディングをしていきたいという企業も増えています。

私の大きな目標の一つに、デザインの国内でのプレゼンスをあげるというものがあります。
(他にもいろいろありますので直接聞いてください!)

デザインを経営戦略に取り込んでいる企業はApple、Airbnb、Uberなどを代表して近年における成功の必須条件とも言われています。今後国内でも、ますます「デザイン×経営」の傾向は増加していくと思っているので、ぜひデザイン領域にも関心を持っていただけると嬉しいです。

経済産業省が出しているデザイン経営宣言が非常にわかりやすくまとめられているので推奨します。下記、数点抜粋します。

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内容としては以上になります。
拙い文章でしたがご容赦ください。

あまり評判がよくなければ
次は好きな映画でも書こうと思います、、笑
読まれた方は感想などいただければ幸いです!